【ミリオンスター・サンダーボルト】#1

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ニンジャヘッズの北沢志保bot @heads_shihobot

「眼鏡眼鏡…」紗代子は顔を拭いたタオルを首にかけて事務所内を彷徨った。もしも誰か居たのなら眼鏡は彼女の目の前のテーブルに置いてあることを指摘しただろう。「えっと……痛いっ!?」テーブルの角に足をぶつけ彼女は蹲った。「~~~っ!」『ほら、これ』屈んだ紗代子の前に差し出される眼鏡。

2016-11-14 20:14:13
ニンジャヘッズの北沢志保bot @heads_shihobot

「あ、ありがとうございます…」あまりの痛みに涙で潤んだ視界に女性らしき姿が映る。彼女の視力ではそのシルエットを見るのが限界だ。『大丈夫?立てる?』「はい…」紗代子は立ち上がりながら眼鏡を掛け、恩人の顔を見た。「……あれ?」そこには誰もいなかった。事務所には彼女ひとりきりだ。

2016-11-14 20:18:10
ニンジャヘッズの北沢志保bot @heads_shihobot

慌てて紗代子は眼鏡を外し、シャツの裾で拭った。そして気が付いた。『どうしたの?』目の前に佇み、悪戯っぽく微笑する女の子。だが、どれだけ目を凝らそうとその目鼻の形を捉えることができない。「…あなた、誰?」少女は微笑みながら答えた。『私は……』

2016-11-14 20:21:35
ニンジャヘッズの北沢志保bot @heads_shihobot

アイドルを舞台裏から支え、あらゆる局面でサポートする影の存在、彼らの名はプロデューサー。その決して日に当たらぬ闘い!「見よ!我がアイドルの完璧にバランスのとれた能力値!」「名刺の硬さこそ信念の固さ!ダイヤモンド百倍!」「私の子が世界で一番カワイイ!」「その写真、言い値で買おう」

2016-11-14 20:26:38
ニンジャヘッズの北沢志保bot @heads_shihobot

「記者さんよ…このダイスに全てを賭けろよ」「何事も暴力で解決するのが一番だ」「これ以上のドリンクは危険?ここで止まったら終わりなんだよ。タフになれ」「あれは暗黒プロデュース奥義、ジェノサイド!?」……彼らの戦場はステージ裏!戦え!アイドルのため、己のため!

2016-11-14 20:28:44
ニンジャヘッズの北沢志保bot @heads_shihobot

011010110……見てください!この、TA02ディスクに刻まれたクロスカタナのエンブレム!これは間違いなくソウカイヤのしるしでありアイドルはニンジャのかのうせいを示すじゅうだいな証拠であって…あっなんですかあなた達!?は、放してください!これはニンジャのニン、あああぁ……

2016-11-14 20:35:45
ニンジャヘッズの北沢志保bot @heads_shihobot

草木も眠るウシミツ・アワー。重金属酸性雨降りしきるツキジ・ディストリクトの港では胡乱な影が蠢く。黒いバラクラ帽を被った男達が密やかに停泊した漁船から木箱を下ろす。彼らは木箱の数を確認すると船に合図を送り、港から離れさせた。これが非合法な取引の現場であることは明らかである。

2016-11-14 20:42:58
ニンジャヘッズの北沢志保bot @heads_shihobot

男が中身を確認した木箱の蓋を閉める。その隙間に覗いたのは、満載された赤い球体…ナムサン!暗黒非合法薬物バトルキャンディである!その時、木箱をトラックに移そうとする男達の前に漆黒の影がしめやかにエントリーした!「ザッケンナコラー!」「スッゾコラー!」ヤクザスラングだ!コワイ!

