第16話 水平線上の大禍時(前半)

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白樺活性炭濾過物 @bookmark_vodka

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2016-12-24 10:50:50
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《シーケンス01 -水底に、煙る-》

2016-12-24 10:59:52
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16-01-1 一筋の光も届かぬ、深く、暗い海の底。 『深海棲艦』と呼ばれる存在が今の海を闊歩するようになるずっと前の時代から、地上の生き物が立ち入る事を拒み続けている未知なる世界。 この星の表面に存在する『人』という存在が、手を伸ばそうと試みて届かなかった、謎めいた場所。

2016-12-24 11:01:17
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16-01-2 深海を包み込む水は光を拒み、空気を拒み、近づこうとするものを容赦なく圧し潰さんとする。それを後押しするかの如く、星の命は外皮である海底にエネルギーを送り出し、地殻を動かし、熱泉を吹き上げ、人にとって有毒な物質をばら撒き続ける。 『ここには来るな』と言わんばかりに。

2016-12-24 11:06:03
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16-01-3 深海棲艦が海を支配するようになった今現在、直線距離にしてみれば僅か4~11kmのその場所へ辿り着こうとすることはより困難を極めた。 だが、それはあくまで『地上の生命』にとっての話だ。 マリンスノウを抜けた先は、言わば古来より囁かれた『異界』。

2016-12-24 11:10:52
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16-01-4 熱水の吹き上げる噴出孔、鉄を身に纏う貝、自ら発光する海月、海底を這う蜘蛛、脳が透けて見える魚に、映画の世界に登場する宇宙生物のようなおどろおどろしい見た目の生物達。 同じ星の上とは思えない程に、環境も生き物達の理も違ってくるこの場所はやはり異界と呼ぶに相応しい。

2016-12-24 11:20:57
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16-01-5 ワーム状の生命体が今日も『上の世界』から降って来た死肉に群がり、自らの命の糧とする。 上から生きて立ち入る事の難しい世界も、物や死は等しく受け入れる。 墓場のようなその場所も、適応した命を包み込む家となる。 広大で、そこに住む者すら全容を知らぬ、巨大な家だ。

2016-12-24 11:27:58
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16-01-6 それが『深海』と呼ばれる場所。 だが…その中には、更に命を極端に拒み続ける場所がある。 地上の存在が知る由もない場所だ。そして、深海の生き物も一部を除いて近づけず、深海棲艦でさえも忌み嫌う場所だ。 暗い水底に、更に黒い色を次々と滲ませていく、その場所だ。

2016-12-24 11:42:03
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16-01-7 ブラックスモーク。熱泉に多くの硫化物が含まれ、海水と反応して黒く煙る現象。見た目はそれによく似ていた。 黒い煙が周囲の水と溶けあい暗黒の世界に更なる帳を下ろす。 重なるように有毒な熱水が吹き出し、異常な高温に包まれる。 深海という空間にあって、炉のようなその場所。

2016-12-24 12:02:41
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16-01-8 ふと、黒煙の作る黒いカーテンが揺らぎ、中から人型の存在がふらりと現れた。黒煙とは真白な髪…ロングヘアにサイドテールを合わせたような髪型だ。そして同様の真白な肌。 深海棲艦、空母棲姫。

2016-12-24 12:09:29
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16-01-9 更に彼女に率いられるようにして、空母ヲ級が後ろから現れる。 一隻、二隻、三隻…黒いカーテンを潜って、大きな艦隊を形成するに十分な数が集っていった。 そして、彼女らには一見して普通のヲ級と比べて違う点がある。纏っているオーラが禍々しい『黒』であった。

2016-12-24 12:14:13
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16-01-10 強力な力を持つようになった深海棲艦が、それに応じて赤いオーラ、黄色いオーラを放つようになる事、また、より強力に改装された深海棲艦が青い閃光を放つ事は認知されている。 だが、彼女らの纏っているのは黒…オーラと言うよりは真後ろの黒煙と似た、黒色の瘴気であった。

