【書きかけ】セイバー提督と神通さん【完結編】

深海さかな @dzurablk_kai

神谷の脳裏に突如として、けたたましく警報音が鳴り響いた ミサイルにロックされたことを示すアラートである 頭上を見上げると6発のミサイルが放射線状に散らばり、全く異なる方角からセイバー目掛け殺到している どの方向へ回避しても被弾は避けられそうにない ＃私の彼はブラストランナー

深海さかな @dzurablk_kai

咄嗟に神谷はエリア移動のための緊急電を発砲した 付近で待機していた支援ヘリが機体を吊り上げるためのアンカーを射出するまでに1秒、機体側のアンカー固定に更に1秒 その間にも敵機のミサイルはセイバー目掛けて迫り来る ＃私の彼はブラストランナー

深海さかな @dzurablk_kai

白煙の尾を引いて距離を詰める、高性能爆薬の竜頭 まさにタッチの差であった ミサイルの初弾が地面に激突し信管が作動するより一瞬早く、神谷のセイバーは天空へと舞い上がっていた ＃私の彼はブラストランナー

深海さかな @dzurablk_kai

≪敵機ロスト≫ 眼前でけたたましく明滅するアナウンスに神通は舌打ちを返すと、再び装備を単式機関砲に持ち替えゆっくりとディスカスの歩を進めた ミサイルの着弾前にエリア移動で難を逃れるとは、小賢しい奴 目視巡回で見つけ出して止めをさしてくれよう ＃私の彼はブラストランナー

深海さかな @dzurablk_kai

気がつくとウーハイは大陸特有の季節風が運んできた冷風により、そこかしこに霧が立ち込めている こう煙っては視界も効かない上、頼みの綱の暗視装置も故障と来ている 劣勢に立たされた挙句のどうしようもないほどの窮地だ ＃私の彼はブラストランナー

深海さかな @dzurablk_kai

だが神通は心の奥底、心中のどこかで今の状況を楽しみつつもあった 何、絶望的不利に晒されるのは華の二水戦とて、慣れている なにより今の状況は、かつて経験したゲルベルク要塞の防衛線そのものではないか 正規軍が撤退し殿を務める羽目になったあの日のことを、 ＃私の彼はブラストランナー

深海さかな @dzurablk_kai

神通は片時も忘れたことはない 何のことは無い、今度もきっと天空から鉄の巨人が降ってきて、得体の知れぬ敵を一掃してくれる そう、あのセイバーのように 「・・・あの、セイバー？」 ＃私の彼はブラストランナー

深海さかな @dzurablk_kai

突如、神通の心中に去来する数多の記憶 そうだあの日、ゲルベルクで単身深海棲艦の群れに立ち向かった私を救ってくれたのは、他ならぬセイバーだったのだ パイロットの名前は・・・思い出せない だがとても優しくて、紳士的な殿方だった気がする ＃私の彼はブラストランナー

深海さかな @dzurablk_kai

なぜ私はそのパイロットのことを覚えているのだろう、この機体に乗るようになってから記憶など封印しつつあったのに ああそうだ、私はその男性のことが好きだったのだ 窮地に陥った私を命を賭して救い、ブラストのAIとなって尚私と戦場を駆けてくれた彼のことが ＃私の彼はブラストランナー

深海さかな @dzurablk_kai

・・・そうだ、ようやく思い出した 私は空から降ってきたセイバーに、そのパイロットに恋をした どうしようもないほど、苛烈なまでに・・・ ＃私の彼はブラストランナー

深海さかな @dzurablk_kai

神通の胸の奥に数え切れないほど殺到する思い出の数々と、愛しの彼と過ごした記憶、記憶、記憶・・・ なぜなのかはわからないが頭が、心が張り裂けそうなほどに痛む だからであろうか、反応が一瞬、致命的に遅れてしまった ＃私の彼はブラストランナー

深海さかな @dzurablk_kai

あの日の記憶、二人の思い出の始まりと同じく、空から降ってきたセイバーが放ったアサルトライフルの弾丸を、神通は避けることができなかった ＃私の彼はブラストランナー