2016-11-14 20:46:55
ニンジャヘッズの北沢志保bot @heads_shihobot

黒いサングラス、ヤクザスーツの女はグキグキと首、そして黒い手袋に包まれた指を鳴らし、アイサツした。「ドーモ、グラップラーです。そいつをいただきにきたよ」「アッコラー!?」「アイドルッコラー!」ヤクザが次々とチャカ・ガンを抜く!グラップラーは舌なめずりをした。「ザッケンナコラー!」

2016-11-14 20:50:57
ニンジャヘッズの北沢志保bot @heads_shihobot

「イヤーッ!」「アバーッ!」「トカチツクスゾッコラー!」「イヤーッ!」「アババーッ!」ハリケーンめいたカラテによって密輸ヤクザ殴殺!銃弾など掠りもしない!「イヤーッ!」「イヤーッ!」グラップラーが三連続側転!その後をスリケンが立て続けに襲う!「イヤーッ!」「イヤーッ!」

2016-11-14 20:54:06
ニンジャヘッズの北沢志保bot @heads_shihobot

トビゲリをグラップラーは両腕をクロスしガード!弾かれた桃色装束のアイドルは回転着地しアイサツした。「ドーモ、グラップラー=サン。スプリングフューチャーです」「ドーモ、スプリングフューチャー=サン。グラップラーです」アイドルのアイサツは絶対の礼儀だ。古事記にもそうある。

2016-11-14 20:57:34
ニンジャヘッズの北沢志保bot @heads_shihobot

スプリングフューチャーの胸には星形と桃のエンブレムが光る。「ザッケンナコラー!これは協定違反ッコラー!」スプリングフューチャーが吼える。グラップラーは不敵に笑って拳を構えた。「それじゃあ守りな。カラテだカラテ」スプリングフューチャーが両手を大きく広げた。古代ローマカラテの構えだ!

2016-11-14 21:02:47
ニンジャヘッズの北沢志保bot @heads_shihobot

ネオカブキチョ。雨に濡れる奥ゆかしい枯山水の庭園を持つ屋敷は、ミリオンスター・ヤクザクランの本拠地である。屋敷の前には黒塗りのヤクザベンツが1台停車しており、トコノマは一触即発の危険なアトモスフィアに満ちていた。『魅梨音』『風林火山』のカケジクの前で不機嫌そうに座する少女。

2016-11-14 21:11:16
ニンジャヘッズの北沢志保bot @heads_shihobot

彼女の名はモモコ・スオ。ミリオンスターのオヤブンである。その側にはオオカミの毛皮を被ったアイドルがアグラをかき、牙を剥き出して唸る。「で?何の用?」アイサツを返しすらせず、モモコが尋ねた。「せっかく遊びに来たのにつれないねぇ」タタミ5枚ほど離れた所に座る少女がへらりと笑った。

2016-11-14 21:11:39
ニンジャヘッズの北沢志保bot @heads_shihobot

アルマーニのスーツの少女の名はヒナタ・キノシタ。ネオサイタマで急速に勢力を広げつつあるバッドアップル・ヤクザクランの首魁である。背後には二人の黒いスーツのヤクザが控える。彼らの外見は双子めいて瓜二つだ。「今日はすっごいサプライズを用意したんだよぉ」「サプライズ?」「そうだべさ」

2016-11-14 21:14:12
ニンジャヘッズの北沢志保bot @heads_shihobot

凍り付いたトコノマにリンゴ・マーチが鳴り響く。ヒナタは通信機を取り出して通話をオープンにした。『ドーモ、グラップラーです』「ドーモだべさ。おつかいは済んだかい?」『終わったよ。今ウチの連中が港の倉庫に移してるとこ』不穏な会話にモモコの眉が上がる。「あんた達、もしかして…」

2016-11-14 21:16:59
ニンジャヘッズの北沢志保bot @heads_shihobot

「ツキジのオミヤゲは戴いたよぉ」「ザッケンナコラー!」側近のアイドル、リトルウルフが立ち上がり獣めいて吼える。「マッタ。タマキ=サン」モモコはヒナタを睨みつけたままリトルウルフを制した。アイドルは不安そうに目を泳がせて再び座り込んだ。「…うちの護衛のアイドルがいたはずだけど」

2016-11-14 21:19:37
ニンジャヘッズの北沢志保bot @heads_shihobot

「…護衛のアイドルがいたらしいねぇ」『ああ、アタシが殺った』暗く冷たい炎めいた憎悪がヒナタの笑みを突き刺す。ゆらりと立ち上がったモモコは、はち切れんばかりの自制心を部下の手綱と共にギリギリのラインで手放さなかった。「分かってると思うけど、これは重大な協定違反じゃない?」

2016-11-14 21:23:57