ツイッター小説 お気に入りセレクト 2011/02/27

あおば＠トライナックル @aoba_s

#twnovel この惑星が海におおわれるまえ、そいつはいたらしい。頭に赤き冠をかぶり、世界に朝をもたらす声をもつ伝説の生き物。爺ちゃんが言ってたそいつを探して僕は旅にでた。唐揚げにすると美味いとも言ってたから食ってみたくもあるけど、ほんとは僕はただ旅にでる理由がほしかったのだ。

ぼたゆき @botayuqui

#twnovel　「アッチ向いてホイ」が極端に弱い男がいた。右を向く前には右目、左を向く前には左目を何度もまばたきする癖があるのだ。周囲は男を「ウインカー」と呼んだ。ちなみにウインカーには弟がいる。弟は下を向く前、両目を何度もまばたきする癖があり、「ハザード」と呼ばれている。

日向日影🍊📖@文化系物書きVtuber（HUB） @hyuugahikage

#twnovel 映画のような体験を神に請うと突然ギャングから逃げることに。途中会った美人学者から彼らが狙うのは私の先祖の宝だと聞く。墓地で聖剣を発見しギャングを全滅させ、学者とキスをした。名画だ！喜んで帰ると白い服の集団に家が燃やされている。名画は強引に続編が作られるのだ。

サマーソルト谷川 @garnetsnow

君のことがずっと好きでさ。愛してちゃっててさ。ずっと自分のもんにしちゃいたいって思っててさ。とうとう君に近づけたのにそんなつれない反応するからさ。僕は悲しくなっちゃってさ。涙も出ちゃうよね。止まらないよね。涙も、突き立てる鋏もさ。 #twnovel

蝉丸 @semima_ru

#twnovel シャワーを浴びていたら耳に水が入って取れなくなった。片足でぴょんぴょんすればいいというが、夜も遅いし下の階の人に迷惑だ。仕方がないのでパンツとシャツだけ着て、マンションの前でぴょんぴょんしていたら、すぐ近くで悲鳴が上がった。何事だ？

layback @laybacks

一本。二本。三本。大根に跨った若者たちが深夜の峠を駆け抜ける。まるでロケットだ。彼らはコーナーを曲がる度に大根を激しく路面に擦りつけてゆく。これをドリフト走法と呼ぶのだそうだ。ガードレールの側ではお婆さんたちが器を抱え、大根おろしをキャッチしようと身構えている。 #twnovel

おぼろちゃん @oboroose

#twnovel 「むかしね、ここでね、おともだちとあそぶおやくそくをしてたんだよ」彼女が指さした先にあるのは、古びたスーパーの、今はもう使われていないくすんだ橙色のエレベーターだった。昔っていつ？　お友達って誰？　と聞き返してみるが、彼女はまだ三歳なので、首をかしげるばかりだ。

かなりひこくま @kanarihikokuma

#twnovel 肖像画を抱えたゾンビ達が黄昏の街を歩いて行く。折れた尖塔が横たわる広場で半分崩壊したドームで、ゾンビ達は互いの肖像画を見せあっては時にぽぉ〜となり、想像の向こうに文字通り体を重ねる。差し出した手は胸を貫き、鎖骨は鎖骨と絡み、骨盤は骨盤にめり込む。

戸高 豊文 @blueskywide

コトコトコト、朝もやの石畳を馬車がゆっくりとやってくる。コト、馬車が止まる。黒い服の男がふたり降りてくる。壁際に行くと両端を持って大きな袋を持ち上げた。袋の真ん中が重くたわむ。人間のようだ。ドサッ、袋を馬車の荷台に投げ入れた。馬車には[H5N1死体回収車] #twnovel

秋山久生 @isukadasuka

台北の夜市の、透けた下着と魯肉飯の屋台の隙間に、金魚を売る露店があった。極彩色にまみれた夜に金魚の緋色はくすんで見た。「日本の魚だ」独りごちると、綺麗な日本語が返ってきた。「ここで生まれました。ここで死にます」振り返っても、金魚屋の顔は暗がりでよく見えなかった。 #twnovel

かなりひこくま @kanarihikokuma

#twnovel プール掃除のバイトに行ったら中に大きなワニがいた。大丈夫、人には慣れているから、とメイドさんは言うけど冷や汗がじっと滲む。ハイ、と肩を叩かれ手渡されたのはデッキブラシと１本の棒。訝る僕に彼女は言った。「ワニが大口を開けて迫ってきたらこれを、つっぱり棒にしてね」

ぼろいねこ讃 @nekoboro

きみはどうしてまた、そんなところに落ち着いてしまったのか。そこは袋小路、下には根を張れず育つことはできない。わたしは袋小路ごときみを撤去しなければならなくなった。我が身を守るために、断ち切ってしまわねばならなくなった。本当は空を見せたかった。もうしわけない。 #twnovel

ぼろいねこ讃 @nekoboro

砂漠に大きな手が現れ砂をすくって指の間から落とす。海にも大きな手が現れ水鉄砲で海水を宇宙に飛ばす。山にも大きな手が現れクレバスに手を入れて指先で底を探る。大きな手というやつは地球をそうやって愛撫するしかない。だから小さくていい。 #twnovel