【映画の後に原作『この世界の片隅に』を読む】

宗教学者 島薗進氏の一連のツイートをまとめました。
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島薗進 @Shimazono

1【映画の後に原作『この世界の片隅に』を読む】comic.k-manga.jp/title/61815/pv アジア太平洋戦争末期の呉と広島を舞台にした『この世界の片隅に』。ふるさとが生きていた日本。この作品自身が呉や広島に、そして日本に、ひいては世界に「ふるさと」を再生させる働きを生んでいる。

2016-12-22 08:18:47
島薗進 @Shimazono

2【映画の後に原作『この世界の片隅に』を読む】そういえば、石牟礼道子の『苦海浄土』もそのような働きをもった作品だった。水俣病の苦難と悲しみと生き方をひとりひとりの被害者の「肉声」によって表現し、多くの人々に不知火海沿岸がふるさととして蘇るような経験をさせてくれた。

2016-12-22 08:20:38
島薗進 @Shimazono

3【映画の後に原作『この世界の片隅に』を読む】主人公の北條すずは私の母と同年代。絵を描くのが好きで、いつか69年生まれの作者と重ねてしまっている。こうした作品はフィクションであるとしても現代の人々の経験と深く関わっている。そして生きがいや善き生き方の感覚とも関わりが深い。

2016-12-22 08:26:26
島薗進 @Shimazono

4【映画の後に原作『この世界の片隅に』を読む】comic.k-manga.jp/title/61815/pv 何人かの隣人と聞き取りにくい終戦の玉音放送を聞く。「この世界の片隅に」生きる、あのやさしく控えめなすずが、一人立ち上がり「うちはこんなん納得できん!!!」と叫んでしまう場面がある。

2016-12-22 08:27:21
島薗進 @Shimazono

5【映画の後に原作『この世界の片隅に』を読む】手をつないでいた姪の小さな晴美が、すず自身の右手とともに吹っ飛んでしまった、あのときが蘇る。支配してきた海外地域から人々が逃げてくる情景も思い浮かぶ。呆然としたすずが、つぶやく。いや、叫ぶ。「暴力で従えとったという事か」

2016-12-22 08:28:24
島薗進 @Shimazono

6【映画の後に原作『この世界の片隅に』を読む】comic.k-manga.jp/title/61815/pv「じゃけえ 暴力に屈するいう事かね」、「それがこの国の正体かね」、「うちも 知らんまま 死にたかったなあ……」。そこへ何者か、見えないものの慰めの手がすずの頭にふれる。宗教的な場面だ。

2016-12-22 08:28:41
島薗進 @Shimazono

7【映画の後に原作『この世界の片隅に』を読む】震災と原発災害のことを思い起こさざるをえない。忘れようという時期だからか。『この世界の片隅に』が生み出したような想像空間の「ふるさと」を生み出すような経験が被災地に蓄積されているはずだ。3.11前の作品だが、後の作品と思いたくなる。

2016-12-22 08:29:19