発達障害のある成人の認知と思考~アナログゲーム療育の実践から見えてきたこと~

アナログゲームを使って発達障害のある人の就労訓練を行う過程で見えてきた認知・思考の課題。 追記: ・わかりにくかった部分を補足しました。 ・AI関連の記述は本筋と関係ないので削除しました。
教育 ASD ADHD 福祉 発達障害
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松本太一@アナログゲーム療育 @gameryouiku
今年の大きな収穫の一つは就労移行支援施設でのアナログゲーム療育の実践を通じて、成人の発達障害者の方の行動からは見えない思考面の困難さについて、分析が進んだことである。特にわかってきたことは、ADHDとASDの方で困難の性質が違うことだ。
松本太一@アナログゲーム療育 @gameryouiku
たとえば、ゲーム中に、ABCD4つの選択肢の中から適切なものを選ぶという必要があったとき、ADHDの人が誤った選択をしてしまうのはたいてい、4つの選択肢の内容を正確に覚えていないからである。これは最初の説明を聞いていないか、聞いていたけれど忘れてしまったことで起きる。
松本太一@アナログゲーム療育 @gameryouiku
従ってADHDの人の場合は、「最初に説明をよく聞く」「聴き逃したことは質問する」「覚えきれないことはメモする」などの本人側の対策、または「各選択肢の内容をボードに書き出す」といった支援者側を対策を取ることによって判断の正確性が大幅に増す。
松本太一@アナログゲーム療育 @gameryouiku
ADHDの人の場合、単純に回数を繰り返すだけでも抜けていた知識が埋まってくるのでミスはある程度減ってくる。それでも、20%の確立でミスっていたのが5%くらいに減る感じであり、本人も周りも予想できないおっちょこちょいなミスというのは常に起きるので、ミスが多いという印象は残る。

この残り5%がなぜ起きるのかについては要検討。

松本太一@アナログゲーム療育 @gameryouiku
ASDの人はABCD4つの選択肢を示された時に、「Aをやったらどうなるか」「Bをやったらどうなるか」「Cは・・・」と、その選択肢を採ったら起きるであろうことを一つ一つ頭の中でシミュレートして最後にその4つの結果を比較してベストの選択をすることが難しい。概念操作の難しさである。

ここでいう概念操作とは、ピアジェが7歳以上で発達するとしたシンボル操作のことを言っている。
単に概念を思い描くだけではなく、その中で様々な要素を操作(シミュレート)できるということ。

松本太一@アナログゲーム療育 @gameryouiku
そうすると、ABCD4つある選択肢をAB2つに減らすといったことが有効なように思えるかもしれないが、これはADHDの人には(覚えることが少なくなるので)有効ではあっても、ASDの人には決定打とはならないことが多い。
松本太一@アナログゲーム療育 @gameryouiku
ASDの人は選択の困難さは、選択肢の多さによるのではなく、「選択基準を構成する条件の複雑さ」による。もっと言えば、「選択基準を構成する条件が明らかになっているかどうか」による。専門用語を使えば、ASDの人は完全情報ゲームには強いが、不完全情報ゲームは苦手だ。
松本太一@アナログゲーム療育 @gameryouiku
ASDの人の中には将棋や囲碁などを得意とする人が多い。ここからからは私の仮説だが、将棋や囲碁の場合、指し手の選択肢は無数にあるがこれがASDの人にとって苦にならないのは、その中からどの指し手を選ぶべきか判断するのに必要な情報は全て盤上に明らかになっているからだ。
松本太一@アナログゲーム療育 @gameryouiku
これとは対極に、ASDの人が極度に苦手とするのが村人の中に紛れ込んだ狼を暴き出す「人狼」だ。

補足すると言うと、ASDの人は
「相手の状況も自分の状況も全て盤面に表れているゲーム」は得意だが「相手の状況の一部が隠されており、その中身を推測しないと戦略を組めないゲーム」が苦手である。
前者の代表例として将棋・囲碁、後者の例として人狼を挙げているが、他のゲームでも同様の傾向がある。

