Re:Incarnation #03

2015/9/20に頒布した艦隊これくしょんの二次創作小説『Re:Incarnation』をTwitter小説の形態で組み直したもの。
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Re:Incarnation広報室 @ReI_rebuild

「青葉は……青葉は、古鷹さんたちと隊を組みたく、ありません」

2016-11-25 22:18:58
Re:Incarnation広報室 @ReI_rebuild

ここ、呉の鎮守府で古鷹が建造された頃の話。 かつて第六戦隊と呼ばれた四隻のふねのうち、艦娘としてこの鎮守府に所属していたのは青葉しかいなかった。

2016-11-25 22:21:56
Re:Incarnation広報室 @ReI_rebuild

着任したばかりの年若い提督は、かつて、軍艦青葉の乗員だったもののひ孫らしい。そのせいかなのかどうか、青葉は建造されてからずっと、秘書艦兼第一艦隊旗艦という立場で重用されている。

2016-11-25 22:23:18
Re:Incarnation広報室 @ReI_rebuild

徐々に戦力が充実していく中、なぜか第六戦隊の残り――古鷹、加古に衣笠――は、ずっと着任できずにいた。そんな折、ようやく建造でやってきた二人目が、古鷹で。 そして、ほぼ同時期に、遠くラバウルの戦闘海域で、加古と衣笠が保護された。重複艦だった。

2016-11-25 22:26:10
Re:Incarnation広報室 @ReI_rebuild

重複艦を抱えるということは、資源を浪費することと同義だ。通常そんな余剰を抱えるゆとりはなく。大抵の場合は近代化改修の素材にするか、解体して資源に換えてしまう。 話を聞きつけた提督がその前に手を回して、呉への転属が決まり――ようやく、かつての第六戦隊が揃い踏みとなったのだった。

2016-11-25 22:29:45
Re:Incarnation広報室 @ReI_rebuild

そして、執務室に集められた四人に対し、提督は任務に則って、第六戦隊を編成せよ、という命を下した。当然の流れだった。 ――その命令を、青葉が拒絶するまでは。

2016-11-25 22:32:26
Re:Incarnation広報室 @ReI_rebuild

「ふうん、私の命令を蹴るんだ、相応の理由はあるんだろうね?」 「別に、たいした話じゃありませんけど。単に、青葉とみなさんじゃ、練度が違いすぎて……足手まといだというだけです」 じろりと睨みつける提督の視線を涼しい顔でいなす青葉。ただ、青葉の言葉を聞いて黙っていられないものもいる。

2016-11-25 22:34:22
Re:Incarnation広報室 @ReI_rebuild

「足手まといとは、随分な言いぐさじゃないか、ええ?」 「そうよそうよ! 私たちみんな、第六戦隊で、仲間じゃない!」 それはもちろん、加古と衣笠だ。 ラバウルで処分必至だったところを救われ、今まさに与えられんとした活躍の機会。期待、嬉しさ。

2016-11-25 22:37:19
Re:Incarnation広報室 @ReI_rebuild

「かつての、でしょう。青葉は、事実を事実として言ったまでです」 それら全てを、他ならぬ青葉が否定したのだから。 加古と衣笠が激昂するのも無理はない。今にも取っ組み合いの喧嘩が始まりそうな、張り詰めた空気が漂う。

2016-11-25 22:40:55
Re:Incarnation広報室 @ReI_rebuild

「青葉、どうして……」 その中で、古鷹だけが、この状況に置いていかれていた。 呟いた言葉は誰の耳にも届かず、ただただ古鷹の頭の中で反響し続けている。 戸惑っていたのだ。青葉の言葉と、態度の変貌ぶりに。

2016-11-25 22:43:52
Re:Incarnation広報室 @ReI_rebuild

古鷹だって、加古たち同様、久しぶりに四人揃い、第六戦隊としてまた海を駆けられると思っていた。その事実が嬉しかった。そしてきっと、同じ想いでいるはずだと思っていたからこそ、青葉の言葉に面食らった。 なぜ、なぜ―― 古鷹の疑問は解消されないまま、事態だけがどんどん先へと進んでいく。

2016-11-25 22:45:34
Re:Incarnation広報室 @ReI_rebuild

「あのさ、久しぶりの再会に盛り上がるのは構わないけども。あまり勝手に話を進めないでくれないかね、秘書艦どの」 すぱん、と切り込むような言葉が、事態に差し挟まれる。下知以降、ずっと様子を観察していた提督だった。ベリーショートを軽く一度、撫で付ける。

