柿谷浩一先生の『好きな人がいること』考察ツイートまとめ。

柿谷浩一(kaki) @prince9093

【スキコト⑥】美咲が、最初の洗顔で隠そうとするのは、千秋に《失恋した》自分。それが、夏向の「今までしらなかった〈顔〉」を様々知る内、後半の洗顔では《恋する》照れた自分を隠す方へ移り変わっている。この恋の変位を表す「(洗)顔」をめぐる演出も印象的だった回。 #好きな人がいること

柿谷浩一(kaki) @prince9093

【スキコト⑦】夏向を迎えに行こうとする2人…だが冬真の居場所を報せる電話が行先を分ける。 ・美咲(春)➡〈夏〉向 ・千〈秋〉➡〈冬〉真 それぞれが「追いかける/待っている」相手は《名前の物語》の元に運命づけられている。前の季節が、次の季節を追いかける形で。 #好きな人がいること

柿谷浩一(kaki) @prince9093

【スキコト⑦】夏向を励ますべく誘うサイクリング。最初、連れ回す美咲が前を走り、夏向が後をついて行く。この《夏➡春》という崩れた季節の順序は、「遅いぞ、先行くぞ」を経て《春➡夏》に逆転する。元の「夏」の位置に還る形を通して、夏向が自分を回復する、見事な構図。 #好きな人がいること

柿谷浩一(kaki) @prince9093

【スキコト⑦】冒頭で美咲の「おかえり」は受け入れられない。それは夏向を迎える存在は、次に来る季節「秋」を担う千秋以外にないから。そして交わされる「夏向おかえり/ただいま兄貴」は重く美しい。2人が幼き日に何度も反復し、血縁を越えた兄弟の絆を築いた言葉として。 #好きな人がいること

柿谷浩一(kaki) @prince9093

【スキコト⑧】最後の落ちたケーキが象徴的。真っ二つに割れたハート型のチョコは、始まりかけの「美咲/夏向」の恋の亀裂を表すだけではない。「祝」の字、その漢字のつくりの《兄》にヒビが入る形で割れることで、夏向にとっての兄貴が崩壊する瞬間を、見事に表象していた。 #好きな人がいること

柿谷浩一(kaki) @prince9093

【スキコト⑧】次第に感情を抑えられなくなる千秋。その目に見えない心の動きが、視線を通し描かれていく。赤いノート、夏向の切るトマト、美咲の赤字の絵、ケーキの赤いソース…。無意識の内に視界に入る《赤》たちが、彼の中で沸々とわき起こるものを刺激し、また暗示する。 #好きな人がいること

柿谷浩一(kaki) @prince9093

【スキコト⑨】約束に遅刻した美咲に夏向「遅ぇよ」➡千秋「遅いって分かってる」(告白)➡ダイニングアウトでの美咲の遅刻➡告白する美咲に夏向「遅ぇよ」。前3つの《遅れ》はすべて愛を含んだもの。ラストの冷たく見えた返答にも愛はあるか…それを問うような語彙の流れ。 #好きな人がいること

柿谷浩一(kaki) @prince9093

【スキコト⑨】海辺でのラムネのシーン。自分のではなく、わざわざ美咲の空瓶からビー玉を取り出してあげる。夢は人が与えるものではない。大人になると自分で捨ててしまうと言う彼女の《自分の夢》を、あくまで拾って渡すだけ。細部に至るまで実直な夏向らしいワンシーン。 #好きな人がいること

柿谷浩一(kaki) @prince9093

【スキコト⑨】失恋を慰めるべく歌われるクリープハイプ『ラブホテル』の「夏のせい 夏のせい～♪」。後の歌詞「これから季節が冬になってしまったら 誰が温めてくれるんだよ」に見事に重なるような形で、千〈秋〉に〈冬〉真が歌う構図、良かったなぁ。 #好きな人がいること

柿谷浩一(kaki) @prince9093

【スキコト⑩】ラストも鮮やかに《名前の物語》で彩らていた。ひと夏の恋の物語。その「夏の向こう」にあったのは、2人のハッピーエンド。インスタの写真を見た千秋が「向こうは雪か」と呟く。遠距離恋愛を選んだ2人が《彼方＝海の向こう》にいる予想外なクリスマス風景。 #好きな人がいること

柿谷浩一(kaki) @prince9093

【スキコト⑩】序盤:仕事づけの美咲が〈好きな人がいる〉＝恋を思い出す。中盤:夏向・千秋・楓が入り組んだ〈好きな人がいる〉恋模様とその苦悩や葛藤。終盤:どこに〈好きな人がいる〉かというあり方をめぐる恋の行方。タイトルの意味を徐々に変えつつ展開した物語だった。 #好きな人がいること