Re:Incarnation #0
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ReI_rebuild
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Re:Incarnation広報室
@ReI_rebuild
これからすることが、正しいのか正しくないのか。いまだに青葉は答えを出せずにいます。ただきっと――後悔だけはしない選択なのだと、信じています。あの時と同じように。これまでもずっと、そうだったように。
2016-11-10 23:56:58
Re:Incarnation広報室
@ReI_rebuild
海を見ている。 波止場の縁に腰かけて、ブロックに波が打ち寄せ、砕かれていく光景を。 雨上がりの波は普段よりも少しだけ高くて。細かく欠けた波が壁面を叩いていく様は、巨大な鉄の塊だった青葉たちが今、ひとのカタチに無理やり押し込められていることと、どこか似ていることのように、思う。
2016-11-11 00:00:04
Re:Incarnation広報室
@ReI_rebuild
薄い紫のセーラーカラーがはためいて、首筋をくすぐったい。 青葉たちに与えられた女学生のような格好も、はじめは収まりが悪く感じていたけれど、ほどなく当たり前のこととして、受け容れられました。 そもそも青葉は、艦娘になってからそれなりに時間が経っていますし。
2016-11-11 00:03:08
Re:Incarnation広報室
@ReI_rebuild
ぶわりと、髪が潮風に巻き上げられる。それを押さえこもうと身動ぎしたら、機械とひと身体の接続部が、ぎしぎしと軋みをあげた。腰を覆い隠すような大きな艤装と、斜めがけした連装砲。青葉が使い慣れ親しんだ、相棒たち。
2016-11-11 00:06:18
Re:Incarnation広報室
@ReI_rebuild
艦娘として生まれ落ちた直後、不慣れなひとの身体では扱うのが難儀だったこれらの装備たちも制服同様、今はもうとっくに馴染んでいて、砲塔の先端まで青葉の意識が通っている、と言い張れるくらいです。
2016-11-11 00:08:16
Re:Incarnation広報室
@ReI_rebuild
つるりと砲塔を撫でる。 そこにはこれまでの歴史を物語るように、大小細かな傷が浮いています。今は見えないけれど、目立つのは背面艤装を斜めに横切るように入った大きな傷跡。以前吹雪さんにこれを見られてずいぶん驚かれてしまった。もう少しだけ、大事に扱ってやるべきだったろうかと、思う。
2016-11-11 00:11:31
Re:Incarnation広報室
@ReI_rebuild
今は陸から見つめている海の上に、もうあと半刻もすれば青葉は立っているはず。これから始まる作戦に対する気負いはありません。ありませんけれど、微かな不安と、それよりも、ほんの少しだけ大きい安堵感が、あるように思います。
2016-11-11 00:15:22
Re:Incarnation広報室
@ReI_rebuild
コンクリートに貼り付いた身体を引き剥がして、重たい腰を上げようとした、その直前。 ポケットの中にしまっていたスマートフォンがぶるりぶるりと振動し始めました。 普段なら、出撃前は気が散ってしまうので、ろくに内容も確認せず電源を落としてしまうところです。
2016-11-11 00:18:02
Re:Incarnation広報室
@ReI_rebuild
それなのに今、ポケットから取り出して画面を覗きこんだのは、確信めいた予感があったから。 画面には封書を模したアイコンがちかちかと瞬いていて。 震える指先を押さえ込んでそっとそれをタップすると、危惧していた――今だけは来てほしくなかったものが、映されてしまいました。予期した通りに。
2016-11-11 00:20:42
Re:Incarnation広報室
@ReI_rebuild
[from]古鷹さん [to]青葉 [sub]（件名なし） 出撃、がんばってください。 帰ってきたら、少しだけお話できないかな。 青葉に、伝えたいことがあるんだ。
2016-11-11 00:22:49
Re:Incarnation広報室
@ReI_rebuild
ぎり、と。思わず歯噛みしてしまった。 偶然と言うにはあまりに出来すぎたタイミング。以前、古鷹さんはあまり機械が得意ではないという話を耳にしていたし、実際古鷹さんが支給された自分の携帯に触れているところなんて、青葉は数えるほどしか見たことがありません。
2016-11-11 00:24:25
