ハイレゾとジャズにちなんだ「音の傾向とマスタリング」のお話

ハイレゾに関しての個人的なおしゃべりをまとめてみましたよ、異論反論大歓迎 それにしても、良い音って何でしょうね?
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Max KidNapper@休止中 @mimimomak

この前吉祥寺ジャズ館にいったら今月下旬リリース予定の Colin Vallon トリオの新作がもう並んでたんだけど、最近のECM新譜の録音は明らかにハイレゾで聴いたほうが音像を把握しやすいのでおとなしく配信待ちです。音質のために我慢するのもなんだか変な気分だけれど。

2017-01-06 20:31:15
Max KidNapper@休止中 @mimimomak

ECMの録音はレコード時代だとその高域の透明さが特徴的で今でもその傾向はちゃんと受け継がれてるんだけど、00年代からの24ビット録音時代に入るとそれに加えて低域も締まりよく量もある感じになってきたので、音の質感がとても自分の好みにあっている。

2017-01-06 20:35:59
Max KidNapper@休止中 @mimimomak

これはあくまで自分の主観ですけど、ハイレゾの利点って高域がよく出るとか細部がどうとかじゃなくて、音の波形が滑らかになった結果低域がよく出るようになるって点なんですよ。空気感が出るのもここが大きい。だから高域スペックだけ重視した「ハイレゾ対応」スピーカーだとあんまり意味がない。

2017-01-06 20:39:35
Max KidNapper@休止中 @mimimomak

よく「ハイレゾはレコードを良質なシステムで鳴らした音に近い」と言われるのはここが大きい。波形が滑らかだから低域に量感があるし、自然な音圧もでる。ただデジタルなので音程が正確すぎてさらにSN比が大きい分、かつてのレコードにあった「ゆらぎ」や「コンプ感」がない分冷たい音とも言われる。

2017-01-06 20:44:32
Max KidNapper@休止中 @mimimomak

デジタル録音でどうしても出てしまう「冷たさ」を克服するにはどうしても録った音の波形に手を加える必要があるわけで。例えば中域が分厚く聞こえるようにするとか。そこで出てくるのが「マスタリング」という作業なわけです。

2017-01-06 20:50:53
Max KidNapper@休止中 @mimimomak

かつてCDの音が冷たいとよく言われたのは録音技術の稚拙さに加え、この「マスタリング」の方法がそこまで確立されていなかったからだと思います。そこに颯爽と登場したのが、昨年亡くなったルディヴァンゲルダー氏による一連のブルーノートリマスターでした。これがCDの音の概念を根本から変えた!

2017-01-06 20:59:40
Max KidNapper@休止中 @mimimomak

ジャズ聴きのフォロワーさんには今更説明不要ですが、ヴァンゲルダーは50〜60年代のジャズ録音を代表する伝説的エンジニア。徹底したオンマイクによるガッツのある音作りはそれまでぼんやりしていたジャズ録音を永遠に変えてしまいました。彼はその「音圧感」をデジタルリマスターにも持ち込んだ。

2017-01-06 21:05:38
Max KidNapper@休止中 @mimimomak

ヴァンゲルダーはかつて自分が録音した作品を自らの手でラッカー原盤をつくりプレスに回していました。その原盤はとにかく音圧がでて迫力あるもの。当時のレコードが高額で取引されるのもこのためです。ヴァンゲルダーはこのやり方をデジタル機器でも再現したのです。

2017-01-06 21:12:01
Max KidNapper@休止中 @mimimomak

その傾向は簡単にいってしまえば「コンプを突っ込んで音圧を出し聴きごたえのある音にする」というもの。そう、今のJ-POPマスタリングとそんなには変わらない。でも氏はそれをちょうどいい塩梅で纏めたのと「中域を重視する」というを崩さなかったので音の波形はギリギリ破綻せず音割れもない。

2017-01-06 21:20:28
Max KidNapper@休止中 @mimimomak

ヴァンゲルダーによるリマスターは24ビットシステムで行われ、再発盤としては異例のヒットを飛ばします。以降、「24ビット」という数値はリマスター盤を出すときの代名詞みたいになります。今私たちが聴くハイレゾデータはこの「24ビット」データをCDの器に押し込む「前段階」の物になります。

2017-01-06 21:25:03
Max KidNapper@休止中 @mimimomak

さて、ヴァンゲルダーによるリマスターはガッツのある音をCDで再現するのには成功しましたが、その分波形をいくらかいじってしまうがために楽器の音のディティールが少々潰れています。例えばハイハットの余韻とか。あと中域重視なためにその音色はちょっと鈍いです。まあそれが味ではあるのですが。

2017-01-06 21:29:15
Max KidNapper@休止中 @mimimomak

おまけにこのリマスターはいらぬ副産物まで生んでしまったと自分は考えます。それが近年のJ-POPに見られる音圧マシマシマスタリング。「音がでかいのがいいんだ」と捉えた売り手がそのバランスも考えずただコンプを突っ込んで、更にドンシャリ気味のEQにして世に出される音源が多くなりました。

2017-01-06 21:33:29
Max KidNapper@休止中 @mimimomak

これらのJ-POPマスタリングが流行り出したのが90年代後期。ヴァンゲルダーのリマスターが世に出たのが98年。丁度時期が重なってるのです。CDの課題が一つ解決したのと同時に、それが原因で音質の劣化につながる傾向が生まれた、少し悲しい事例の一つです。

2017-01-06 21:35:52
Max KidNapper@休止中 @mimimomak

誤解を解くために言っておきますが、音圧の高いマスタリングが全て悪い訳ではありません。むしろジャズ録音で良質なものは音圧高めなのが多いです。しかしそれは適切な録音とマスタリングによる産物であり、決して安易なコンプ上げマスタリングで音が潰れたものではありません。

2017-01-06 21:38:38
Max KidNapper@休止中 @mimimomak

ただ、この傾向は近年のハイレゾブームで少し変わりつつあるように見えます。当初はスペックのみで語られていたのですが、その流れでヘッドホンでディティールを細かく聴くリスナーが増えた分、かつてのようなマスタリングでは納得しないという声が上がってるからでしょうか。

2017-01-06 21:43:31
Max KidNapper@休止中 @mimimomak

先に書いたブルーノートの名盤たちも、ハイレゾ用に新たにリマスターされて配信されるようになりました。その音色はとてもナチュラルで、何よりシンバルの音がとても鮮烈かつ繊細。とても50年代の録音とは思えない。迫力だけでないヴァンゲルダーの凄まじい録音技術の新たな面を聴かせてくれます。

2017-01-06 21:51:11
Max KidNapper@休止中 @mimimomak

以上、ハイレゾとジャズにちなんだ「音の傾向とマスタリング」のお話でした。長々と語ってしまいましたが、良い音って何だろう?と考える際の参考となれば幸いです。お目汚し失礼しました。

2017-01-06 21:59:51
Max KidNapper@休止中 @mimimomak

追記。昨年亡くなったルディヴァンゲルダーを追悼してか、ユニバーサルがまたまたブルーノートのRVGリマスター盤をリリースしています。今度はSHM-CDだそうです。手を替え品を替えようやるなあ。てか、マスタリングエンジニアの名前が商売になる人ってこの人しかいないんじゃないだろうか。 pic.twitter.com/WbBhNBLQEj

2017-01-06 23:43:09
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