松本太一@アナログゲーム療育 @gameryouiku
人狼には相手のカードを見られる占い師という役職がある。仮にAさんが「私は占い師だがBさんは人狼だ」と言ったとき、その発言が真であるかは、Aさんが占い師であるか人狼であるかによって変わる。もし後者だったらAさんは嘘をついて他人に濡れ衣を着せようとしているのだ。
松本太一@アナログゲーム療育 @gameryouiku
Aさんが占い師であるのか人狼であるのかは明らかでない。そのため「もしAさんが占い師だとしたら・・・」「もしBさんが人狼だったしたら・・・」という2つの場合をシミュレートした上で自分がどう動くか判断する必要がある。ASDの人はこの手の判断が極めて難しい。
松本太一@アナログゲーム療育 @gameryouiku
この難しさを将棋の上で再現するなら、王の他に女王なるコマを導入して「王か女王かどちらかのコマを取れば勝ち。ただしどちらのコマを取ればよいかは取られる側は知っているが取る側には知らない」というルールにする。このゲームだとASD傾向の方は極端に判断が難しくなると思うがどうか。
松本太一@アナログゲーム療育 @gameryouiku
ASDの人の判断をどうサポートするかというと、「Aの選択肢をとったら、ケースaではこうなりますがケースbではこうなります」「Bの選択肢をとったら、ケースaではこうなりますがケースbではこうなります」という風に、1つの選択肢を選んだ場合に起こりうる結果を説明してあげることだ。
松本太一@アナログゲーム療育 @gameryouiku
しかし、ASDの人の場合こうしたサポートをしてあげたとしても、結果的に複雑な判断ができるということにはなりにくく、そこは障害特性としてご本人や支援者が理解し、職業マッチングに生かすのが基本の流れになる。具体的にいえば、判断の要素が少ない定型業務が向いていることになる。
松本太一@アナログゲーム療育 @gameryouiku
さて、これまでゲーム中に見えてきたADHDの方、ASDの方それぞれの思考・判断にまつわる困難を述べてきたが、最後にこうした障害ごとの特性よりも重要なこととして「不安」が判断の正確性を著しく鈍らせることを強調しておきたい。
松本太一@アナログゲーム療育 @gameryouiku
不安は、外部情報の取り込みを阻害し、焦りによって冷静な判断を妨げる。これは、複数回のセッションを経てゲームで遊ぶことに楽しさや安心感を感じられるようになり不安が除かれる過程で、判断の正確性が大幅に増してくることによって逆説的にわかるのである。
松本太一@アナログゲーム療育 @gameryouiku
だから、たとえば中学生から不登校でひきこもりのまま成人したみたいな人で、対人関係の不安が極めて強く最初はガチガチでゲームにならなかったような人が、回数を重ねて不安が取り除かれてくると、発達障害を持った人に比べて相対的に高いパフォーマンスを出すのを何度か目にしている。
松本太一@アナログゲーム療育 @gameryouiku
逆に、とても朗らかでコミュニケーションもよく「この人なんで就労移行支援施設にいるの?」と思うような人がある程度複雑なゲームをやるとミスを連発して「こういう問題か・・・」と私も他のスタッフさんも目を見開く思いをすることがある。こうした方は短期離職を繰り返しているケースが多い。
松本太一@アナログゲーム療育 @gameryouiku
こういう方は、ご自身の努力で表面的なコミュニケーションの部分では社会適応ができ、結果的に認知や思考の困難が見過ごされてきた人である。就労支援施設で多い単純作業や人前で話すだけのようなセッションでは問題がわかりにくく、ゲームのような複雑な思考作業で初めて問題が顕在化するのである。

コメント

節穴 @fsansn 2016年12月26日
お手元のルールサマリーが分かり易いボードゲームはいいボードゲームだ(高IQADHDボードゲーマー並の感想)
さーたん@もふもふ @tripleodd 2016年12月27日
FEZも苦手なんだろうな。だって敵と味方のPWが開示されてないから人狼と同じことが起こりうる。
新薬たん @ShinHiroi 2016年12月28日
ちょうどこの話題に触れていましたので。【自閉症児は黄色が苦手、そのかわり緑色を好む -発達障害による特異な色彩感覚-】京都大学:http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research/research_results/2016/documents/161223_2/01.pdf …  原著:http://journal.frontiersin.org/article/10.3389/fpsyg.2016.01976/full
雲崙unron*Ω団 @sunshineplace 2016年12月29日
松本先生のツイは自分でもよく咀嚼してしっかり消化したくなるんだよね♪
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