ストレイトロード:ルート140(23周目)

オリジナル短編「ストレイトロード」のコンビがお届けする、短編という名の習作。 今回は1101~1150+おまけ。 今後も引き続き1日1組つぶやいていきます。 続きを読む
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Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

本一冊の為に何度書架の前を往復していただろうか。疲れた藍が司書の薦めに従って探し直すと、目当ての資料がすぐに見つかった。ここ数日の疑問が解決したことで藍は満足したかと思いきや、むしろ不満が増したような態度で私に次の探し物を指図してきた。「無駄にした時間を取り返すんだから。急いで」

2016-10-07 20:37:28
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、1113。薦め。 大事なお仕事です。

2016-10-07 20:37:35
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

「攻めの姿勢が大事。止まったら負け!」藍は力説しながら手元のボタンを連打した。初めて触るという遠い昔の遊具に短時間で驚く程馴染んでいる。発言は明らかに誰かの受け売りだったが。「何これ!?」私が目を離した間に何かが起きたらしい。ゲームの中の宇宙生物が分裂して画面を埋め尽くしていた。

2016-10-08 21:28:46
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、1114。攻め。 気を緩めることを忘れる時間。

2016-10-08 21:28:52
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

助手席で休む藍の寝袋を夜風が撫でる。車の窓が少し開いている。それは換気の為だけでなく不意の事態への備えでもある。「起きてる?」「はい」眠そうな声に呼ばれたのは真夜中で、私は接近するヘッドライトを既に発見していた。「あれは記者ね。適当に追い返して」邪魔者にうんざりする呟きを聞いた。

2016-10-09 21:37:53
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、1115。備え。 いつでも風の声が聞けるように。

2016-10-09 21:38:00
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

「市長は魔女の存在を信じてない。この辺の化け物の巣を一掃する位はしないと面会なんて」「それよ!」街の青年の一言が藍の目を輝かせた。「例えのつもりだったんだけど」「例えで思いつくぐらい気になってるんでしょ?」話を真に受けたわけではない。藍は得た口実の使い方を考え始めた顔をしている。

2016-10-10 19:09:20
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、1116。例え。 頭の片隅にも置いていない、意識しないことはそもそも言葉に変えられない。

2016-10-10 19:09:27
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

車の整備中、窓ガラスに反射した声を聞いた。「調子はどう?」藍が誰かと話をしていたようだが返事はない。やがて幾度目かの呼び掛けがあり、雑談の相手を確かめようと顔を上げた私の真上に、機嫌を損ねた様子の藍がいた。「ずっと呼んでたのに」「申し訳ございません」「謝る時間があるなら仕事して」

2016-10-11 19:46:35
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、1117。調子。 何かが上手く行っていても、他のことや他の人も同じようには行かない。あと藍は多分ハロウィンでお菓子分けてやらない。

2016-10-11 19:46:43
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

不正を暴露された市長が逃げ帰り、群衆も去った後、まだ市役所前に残っていた初老の男が突然怒鳴った。「今の態度は何だ!」そして私を見て急に詰め寄った。「こういう時に子供を叱るのは親の務めじゃないのか!」藍を見るとこちらも憤慨を隠す気がない顔だった。私の務めは怒りの火消役なのだろうか。

2016-10-12 19:19:39
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、1118。務め。 もめ事で一番苦労するのは多分、仲裁せざるを得ない人。

2016-10-12 19:19:46
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

試着室のカーテンが勢いよく開けられて数秒。私は早くも藍の姿を直視出来ず顔を背けた。冷やかしの声を聞いたが、店員が言うような照れとは違う。藍本人の嫌悪に満ちた表情に怯んだ為だ。故にその時彼女が何を着せられたのか、実はよく見ていない。「見たなら忘れて」カーテン越しの警告が耳に刺さる。

2016-10-13 18:57:37
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、1119。照れ。 想像で補う余地も与えない構え。

2016-10-13 18:57:52
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

この二人、食べ物買う場面よりお洋服買いに行く場面の方がきっといろいろ大変。ママに相談するのとパパでもない男性(ただの付き人)に意見求めるのとでは話しやすさも期待出来る返答も全然違うはず。

2016-10-13 19:02:49
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

執拗に追ってくる赤い車を何とか振り切った後、私達はしばらく隠れた。「何があってもあの女とは交渉しないで」藍は私に厳命した。女は藍を自分の組織に誘っているが。「実際ついて行った子は誰も戻ってこない」彼女が大人しく囚われの身になるとは思えない。だがその横顔は根深い問題を示唆していた。

2016-10-14 19:27:14
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、1120。囚われ。 真紅の車は警戒のサイン。

2016-10-14 19:27:19
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

橋の欄干に足をかける男を見つけた。私達は男を絶望から引摺り下ろし、その流れで話を聞いた。怪物に生活の場を奪われ、やっと帰った故郷も既に壊れていたと彼は嘆く。「見ろ。変わらないものなんてない」「あるじゃない、ここに」藍が橋の下を指した。川の流れは途切れず、地図通りの姿でそこにある。

2016-10-15 19:29:02
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、1121。流れ。 思いついた言葉が相手の心を揺り動かさないかもしれない。逆効果というリスクもある。それでも彼女は声を上げるだろう。 …フォローする人がいるからこそ、だろうか?

2016-10-15 19:29:12
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

私から見ると玩具でしかないカートだが、藍は楽しそうに運転している。他の子供達とコースを一周するレースではアクセル全開で飛び出し、最後まで先頭を譲らなかった。戦術としての逃げではなく、猛スピードの世界が面白いのだろう。ここで満足してくれたらなどと、思わず余計なことを願ってしまった。

2016-10-16 21:10:07
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、1122。逃げ。 発想が生まれてほしくないという発想。

2016-10-16 21:10:13
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

しばらく前まで私は感情も思考も忘れ、ただその日を生き延びる為に働いていた。そこへ藍が現れ、私を連れ出し過酷な仕事を与えた。私は悩み、困り果て、時には古い記憶に苦しめられる。だが彼女の機嫌さえ損ねなければ生活に必要なもの全てが保証される。ぬるま湯に浸かるような生活はどちらだろうか。

2016-10-17 19:28:38
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、1123。ぬるま湯。 楽じゃなかったけどある意味楽だった、彼の小さな世界。

2016-10-17 19:28:44
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

「あ、そうだ」藍が次の行き先を告げてから、急に条件を足した。寄り道も含めた所要時間を試算すると、指示通りの日時に着くのは不可能と判った。「本当にこの計画で間違いありませんか」地図や携帯端末の情報を提示し念を押したが、藍は一度も訂正しない。一見破綻した話が彼女には作戦に見えるのか。

2016-10-18 19:34:27
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、1124。念。 確認するほど不安が増す。

2016-10-18 19:34:35
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