2016-12-24 12:16:53
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16-01-11 そんな深海の空母達を、遠目から鋭い目で眺める存在有り。 此方は巨神のような双頭の艤装を率いるようにしている…戦艦水鬼だ。 その表情は、見るからにして『気に食わない』という顔をしていた。 …程なく、一団を眺める戦艦水鬼の目と、ヲ級を束ねる空母棲姫の目が合う。

2016-12-24 12:22:05
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16-01-12 空母棲姫は何も言わず、意味有り気に含み笑いだけを返すとヲ級達に指示を出し、何処に向かってか移動を開始した。 水鬼も、舌打ちだけすると艤装に自らを抱かせ、その場を立ち去る。 『アイツの考える事は良く分からない』…目がそう語っていた。

2016-12-24 12:26:58
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16-01-13 有毒な黒いベールに包まれた深い水底のとある一帯… 生き物を徹底的に拒絶するその場所。 普通の深海棲艦なら、立ち入りすらしないその場所。 そこから生まれ出でた深海棲艦達を、周りの同胞達は特別な名前で呼んでいた。自分達と同じ存在でありながら、謎に包まれた集団。

2016-12-24 12:31:53
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16-01-14 黒煙纏う者『ブラックスモーカー』…深海棲艦の密偵達。 如何にして彼女らが生まれるのか? 同胞達でさえそれを知る者は未だ、少ない。

2016-12-24 12:47:39
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《シーケンス02 -彼女の居なくなった町で-》

2016-12-25 00:50:05
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16-02-1「ちっす、美月ー今日の放課後カラオケ行くけど来るー?」 「ゴメン、麻友、今日はちょっと外せないんだ…」 彼女の返答に、麻友、と呼ばれたショートカットの女の子が膨れる。 「んだよ、最近付き合い悪いなぁ」 「ごめんって、今度埋め合わせはするからさ」

2016-12-25 00:55:26
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16-02-2「しょーがないな、んじゃ今度カフェ行く時は美月のオゴリね」 「うぇー、対価がキツイよ麻友」 とある海辺の町の高校。授業が始まる前の朝の何気ない一齣だ。 …何気なく接しようとしている、となれば見え方も変わるが。 「全く」 麻友は自席に戻ると、ちらと目の端で美月を見る。

2016-12-25 01:00:55
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16-02-3 美月はぼんやりとした表情で頬杖をつき、窓の外を眺めているようだった。…ここ半年間、いつもそんな調子だ。流石に時間の経過とともにマシにはなってきたのだが。 「麻友、どうだった?」 後ろの席から亜里沙が声量を落として聞いてくる。 「ダメ。まぁ仕方ないかね」

2016-12-25 01:03:38
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16-02-4「薄情なのは綾香よねぇ。あの後に連絡の一つでも寄越せばだいぶ違うでしょうに」 「そうなぁ…」 綾香。日野原綾香。彼女達の友人だ。 だが亜里沙が目線を彼女の席にやっても、そこには当人は居ない。 そしてこの後登校してくる事もない。机と椅子は空のまま半年が過ぎた。

2016-12-25 01:08:01
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16-02-5 櫻井美月(サクライ ミツキ)。とりわけ綾香と仲の良かった彼女は、綾香が連絡も無く唐突に居なくなってから、すっかり気落ちしてしまっていた。 麻友と亜里沙は一友人として何とか彼女を元気づけようと試みてきたのだが、今一つ上手くいっていない。 「…何かあったんだ、きっと」

2016-12-25 01:12:27
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16-02-6 今から凡そ半年前の夏の頃、ちょっとした事件が起きた。 綾香が古文の授業中に突然苦しみ出し、倒れたのだ。麻友も亜里沙も忘れもしない。彼女を助け起こした美月はなおの事だ。 綾香は直後に保健室へ移動し、学校を早退し…そして、それを最後に姿を見る事はなくなってしまった。

2016-12-25 01:17:14
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16-02-7「(あの時は一騒動だったなぁ)」 翌日から綾香は体調不良を理由に学校に来なくなった。 『重症なのではないか』と生徒の間で噂になったが、詳しい事は先生も把握しておらず、聞いても答えは得られなかった。 …そして、ホームルームで綾香の転校が告げられたのが、翌週の頭だ。

2016-12-25 01:21:48
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