Re:Incarnation広報室
@ReI_rebuild
つまりはこの短い文章を送ることだって難しいはずに違いなく。きっと誰かに使い方を聞きながら、時間をかけて打ち込んだのでしょう。誰だか知りませんが、余計なことを。 そして、なぜよりによって今日なんですか。ほんの少しだけ、古鷹さんを恨みたくなりました。
2016-11-11 00:26:39
Re:Incarnation広報室
@ReI_rebuild
せめて、明日まで待ってもらえれば。 むしろもっと前に受け取ることができたならば、あるいは。 ……とにかく、なにか返事をしなくては。そう思って、のろのろとタッチパネルを操作して返信画面を呼び出したものの、頭の中は真っ白だ。普段ならば、すらすらと言葉を紡ぐことができるのに。
2016-11-11 00:29:48
Re:Incarnation広報室
@ReI_rebuild
「青葉は……」 「おーい、青葉ー！」 その先に進めず、中空を彷徨っていた指先は、遠くから青葉を呼ぶ声が聞こえた瞬間、思考するより素早く動いて、画面をスリープモードへ切り替えます。 真っ暗になったディスプレイには、迷子のような顔をした自分の顔が写り込んでいました。
2016-11-11 00:33:33
Re:Incarnation広報室
@ReI_rebuild
そのままぼんやりと画面に写る自分自身を見つめていると、誰かが青葉の隣までやってきました。 「まったく、旗艦が遅刻とは良い御身分ですわね」 「あはは……熊野さんは、手厳しいですねえ」 顔を上げると、そこには青葉と同じく艤装を身に付けた、鈴谷さんと熊野さんが青葉を見下ろしていました。
2016-11-11 00:36:52
Re:Incarnation広報室
@ReI_rebuild
かたや煌めくエメラルド、かたや柔らかなミルクティを思わせる長い髪。対照的なお二人ですが、全く同じデザインのダークブラウンの制服はしっくりと馴染んで見えます。姉妹艦とは傍から見ればこういう風に見えるものなのでしょう。 青葉と衣笠だってきっと――いや、それは。
2016-11-11 00:40:16
Re:Incarnation広報室
@ReI_rebuild
さっきから思考が沈みがちなのは、良くないこと。 青葉だってわかってはいる、いるんですが。押さえ込むことも簡単ではないようでして。 ――もしかして。 もしかして青葉は、躊躇っているんでしょうか。 これまでもこれからも、周囲に迷惑をかけ続けるであろう決断を、したばかりだというのに。
2016-11-11 00:46:56
Re:Incarnation広報室
@ReI_rebuild
「飛龍さんも金剛さんも陸奥さんも待ってるって。早く行こうよ、青葉」 スマートフォンを握りしめたまま動かない青葉に業を煮やした鈴谷さんが、苛立たしげに青葉を睨みつけてきます。 一見軽薄そうな見た目や物言いが目立ちますけれど、その実生真面目だということを、青葉はよく知っています。
2016-11-11 00:50:39
Re:Incarnation広報室
@ReI_rebuild
今、鈴谷さんが名前を出した方々は、ここにいる青葉たち三人と一緒に、本日の作戦において第一艦隊を編成することになっています。 青葉にとっては、いつもの気の置けない顔ぶれでもあります。
2016-11-11 00:52:19
Re:Incarnation広報室
@ReI_rebuild
鈴谷さんの機嫌から察するに、物思いに耽る時間はもうおしまいのようでした。今さら悩む猶予なんて、はじめから青葉には無かった。 観念して、キュロットの砂埃を払いながら立ち上がると、鈴谷さんの隣に控えていた熊野さんが一歩前に進み出て、目の前にやってきました。ドックへの道を塞ぐように。
2016-11-11 00:55:58
Re:Incarnation広報室
@ReI_rebuild
「はあ。呼びに来られたのに、いざドックに向かおうとしたら通せんぼですか。意地悪ですねえ、熊野さんは」 「……ねえ青葉、他にやりようはありませんの？」 「そうそう、今ならまだ、冗談でしたー、で済むと思うよー？ 金剛さんあたりには、一発思いっきり殴られるだろうけどさ」
2016-11-11 00:57:50
Re:Incarnation広報室
@ReI_rebuild
「あはは、その拳骨はとっても痛そうなので、丁重にお断りしておきます」 熊野さんも鈴谷さんも、言い方は全く違うけれど、青葉を気遣ってくれていることくらい、わかります。 特に熊野さんは、普段青葉に何かと張り合ってきたり、手厳しかったりするばかりなのに。
2016-11-11 01:00:42