第15.5話 寒空の下の真っ白な旅立ち

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白樺活性炭濾過物 @bookmark_vodka

------------------- ┌ ┐ ┏ ┓ #風見SS ┗ ┛ └ ┘ ------------------- #連日連夜の三点バースト

2016-12-11 22:52:34
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__ いつかまた再開するための出立 __

2016-12-11 22:53:12
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__ 第15.5話 寒空の下の真っ白な旅立ち __

2016-12-11 22:53:16
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15.5-1 恐ろしい経験から二日が経過した監獄島。 窓から差し込む出てきたばかりの朝日が顔を撫で、川内の目が開く。 「朝…か…」 普段であれば絶対にそのまま起きたりはしないところなのだが、今はそうも言っていられない。布団から起き出し、多少ぼんやりする頭で部屋を見回す。

2016-12-11 22:54:33
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15.5-2「…」 起きて最初に映るのは、佐世保の自室のような猥雑さが一切無い簡素な部屋。 昨日も同じだったのだが、それを認識する度に否が応でも二日前の出来事が頭を駆け抜け、締め付けられるような感覚に襲われた。 「…ごめんね」 ぽつりと呟くと、彼女は布団から出て身支度に移った…

2016-12-11 22:55:36
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15.5-3 身なりを整えた川内は、部屋を出て前日に指定された場所へと向かう。 ここは不思議な場所だ。島には今居るこの建物と工廠、倉庫以外には建物らしい建物も無く、配属されている艦娘達も指で数えられる程度しか居ない。それでいて、出来上がったばかりの鎮守府という訳でもなさそうだ。

2016-12-11 22:57:44
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15.5-4「(こんな場所があったなんてなぁ)」 佐世保で過ごしていた頃には聞いた事も無い場所。 思い返せば、付近を通る時には毎回この周辺海域を避けるように航路が組まれていたようでもある。『わけあり』なのは自明とも言えた。 他にも昨日休んでいる間に見た訓練の様子にも驚いた。

2016-12-11 22:59:22
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15.5-5 殆どが独自造りの機材なのだが、難易度は明らかに高かった。 また、本土ではあまり馴染みのない近接訓練にも積極的だった。 …正規空母があれだけの鋭い棒術を使ってくる位だ、納得とも言えるが… 「(でも、あれに対抗してたんだよね、私)」 川内は自分の手をまじまじと見る。

2016-12-11 23:00:24
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15.5-6 普段の自分なら絶対に出来ない身体の使い方を、あの時の自分は自然とやってのけていた。あれは果たして、自分を暴走させた物質に依るものなのか、それとも自分の内側に眠っているもので、やろうと思えばいつかは出来るようになる事なのか? 「(今考えてもしょうがないか)」

2016-12-11 23:01:30
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15.5-7 エントランスの正面扉を押し開けて、外へ。 季節は移り変わり、外へ一歩出た途端に冬の冷たい空気が頬を撫でていく。遠目の波音と、海鳥の鳴く声以外には何も聞こえない、静かな孤島の朝だ。 川内はマフラーを少し引き上げると、向かって右手、工廠の先の高台を目指して歩いていく。

2016-12-11 23:02:42
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15.5-8 そこは五十鈴がここに来た当時、自らの中の『杏理』と向き合った高台。 川内が林を抜けてそこに到着すると、既に3つの人影が彼女の事を待っていた。 「来たか」 目の周りの色が悪く、どうにも不機嫌そうに見えてしまうここの提督、それから鳳翔と明石が彼女の事を迎えた。

2016-12-11 23:03:57
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15.5-9「心の準備はもう良いな?」 風見の問いに、川内は頷いて応える。 すると、明石が見慣れた連装砲と魚雷発射管を渡してくれた。 「はいこれ。川内さんの使ってた武器、ちゃんと直しておきましたからね」 更に続けて、鳳翔が小さな包みを一つ渡す。中身はおにぎりのようだ。

2016-12-11 23:05:06
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15.5-10「有難うございます」 その場で艤装を整え、貰った包みを大事にポーチにしまう。 海へと繰り出す準備は整った。 「鳳翔、頼む」 指示を受けた鳳翔は二式艦上偵察機を取り出し、暫くの間祈る様にそれを両手で握ると、手の上で発艦の出来る状態を作った。 「念の為もう一度説明する」

2016-12-11 23:07:18
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15.5-11「海に出たらこの偵察機にとにかく追従するんだ、川内。偵察機はゆっくりと飛び、君の案内人となる…決して遅れたり、見失ったりしてはならない。この偵察機が飛んだルート以外を通るのもダメだ。そして、もし海上で他の艦艇や深海棲艦を見つけても此方からアプローチしてはならない」

2016-12-11 23:08:30
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15.5-12「…分かりました」 「ん、よし。『ゴール』まで辿り着いたら、後はその偵察機が上手い事やってくれる筈だ…道中、気を付けてな」 風見が頷き、鳳翔が偵察機をー 「あ、あのっ!」 …川内がそれを制した。そして、深々と3人に頭を下げる。 「色々とお世話になりました」

2016-12-11 23:09:44
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15.5-13「他の皆にも、伝えて下さい。お礼を言ってたって。それと…」 彼女は頭を上げ、風見にここ一番真剣な目を向ける。 「いつか必ず、今度は私が皆の力になってみせるって!」 風見は何度か目を瞬かせ…彼女に微笑みと頷きをもって、返答した。

2016-12-11 23:10:52
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15.5-14「…行ってしまいましたね」 昇る朝日に向けて飛び立った偵察機と、それを追っていく川内は徐々に小さくなり、水平線へと溶けて消えて行った。 「彼女は俺達とは違う。ここに残って軍の目を避けて燻っている事はない」 「綾波ちゃん達には何て?」 明石がにやりと笑って風見に聞く。

2016-12-11 23:12:35
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15.5-15「あー…そうだな、この後の説明がまた面倒臭い」 この早朝の出発は、他の面々には伝えられていない。綾波や五十鈴が騒ぎそうだと感じたのが半分、彼女がこの島に後ろ髪を引かれる事になってはいけないと考えたのが半分だ。 「…また、会えると良いですね」 鳳翔は遠い海を見つめた。

2016-12-11 23:13:21
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15.5-16「先ずは会えるようにしてやらなくちゃならんのさ」 風見は小さく身震いをして両腕をさすり、社屋へと踵を返す。海風が冷たくて仕方がないという様子だ。明石がそれを見て呆れた視線を彼に送る。 「軟弱ですねえ」 「真冬でも助兵衛ミニスカのお前の身体の構造と一緒にすんな!」

2016-12-11 23:15:14
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15.5-17「なんつー形容の仕方するんですか!」 「何も間違った事は言ってないだろうが!見てるだけで寒いっつの!」 …既に見慣れたやり取りをしながら高台を去る二人を微笑んで見送り、鳳翔は再度海の向こうへと想いを巡らせる。 この海の向こうで川内を待つものへと。

2016-12-11 23:18:06
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「…東莞さん、彼女の事をどうか宜しくお願い致します」

2016-12-11 23:20:04
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__ 第15.5話 寒空の下の真っ白な旅立ち 終わり __

2016-12-11 23:20:21