青猫堂へ

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シャオイー(小伊) @applex002

晴れ渡る青空の下、大きな影を作り出す塔のふもとに二人の少年少女が訪れる。上等な給仕服に身を包んだ少年は、主人である少女と一度顔を見合わせるとその建物のドアを引いた。 『すみません、失礼します。何方かいらっしゃいますか?』 @Maksim_xxxxx

2016-07-16 20:13:19
シャオイー(小伊) @applex002

@Maksim_xxxxx そう何度も訪れている訳ではないが、てっきり黒髪のお兄さんが迎えてくれるものだと思い込んでいた執事は初めて会う二人組の演劇のように洗礼された出迎えに意表を突かれていた。 (だって、まずは店主さまにお会いできるよう交渉するところからだと思ってた…!)

2016-07-16 21:04:51
シャオイー(小伊) @applex002

@Maksim_xxxxx 初対面時の印象が強いからだろうか、「待ってる」という言葉に違和感を覚える。 「まぁ。お邪魔しますね!」 逆に二人に緊張を解かれたのは少女で、ぺこりと行儀良く頭を下げると階段を昇り始める。 『あっ……と、失礼します』 執事も慌ててその後に続いた。

2016-07-16 21:05:14
シャオイー(小伊) @applex002

@Maksim_xxxxx 物珍しげに意気揚々と先を行く主人について二度目となる螺旋階段を上る執事は息が詰まる思いだった。 (すっごく……居辛い!) 振り返らなくても解るグサグサと突き刺さる無遠慮な視線に気付かないふりをしつつ、ようやくその終わりが見えたことに安堵した、

2016-07-17 01:51:53
シャオイー(小伊) @applex002

@Maksim_xxxxx のも束の間。そう言えば最初は泥をかけられそうになったこともあったっけと思い出し(あれも完全にシャオの所為だけど)、扉が開かれると執事は少女の一歩前に歩み出す。 『お久しぶりです、マキシミリアンさま。主人のシャオイーとその従者のクリスです』

2016-07-17 01:52:32
シャオイー(小伊) @applex002

@Maksim_xxxxx 『今日は少し、主人の為にマキシミリアンさまのお時間を頂戴したく参りました』

2016-07-17 01:52:47
シャオイー(小伊) @applex002

@Maksim_xxxxx 『はい、失礼します』 柔和な様子の店主に執事もほっと笑顔で返事を返しつつ、主人に座るよつ促すと自分はそのすぐ後ろへと控えた。 「……あの、」 少女はというと、目の前のやけに貫録も気品もある小さな子供を前に躊躇い気味に口を開いた。

2016-07-17 20:11:11
シャオイー(小伊) @applex002

@Maksim_xxxxx というのも、ここへ来る前に執事の少年から記憶をなくす前の自分と相手は非常に折り合いが悪く、自分が話せば相手は良い顔をしないかもしれないということを聞いていたからである。それでも、やはり今回の話の中心は自分なのだからとおずおずと相手を見遣る。

2016-07-17 20:11:31
シャオイー(小伊) @applex002

@Maksim_xxxxx 「今日こうしてお邪魔させてもらったのには少し事情がありまして……お力添えを願えたらとお願いに来たのですが……」

2016-07-17 20:11:38
シャオイー(小伊) @applex002

@Maksim_xxxxx 『えっと…』 主人への手厳しい店主の対応に執事は視線を彷徨わせる。差し出されたお茶(と呼べるかも解らないもの)は明らかに歓迎されていない証拠だろう。カップをきょとんと見つめ、それからそんな執事を見ていた少女はすくと立ち上がると目の前の少年に頭を下げた。

2016-07-17 22:15:03
シャオイー(小伊) @applex002

@Maksim_xxxxx 「勝手にごめんなさい、失礼しました。クリスさん、座ってください」 『いえ、……その』 どうしたものかと戸惑う自分に比べ、凛と居住まいを直した少女に執事ははっとする。……駄目だ。大変なのはシャオの方なのに。ぼくがしっかりしないと。

2016-07-17 22:15:51
シャオイー(小伊) @applex002

@Maksim_xxxxx 主人である少女が着席を許されていない場所で従者が座ることなどあってはならない。 執事はそのまま。少女の後ろに立って控えたまま、店主の少年に向き直る。 『マキシミリアンさま、実はシャオは……主人はいま記憶を無くしていまして』

2016-07-17 22:16:54
シャオイー(小伊) @applex002

@Maksim_xxxxx 『なにかのきっかけで記憶を取り戻せないかと、主人の知り合いにお会いして話をさせてもらっているところなのです。それで……その、マキシミリアンさまにも以前の主人との話をして頂ければと思いまして。……ご協力して頂けませんか?ぼくからの、お願いですっ』

2016-07-17 22:17:34
シャオイー(小伊) @applex002

@Maksim_xxxxx 『……え?』 気がついているのでは? その問いに全く心当たりのなかった執事は店主の少年が指した少女を見つめ、その言葉を何度も頭の中で咀嚼する。 "君の主人ではない" 主人じゃない。 何を言っているのか。

2016-07-18 01:18:43