流星☆ハレーション【渡先輩ハピバ2016二次会？会場】お誕生日記念SS

にゃごったー＠流星☆ハレーション公式 @nyagotter

『……その時、あなたはいくつだっていうんです？』 あなたは視線を空にさまよわせ、少し考えました。 「３５、かな」[65] #ryusei_hpb

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私は小さく吹きだしました。あなたも苦笑いを浮かべて本を閉じました。 『楽しみにしておきましょう。あなたの記憶力と、甲斐性を』[66] #ryusei_hpb

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「ねえ、キルリネス」 涼やかな瞳が、私を見下ろします。 蛍光管に照らされて、氷のように冷たく光るガラスのショーケースを。[67] #ryusei_hpb

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「君は、与えられた任務を果たしたい。たとえ子孫たちを巻き込んででも。その気持ちは、ずっと変わらないんだね？」 「もちろんです。任務を果たすその日まで、この思いは未来永劫変わることはありません」[68] #ryusei_hpb

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あなたは微笑みました。 それは６歳の時よりも、１０歳の時よりも、ずっと上手な微笑み方でした。[69] #ryusei_hpb

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＊＊＊ その夜……。 久方ぶりに扉は開かれました。 ガラスのショーケースに影を落としたのは、見慣れない風貌の男。端正に整った顔立ちだが、どこかにほの暗さが漂っています。[70] #ryusei_hpb

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ばつが悪そうに眉をひそめる、その表情で合点がゆきました。 「あなたでしたか。……随分とやつれたようですね。睡眠をきちんととっているのですか？」 力無く首を左右に振ったあなたは、低い声で切り出しました。[71] #ryusei_hpb

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「君に、謝りに来たんだ。私は約束を破ってしまった」 私は、すぐに返事をすることができませんでした。 ですが、影の底からあなたを見つめて……暗い表情に滲む過ぎ去った年月を見つめて、ようやく理解できたのです。[72] #ryusei_hpb

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１９８６年の彗星が、とうに去っていたことを。[73] #ryusei_hpb

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「本当にすまない」 『私こそ、すっかり忘れていました。おあいこです』 「……すまない」[74] #ryusei_hpb

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あなたは二度謝りました。強く目を閉じて、何かを思うために。 あるいは、私のことを見ないようにするために。[75] #ryusei_hpb

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『あの時、私のために外国語をわざわざ勉強してくれたこと、嬉しかったですよ』 あなたは黙ったまま、何も答えませんでした。 私は、あなたにかける言葉を探しました。 『……実に見違えましたね。今はどうされているんです』[76] #ryusei_hpb

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「事業のことは姉夫婦に任せて、士業で暮らしてる。色んな問題があるんだ、本当に。美浜町の力になるために、これから市議会議員になるつもりだ」 『そうですか。世のことはわかりませんが、立派になったのですね』[77] #ryusei_hpb

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「立派なんかじゃない。忙しすぎて、気づいたら何年も経っていた。自分のことばかりに一生懸命で、大切な約束さえ破ってしまう。君には私を責める権利がある。こんなにほったらかしにしてしまうなんて」[78] #ryusei_hpb

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『アニマストーンとなった私は、所詮、あなたがたと同じ時間の概念を持たない。あの日に目を閉じて、今日あなたと再会するまで、ほんの一瞬の出来事……本当にそうでしたよ』 私は優しく語りかけました。[79] #ryusei_hpb

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でも、それはほとんど嘘でした。 私は、すぐにまた扉が開くのではないかと期待して待っていたのです。 あなたが任務を果たす決意を持って、ここを訪ねてくれることを願っていたのです。 [80] #ryusei_hpb

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……あるいは、その時が来ていれば。 あなたを無理やりにでも拘束して、使命を果たさせようと躍起になっていたかもしれません。[81] #ryusei_hpb

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でも、その時は来なかった。 あなた自身が、私の前に現れなくなってしまったから。[82] #ryusei_hpb

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「不甲斐ない僕を許してくれ。……忙しかったんだ」 あなたは言い訳をしました。 それは、決して口に出して言えない……本音のための、言い訳でした。[83] #ryusei_hpb

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『賢いあなたなら、どんな風にでも生きていけるでしょう』 私の言葉で、あなたはようやく目を開きました。相変わらず暗い表情で、しかし、はっきりとした意志で頷きました。[84] #ryusei_hpb

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「ああ、私は生きる。……僕は、生きていくよ。キルリネス」 私は、少し笑いました。 あなたはまた、かつてのように怪訝そうに眉をしかめました。[85] #ryusei_hpb

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『あなたは誰よりも優しく、私の心を慰めてくれましたね。……星に乗って魂が戻ってくることなど、そもそも有り得ないことですから』 「……君と一緒に、彗星を見たかった。本当に、見たかったんだ」[86] #ryusei_hpb

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なのに、どうしてこんなことに。 声にならないつぶやきと共に視線を落とす、あなた。[87] #ryusei_hpb

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でも、本当は、わかっていて無視したのです。 大人になったあなたは選択したのです。 私と決別し、生きることを。[88] #ryusei_hpb

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上手な微笑みで、距離をとって…… 運命から逃げることを決めた、とても賢い子でした。[89] #ryusei_hpb