2016-11-25 22:48:05
Re:Incarnation広報室 @ReI_rebuild

「――で、命令違反と取っても構わないか、青葉」 「むしろ具申と取ってもらいたいところですけども。司令官のことですから、編成したらそのまま海域攻略に乗り出せとでも言うんでしょう」 「まあ、任務にもあるし、そうだろうね」

2016-11-25 22:54:11
Re:Incarnation広報室 @ReI_rebuild

「でしょうね。だからお断りしますと言ったんです。青葉でも三人のフォローをしての海域攻略は難しい」 「なら、摩耶とか鳥海あたりでも入れる?」 「重巡だけの隊なんてバランスが悪いでしょう。とはいえ、他のクラスに面倒を見てもらうのも。役割が違いますからね」 「ふむ……まあ、一理あるな」

2016-11-25 22:59:38
Re:Incarnation広報室 @ReI_rebuild

軽妙な重ねられるやりとり。青葉が秘書艦に就いて長いせいか、あるいは別の理由があるのか、お互い相手の次の一手が、棋譜を読むようにわかり切っているように見える。 傍から見れば、それは仲の良い姉妹の会話のようにも見えたかもしれない。 ――そう、姉妹。姉妹だ。

2016-11-25 23:04:33
Re:Incarnation広報室 @ReI_rebuild

呉鎮守府の提督は女性である。 伊形蒔恵。 曾祖父が軍艦青葉の乗員であった彼女は、並みいる優秀な同僚を押し退け、呉を任されている。 実際、あまりに若い抜擢ゆえに、彼女が提督として着任するにあたり、海将補代理という役職が作られてしまうほど、その実力は突出していた。

2016-11-25 23:07:14
Re:Incarnation広報室 @ReI_rebuild

本人はなるたけ声音を抑えて威厳を保とうとしているのだが、特徴的な地声の可愛らしさはどうしても抜け切らず、今一つ迫力に欠ける。 外見も、彼女が使役する艦娘とさほど変わらない年頃のように見えることも相まって、荒っぽい言葉遣いや態度とは裏腹に、どこか愛嬌を感じさせる。

2016-11-25 23:09:35
Re:Incarnation広報室 @ReI_rebuild

「では、司令官」 「そうだな……だけどね」 「ちょっと! 勝手に決めない! 私たちが足手まといかどうかなんてわからないでしょ!」 「衣笠の言う通りだ。やる前から決めつけるなんて、馬鹿げてる」 「……と、彼女らは言っているんだが」 予想通りの展開なのか、にやにやと伊形は青葉を見る。

2016-11-25 23:11:42
Re:Incarnation広報室 @ReI_rebuild

「でしたら、それを証明するだけの話です」 ――そうして、気がつけば三人と一人は、洋上に立っている。

2016-11-25 23:12:57
Re:Incarnation広報室 @ReI_rebuild

『私だって鬼じゃあない。互いの意見を押し通したいなら、自ら証明してみるといい』 離れた桟橋の上から、スピーカーで伊形は青葉たちに話しかける。割れ音に混じり、提督と一緒になって見物している非番の艦娘たちが、どちらが勝つかで賭けを始めている声も聞こえてきた。

2016-11-25 23:17:24
Re:Incarnation広報室 @ReI_rebuild

青葉が無言で、ひらりと彼女に向かって手を振ると、刺すような視線が二つ。前に向き直って、加古と衣笠の敵意を黙殺すると、戸惑いを拭えないまま戦場に立っている、残りの一人に声をかけた。 いまだ戦う準備ができていない、古鷹に対して。

2016-11-25 23:19:17
Re:Incarnation広報室 @ReI_rebuild

「主砲、構えないんですか、古鷹さん」 「……わからない、わからないよ、青葉。ねえ、どうして青葉は」 「どうしてもなにも、さっき言った通りですよ。古鷹さんたちでは、青葉の僚艦たり得ない」 「違う、違うよ。そうじゃなくて、私がわからないのは――」

2016-11-25 23:21:07
Re:Incarnation広報室 @ReI_rebuild

「なあ、青葉。お前さ、さっきから、本気で言っているのかよ、それ」 「何を今さら。じゃなきゃ、わざわざこんな真似するわけないでしょう、加古さん」 「いい加減にしなさいよ! アンタが一人、そんなわがまま言うから――」

2016-11-25 23:22:27