【ミリオンスター・サンダーボルト】#1

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ニンジャヘッズの北沢志保bot @heads_shihobot

ヒナタは笑みを崩さず視線を上げた。その手の者にしか知覚できぬ狂気がそこにある。「あのアメはうちが買い取るよぉ。後で代金を請求するべさ」「そんな横暴が…」「まぁ、チヅル=サンがいなくなってからこの辺も落ち着かないみたいだし、そろそろあたしらの下に入ってもいいんじゃないかなぁ」

2016-11-14 21:26:51
ニンジャヘッズの北沢志保bot @heads_shihobot

「ザッケンナコラー!どの口が言ってコラー!」リトルウルフが吼えるが、主は背中で制する。「惜しい人を亡くしたねぇ。ミリオンのオヤブンが不幸なコロッケ窒息事故だなんてねぇ」「…ヒナタ=サン。アイドルの護衛も付けずに、生きて帰れると思ってんの?」モモコは手綱を手放した。「GRRRR!」

2016-11-14 21:30:11
ニンジャヘッズの北沢志保bot @heads_shihobot

ヘンゲヨーカイ・ジツを露わにしたリトルウルフが駆ける!「「ザッケンナコラー!」」間に入ったヤクザ2人は瞬く間に鉤爪斬殺!ナムアミダブツ!オオカミめいた耳と尻尾を備えたリトルウルフの黄金の瞳が喜悦に歪む。タタミに散らばる血液は鮮やかな緑色!彼らは非合法なクローンヤクザだったのだ!

2016-11-14 21:34:32
ニンジャヘッズの北沢志保bot @heads_shihobot

ガガガゴゴゴ!不吉な稲光が、タタミに捕食者と、今まさに引き裂かれんとする犠牲者の影法師を描く。時間が停止したような一瞬、モモコは胸騒ぎを覚え叫んだ。「タマキ=サン!」ガガガゴゴゴ!稲光に照らされた影3つ。ヒナタの前に舞い込んだ白黒の影は、雷よりも早くカタナを閃かせた。

2016-11-14 21:37:22
ニンジャヘッズの北沢志保bot @heads_shihobot

「イヤーッ!」リトルウルフはアイドル第六感で危機を察知した。間一髪でイアイをブリッジ回避!主の元まで飛び退る!カタナを抜いたアイドルはタタミに片膝を着いたまま、ひっそりと呟いた。「…ライアールージュ・ジツ」そのカタナの切っ先がブレた。「ンアーッ!?」リトルウルフの肩が血を噴く!

2016-11-14 21:41:19
ニンジャヘッズの北沢志保bot @heads_shihobot

「タマキ=サン!?」モモコが駆け寄り子分を抱く。傷はやや深い。だが手加減されている。ヒナタはようやく立ち上がり、白黒の着流しを羽織ったアイドルに並んだ。「紹介が遅れたねぇ。ほら」「ドーモ、ルーントリガーです」アイドルは無表情でアイサツした。「うちの新しいヨージンボーさぁ」

2016-11-14 21:45:21
ニンジャヘッズの北沢志保bot @heads_shihobot

「この…!」「ザッケンナコラー!」「スッゾオラー!」涙目のモモコが睨むと、ミリオンのヤクザ達が一斉にチャカ・ガンを構えた。ルーントリガーがカタナの鍔を鳴らす。張り詰めたアトモスフィアの中、雷鳴、雨粒が弾ける音すら虚空に消える。モモコの目の前のモノクロの影が泡立った。「キリステ…」

2016-11-14 21:48:13
ニンジャヘッズの北沢志保bot @heads_shihobot

ギャアアアアアアアン!一瞬の静寂を、雷めいたエレキギターの騒音が切り裂いた。「待ちな!」隣接する部屋を仕切るフスマに人影。勢いよく開け放たれた向こう側には、ユカタ姿の女が立っていた。「ドーモ、ルーントリガー=サン。プラリネです」そのアイドルはアイサツした。「…ドーモ。…貴様」

2016-11-14 21:52:04
ニンジャヘッズの北沢志保bot @heads_shihobot

ルーントリガーが殺意を剥き出しにし、柄を握り締める。プラリネは構えもせずに空の両腕を組んでヒナタを見た。「あたしはここでやる気はないぞ。…カタナの柄に『ウバステ』の銘。白黒装束のルーントリガーときたら、ここらじゃ腕利きのヨージンボーだ」「余計なマネをするなら斬るまでだ」

2016-11-14 21:57:17
ニンジャヘッズの北沢志保bot @heads_shihobot

「ボスが待てって言ってるぞ」「そうだねぇ。ルーントリガー=サン、こっちへ来るべさ」影はジリジリと退いた。「じゃあそろそろ帰るねぇ。…実は明日の夜、港の荷物をうちのビルに運び込むことになってるんだぁ。その準備をしないとねぇ」ヒナタはクローンヤクザとアイドルを伴い、消えた。

2016-11-14 22:01:13
ニンジャヘッズの北沢志保bot @heads_shihobot

「…モモ、大丈夫か」傷ついたタマキを治療に送り出したモモコは、がくりとタタミに座り込んでいた。「…うん、アリガト。助かったよ、ジュリア=サン」「いや、いいんだ。それより…」ジュリアはモモコを見下した。「あれはつまり、そういうことなのか?」「…そうだね」「見込みはあるのか?」

2016-11-14 22:08:02
ニンジャヘッズの北沢志保bot @heads_shihobot

「あの荷物にはうちの未来が懸かってる。取り返せなかったら、潰されるだけ」「売られたケンカは買うってことだな」モモコは不安気に、上目遣いにジュリアを見た。「ねえ…」「分かってるさ。あいつらぶっ飛ばして、筋を通してやる」「どうしてそこまで…」「なに、先代には世話になっただけさ」

2016-11-14 22:13:36
ニンジャヘッズの北沢志保bot @heads_shihobot

ジュリアは縁側に腰掛け、空の両手を独特の形に曲げ虚空を掴んだ。右手を振るとギターの音色が零れ落ちる。「あたしは行く当てもない根無し草。奔って消える流れ星みたいなもんだ」星を想う曲を爪弾きながら、ジュリアはまばらになった雨空を見上げた。「ここでなら、最後にぱっと一花咲かせてもいい」

2016-11-14 22:16:46
ニンジャヘッズの北沢志保bot @heads_shihobot

モモコはジュリアの隣に座り、空を見上げた。「モモコもだよ。ここを守るためなら、モモコも燃え尽きるまで頑張るから」「それじゃあ、あたしら2人で流星群だな」「うん」少女達は拳を打ち付け合い、笑った。雲の切れ間から、ネオサイタマの痩せた月が見下していた。

2016-11-14 22:19:19
ニンジャヘッズの北沢志保bot @heads_shihobot

【ミリオンスター・サンダーボルト】#1 終わり。#2 に続く

2016-11-14 22:24:50