石油の証人◆3(終)

帝都の地下には様々な廃棄された生き物が住む。今回はそんな生き物の一つ、石油スライムの話……。清掃局員の男が、不思議な出会いをします。 全30ツイート予定。 最初↓ ◆1 http://togetter.com/li/1047363 前↓ ◆2 http://togetter.com/li/1047689 次↓ この話はこれで終わりです 実況・感想タグは #減衰世界 です
減衰世界
rikumo 385view 0コメント
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  • 減衰世界 @decay_world 2016-11-13 19:07:38
    _轟音。後に静寂。少年を抱えたドイラは魔法で慣性をコントロールしつつゆっくりと瓦礫の山に着地した。  足場を自らの魔法で破壊し、より下の階層へと逃げ込んだのだ。 「おじさん、街を壊したね」 「放っておいても勝手に壊れた場所だ」 21
  • 減衰世界 @decay_world 2016-11-13 19:13:22
    _光源装置で辺りを照らす。緑色の粘液があちこちの壁から滲みだしている。 「これは普通のスライムか……?」  スライムにも無数に種類があるが、どれもこれも人間の役に立つために生まれた種族だ。計算に使用したり、情報伝達、食料、健康……色々だ。 22
  • 減衰世界 @decay_world 2016-11-13 19:20:01
    _そのとき、光源装置の光が瞬き、急激に光量が落ちていく。 「しまった、残量が……」 「大丈夫だよ」 「そうか、君の暗視が……」 「おじさんの目、緑に輝いてる」  ドイラは息を飲む。明かりが消えた。闇の中……緑の世界が広がる。 23
  • 減衰世界 @decay_world 2016-11-13 19:26:49
    「これは……」  壁から滲みだした粘液が眩しいほど輝く。緑のモノトーンの世界だ。あちこちが星のように光り、闇を埋め尽くしていた。 「どうやら生贄に選ばれてしまったようだな」 「おじさん、上……」  天井を見上げて絶句する少年。 24
  • 減衰世界 @decay_world 2016-11-13 19:32:33
    _恐る恐る見上げるドイラの目に映ったのは、緑の世界に蓋をするように上空に広がった、巨大な桜色の亀裂だった。まるで蜘蛛の巣のように細かい網目。 「逃げ場無し……か」 『お集まりイタダキ、ありがとうゴザイマス』  シルフ語で話しかける低級シルフ。 25
  • 減衰世界 @decay_world 2016-11-13 19:40:31
    『シンデいただけないとは、とても残念なことデスガ、我々の儀式の証人になるには支障はアリマセン。見届けてクダサイ』  どうやら必死の抵抗が届いたのか、殺すのはやめてくれたようだ。しかも、殺す必要はなかったらしい。 (悪戯ものめ)  シルフは儀式の概要を話してくれた。 26
  • 減衰世界 @decay_world 2016-11-13 19:47:54
    _最近生まれた新しい仲間をシルフの眷属に加えるというのだ。そのための加入の儀式を執り行うという。 『シルフの統率にして風の生まれる場所、風神タジクの名のもとに……君を我々の眷属と認めよう』  厳かな声。ドイラは周囲を見渡す。新しいシルフとは? 27
  • 減衰世界 @decay_world 2016-11-13 19:53:57
    _それはすぐに分かった。壁から滲みだしていた緑の粘液。それはスライムではなかった。シルフだというのだ。粘液はぶるぶると震えて、声を反射した。 『我々は石油シルフ。どうぞ、よろしく……』 「石油シルフ!」  鉱石シルフもいるのだから、石油シルフもいるのかもしれない。 28
  • 減衰世界 @decay_world 2016-11-13 20:00:35
    _桜色の亀裂は静かに閉じていき、完全に闇に消えた。石油シルフは壁から滲みだしたまま、やはり静かにしている。儀式が終わったのだ。 「少年、いいものが見れたな」 「おじさん、僕を上まで連れてってよ。僕はどこへ行けばいいか……」 29
  • 減衰世界 @decay_world 2016-11-13 20:06:36
    「おじさんはどこへ行けばいいか分かるぞ。そろそろ昼飯の時間だからな……」  建築物探知の呪文で帰り道を探る。ドイラは歩き出す。まばゆい緑の粘液を振り返って、視線を戻した。 「上へ参りまぁす」  二人の目は変わらず闇の中で輝いていた。 30
  • 減衰世界 @decay_world 2016-11-13 20:16:15
    【用語解説】 【慣性を制御する魔法】 最も代表的なのは飛来物防護の呪文であろう。この系統の魔法は、対象物の質量が軽いほど、術者に近いほど、そして速度が遅いほど絶大な効果を発揮する。即ち、意識による物体移動の制御である。動いていないものを動かすのは別系統の魔法で、けた違いに難しい
  • 減衰世界 @decay_world 2016-11-13 20:27:08
    【次回予告】 祖父の遺品整理をすることになった男の話。彼には、子供のころから大切に思っている異国の壺があった。その風景画に彼は魅せられていた……。過去作の加筆修正版です 次回「壺」 全18ツイート予定。実況・感想タグは #減衰世界 です

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