新海誠監督講演『「君の名は。」の物語~現代の物語の役割~』の個人的メモまとめ
「君の名は。」のログラインについて
まず、ログラインというものの説明。ログラインとは、「話の内容を短く数行で書いたもの」。 oookaworks.seesaa.net/article/379942…
2016-11-06 23:32:45たとえば桃太郎のログラインは、「桃から生まれた少年が、3匹のお供を仲間にして、鬼を退治する話。」になる。これを「子供に恵まれなかった老夫婦が、桃から生まれた少年を授かる話。」とすると全く別の物語になる。
2016-11-06 23:34:30では、「君の名は。」のログラインはどうか。1つめのログライン(ログラインA)は「夢で出会った少年と少女が、やがて現実でも出会う話。」である。古くからある「ボーイ・ミーツ・ガール」の類型に入る。宣伝でも当初はこのログラインAを強調するかたちで宣伝を始めた。
2016-11-06 23:37:45https://www.youtube.com/watch?v=k4xGqY5IDBE&feature=youtu.be
「君の名は。」の予告1。ログラインAを前面に出している。
「ボーイ・ミーツ・ガール」→「ボーイ・ロスト・ガール」→「ボーイ・ミーツ・ガール、アゲイン」のストーリーは昔々からある、強いストーリーである。(君の名は。も完全にこの文法に沿っていますね)
2016-11-06 23:40:09しかし、君の名は。にはもう一つのログライン(ログラインB)がある。それは「夢のお告げを受けた少女が、人々を災害から救う話。」である。
2016-11-06 23:41:57このログラインBは、日本の昔話のログラインである。古くは日本書記や古事記、更級日記や源氏物語の六条御息所まで、困難に出会って「夢のお告げ」によってそれを乗り越えるという物語は多い。
2016-11-06 23:45:38https://www.youtube.com/watch?v=3KR8_igDs1Y
予告2。ログラインBがほのめかされる
映画の流れに沿って解説
冒頭はログラインA中心、少しだけログラインBが入る(彗星の落下の場面)。オープニングは完全にログラインA。 twitter.com/yelmalio/statu…
2016-11-07 14:08:32古典教師の「黄昏時(かたわれ時)」の話。「たそがれ時に死者と会う話」。物語の因果律として、「物語の中で語られたことは、物語の中では必ず起こる」。だからこの話は後で起こることになる。
2016-11-07 14:10:48三葉の持つ組紐の設定画の解説。両端の赤いところが黄昏時を表していて、中心の青いところは湖。そこに彗星が落ちるところが描かれている。しかし、その意味は失われてしまっている。 pic.twitter.com/dwUJtFmJSq
2016-11-07 14:21:14巫女舞の所作は歌舞伎役者(お名前失念しました)に作ってもらったが、その内容は「彗星が二つに割れて落ちてくる」というもの。(二人で鈴を下に下ろす時に割れる動作がある) ただ、その意味は失われてしまっている。
2016-11-07 14:23:22なぜこんなことをしたのか。3.11の大津波石碑で、その下に住んではいけないと伝えられていたのに、その意味が失われてしまったことのメタファー。忘れてしまったものを、忘れないようにもがく、というテーマもあらわしている。
2016-11-07 14:25:33「君の名は。」にはオープニングが2回ある(「前前前世」の流れるのが2回目)。OP2回目まではログラインAである。2回目のオープニングから徐々にログラインBにシフトしていく。
2016-11-07 21:44:45「前前前世」の歌詞でログラインBを暗示している。 『私達超えれるかな この先の未来数え切れぬ困難を 言ったろう2人なら 笑って返り討ちにきっと出来るさ』 将来に何が待ち受けているか分からない思春期の不安を表す (でも movie ver の歌詞じゃない?)
2016-11-07 21:57:03https://www.youtube.com/watch?v=tZque5kv-Qw
映画版のみの歌詞でCDにも収録されていない模様。監督歌ってました
ログラインBでお婆さんの世界観説明。これも物語の中なので言われたことは後で起こる。 ムスビについて。これは古代の日本の思想、土着の神様について。 御神体のある場所には河を越えていく。此岸と彼岸。
2016-11-07 22:00:24「行って帰ってくる』のが物語の基本。例えば、自分が子供の頃、小海町の肝だめしで妹を連れて墓地に行って、家に帰ってくるとホッとした。「行って帰る」ことを繰り返すことで、成長をしていく。
2016-11-07 22:02:49(この、「境界を超えて旅立ち、試練を受けて、共同体に帰還する」というのが神話の基本構造である、というのが、ジョーゼフ・キャンベルの主張の中心です。スターウォーズがこの構造を取り入れているのは有名な話)
2016-11-07 22:05:23