Re:Incarnation #0
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今、青葉が迷っていると察して、遠ざけていた選択肢をストレートに突きつけてきたのでしょう。情に篤く、お人好し。鈴谷さんも熊野さんも好ましく思う。 けれど、揺れていたという事実を露わにしてもらったおかげで、逆に気持ちは固まりました。もうこれ以降、青葉が立ち止まることはありません。
2016-11-11 01:04:48熊野さんを避けて先に進もうとすると、横からぐいと肩を掴まれ阻まれました。熊野さんの指先が青葉の肉に食い込んで、軽い痛みを感じるくらい。 「青葉、わたくしは真剣に――」
2016-11-11 01:06:22「もう、出撃時間ですから。熊野さん」 精一杯の熊野さんの思いを、言葉を、遮って。静かに決意を告げることで応えます。 伝わってもらえたのかどうか、ゆるりと力が抜けた手のひらをそっと払いのけると、あっさり拘束は滑り落ちて、青葉は一歩前に踏み出すことができました。
2016-11-11 01:10:04まだ握りしめていたスマートフォンの電源をようやく切って、ポケットにしまい直すと、改めて顔を上げます。波止場から海を越えて、正面には古鷹山。数ある鎮守府の中で、古鷹さんの名前を冠するこの山が見える呉で生まれたことを嬉しく思う。 自分が守るべきものを、常に思い出させてくれるから。
2016-11-11 01:11:57お二人とも説得はもう諦めてもらえたようだった。 同じ艦隊で長く生死を共にした間柄、それくらいはお互いのことを理解しているつもりです。 たとえそれが賢い選択ではなかったとしても、青葉が考えた末に出した、精一杯の決断を、お二方とも尊重してくれた。それはなによりも嬉しいこと。 だから。
2016-11-11 01:14:45「馬鹿だねえ」「大馬鹿ですわ」 「褒め言葉だと受け取っておきます」 だから、あえて軽口を叩き合って連れ立って出撃ドックへ向かいます。足取りは確かで、もう今からの作戦に対する迷いなんてない。
2016-11-11 01:16:27ちゅうぶらりんになってしまった古鷹さんへの返信。 返せずにごめんなさいと心の中で謝って、青葉は第一艦隊の皆さんを率いて、洋上へと飛び出したのです。これから始まる、一つの作戦を遂行するために。
2016-11-11 01:21:25