サンズ・オブ・ケオス #1

ネオサイタマ電脳IRC空間 http://ninjaheads.hatenablog.jp/ 書籍版公式サイト http://ninjaslayer.jp/ ニンジャスレイヤー「はじめての皆さんへ」 http://togetter.com/li/73867
0
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「何だと?」「いや、絶対ヤバイから。絶対ダメ」タキは首を振った。画面には「メイレイン:ニンジャ」という名前に紐づいて、「サンズ・オブ・ケオス」という謎めいた単語が浮遊していたが、タキが特に注意を……恐怖を向けているのは、それではなかった。「ニンジャ:ソウカイ・シンジケート」。

2016-10-26 00:00:44
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

クロス・カタナのエンブレムが大写しになると、タキは反射的に身を震わせた。「あのな、このネオサイタマには知っての通り世界各国のクソ企業が入り込んでシノギを削ってやがるが、実際に街の裏路地をカラテでシメてるのはソウカイ・シンジケートだ。皆ここと上手くやってる。企業も、ヤクザクランも」

2016-10-26 00:06:23
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

タキは端末を見せた。「オレも持ってる。ソウカイヤのホットラインを。なぜか連絡取れねえけど」「……」「頭首のラオモト・チバはカミソリのように頭の切れる若き帝王、手下にニンジャがわんさといて、特にヤバイ六人が『シックス・ゲイツ』、人肉のスシを食って精をつけてるらしいぜ。恐怖そのもの」

2016-10-26 00:10:31
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「そんな連中に興味は無い」ニンジャスレイヤーは低く言った。「だが、メイレインは殺す。そしてサツガイの情報を引き出す」「それがソウカイヤとコトを構える事になるンだよ!バカ!」タキは熱くなった。「奴らに睨まれたら……」「それならばソウカイヤもシックスゲイツも敵だ。殺すだけだ」「よせ」

2016-10-26 00:15:35
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「……」タキはニンジャスレイヤーを見た。ニンジャスレイヤーは見返した。冷徹な目だった。冷徹な中に、溢れ出る寸前で押し留められた激情がある。「なあ考えろ。お前だけなら知った事じゃねえが、オレまで片棒担ぎにされたら……」「知った事ではない」死神は言った。「取引をしたぞ、タキ=サン」

2016-10-26 00:20:06
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「奴らはニンジャの戦士だ」「おれはニンジャを殺す力を得た」「んんん」タキは唸った。押し問答だ。そしてこの男は本気だ。確かにこの男は強い。ナハトローニンも殺した。だが……。「んんん」それにしても、サツガイとかいう奴は一体何をしでかした?迷惑千万だ。タキのニューロンは高速回転した。

2016-10-26 00:23:11
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「……わかった」タキはやがて言った。「お前はメイレインを仕留めて、サツガイの情報を得る。ソウカイ・シンジケートとは、コトを構えない」何か言いかけたニンジャスレイヤーを遮り、手ぶりを交えた。「この二要素を両立させるのが、現時点でベスト!」「何だと?」「殺して、バックレろ」

2016-10-26 00:26:46
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ニンジャスレイヤーは眉根を寄せた。「何を……」「だから!サツガイに関係ねえ奴とデカく争ってたら、お前、何十年経っても辿り着けねえんじゃねえのか?エ?」タキは加速する燃える車輪めいてヒートアップした。「組織には絶対知られるな。メイレインは下っ端。今度はマジ。切り離して仕留めろ!」

2016-10-26 00:32:04
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

目の前のこの死神は、サツガイとそれに連なるニンジャ達に、狭く深く、狂ったように、決断的焦点を絞っている。そこにどうやら交渉の余地が存在している……!「わかったか!ガッツリやるぞ!オレに作戦タイムをくれ!」タキは異常興奮状態で喚いた。リリリン。インタフォンが鳴った。「スシも来た!」

2016-10-26 00:38:06
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ゴオン……クロス・カタナ意匠の銅鑼が鳴らされた。四方にカドマツが飾られ、中央の黒大理石の卓には菊のカドーが飾られている。南側の壁は透明で、滝めいて水が流れ、ガラスの奥では嬌声をあげて遊ぶオイラン達の姿が滲んでいた。緊張の面持ちで連座する企業重役達は脂汗を滲ませてカミザの男を見た。

2016-10-26 00:43:46
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

カミザの革張りヤクザソファでくつろぐのは、ほとんど黒に近い紫の三つ揃えのスーツを着た、威厳ある青年ヤクザだ。肩ほどの銀髪を後ろに撫でつけ、カタナめいた鋭く酷薄な目元。足元に傅く媚薬めいた女ニンジャが葉巻に火をつけると、天井に紫煙を吐き出し、企業重役には視線を返しもしない。

2016-10-26 00:52:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

革張りヤクザソファの横にはボディガードと思しきニンジャが微動だにせず直立している。暴力を人の形に捏ねたようなニンジャだった。はちきれんばかりの筋肉には無数の傷が勲章めいて刻まれていた。どれ程のカラテの持ち主か。だが彼も、この青年に死ねと言われれば、即座にその場で望んで死ぬだろう。

2016-10-26 00:58:41
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

おお、齢二十半ば手前、己の冷酷さを隠しもしないこの男こそは、ラオモト・チバ……混乱の底に堕ちたネオサイタマを救った英雄にして、恐るべきニンジャ戦士を束ねる非ニンジャの帝王。闇のヤクザ集団「ソウカイ・シンジケート」の、若きオヤブンであった!

2016-10-26 01:03:47