不知火に落ち度はない特別編 -アウターヘブンIF-(前章)

そんなわけで、今回は特別編のIF話。 本編でも影響力のあるアウターヘブン。 その誕生には天龍の犠牲と龍田の絶望がありましたが、今回は『天龍を助けることが出来ていたら?』という所から始めていこうと思います。 長々してますが、よろしければのんびりごらんください。 続きを読む
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不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

ただ、立場上は上官であり、真正面からぶん殴るという機会は、当然与えられるはずもない。 精々が長門と共謀し、補給資源を横取りすることや、防衛線の変更などが精々である。 その都度、三船からは抗議と勧告が飛んでくるが、それらは書類倉庫の中にぶち込んでいた。 #不知火に落ち度はない

2017-01-21 00:25:12
不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

そうすることにより、時間を稼いだ。 疲労も怪我も、一切無視して前線に立とうとする『戦友』の時間を。 正直、これは手としては悪手でしかない。 だが、状況がそれ以外を許しはしなかった。 #不知火に落ち度はない

2017-01-21 00:31:46
不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「長門。三船の状況、どうにかなんねえのか」 「現状では無理だ。後援会に頼んでみる。そのための時間を稼げ、兵頭」 かつて、長門と話し合って出た答えはそれであった。 長門もまた、三船提督下の状況には異を唱える立場だった。 #不知火に落ち度はない

2017-01-21 00:37:00
不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「私の場合は、三船の思想が台頭して貰っては困るからな。明日は我が身だ」 「だったらもうちょい急いでくれ。ぶん殴って早急にご退場願いかねない」 「それはやめろ。お前がクビになったら身を守れない」 そんな、冗談のような話をしたこともある。 #不知火に落ち度はない

2017-01-21 00:39:14
不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

そうして時間を稼ぎ出してから早一年が過ぎ去ろうとしており、状況は悪化の一途を辿っていた。 量産体制が整っているとは言え、艤装はそう簡単に作れる代物ではない。 一つ作る間に、二人死ぬ。 そうして、悪化した戦況で三人目が死ぬ。 #不知火に落ち度はない

2017-01-21 00:45:06
不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

減った分の不可は、現状生き残りの最有力である天龍と龍田にかかり。 そして、出撃回数の多い天龍への負荷が激増していた。 これは艤装の効力と言うよりも,地力の違いなのだろう。 天龍は、戦神の加護でも持っているかのようなタフさと、センスに恵まれていた。 #不知火に落ち度はない

2017-01-21 00:46:59
不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

ただ、それでも── それでも、天龍は人間であった。 #不知火に落ち度はない

2017-01-21 00:49:20
不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

その証左に、天龍の左目は失われ、その体には幾重にも傷が刻まれた。 俺が初めて出会った頃の両眼が揃った天龍の姿は、今や写真の中にしか居ない。 「お揃いだぜ」と笑う姿に、馬鹿野郎と返した記憶がある。 #不知火に落ち度はない

2017-01-21 00:53:18
不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

そうして、長門の後援会のための時間稼ぎは、とうとうクソッタレな現実に追いつかれた。 深海棲艦群の大規模生息地が発見され、三船は掃討作戦を軍会議で提唱。 他基地との連携を取るために48時間の時間が与えられ、俺達も作戦に組み込まれた。 #不知火に落ち度はない

2017-01-21 01:03:08
不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

打つ手無し。完全に詰んだ。 深海棲艦群の襲撃において、先端に立つのは三船提督指揮下の水雷戦隊。 虎の子の天龍は先の戦闘に置いて、艤装を中破。 代替要因である龍田は現状、疲労によりほぼ動けない。 戦力が集まれば、深海棲艦群の打破は確実と言われるが。 #不知火に落ち度はない

2017-01-21 01:06:07
不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

試算結果から導き出される答えは、勝利と引き替えに参戦した部隊の1割が損失。 そして、天龍・龍田を含めた三船艦隊半数の轟沈である。 これは俺の計算じゃない。 三船の野郎が、作戦説明時に出した試算結果である。 #不知火に落ち度はない

2017-01-21 01:13:46
不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

ならばと、俺は最後の賭けに出た。 48時間の間に、長門に最大限動いて貰うことにしたのである。 この件がもし実行され、新たな事例となったならば── 戦友を失うだけではなく、以後艦娘という『兵器』の在り方を決定づけてしまうのだ。 #不知火に落ち度はない

2017-01-21 01:18:58
不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

同時に俺は、俺の成すべき事を行うこととした。 天龍の説得と──三船提督への直談判であった。 #不知火に落ち度はない

2017-01-21 01:28:22

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

まず、訪れたのは俺が権限を持つ格納庫である。 そこには慌ただしく長門型の艤装をメンテする作業員の姿と── 「だーかーらー、駆動んところのパーツ取っていいから、ばーっと溶接してやってくれよ!」 「無茶苦茶だろ!」 主任相手に話をふっかける小娘が居る。 #不知火に落ち度はない

2017-01-21 01:47:48
不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「いいとこきた兵頭。この無茶苦茶な事抜かすバカ追い出せ。邪魔だ」 「俺提督なんすけど、おやっさん」 「だったらとっとと命令しやがれ。バーナーで頭溶接する前にな」 殺気立った空気に感染してるのは、俺んところの技術主任だ。 この勢いならマジで溶接しかねん。 #不知火に落ち度はない

2017-01-21 01:50:57
不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「つーわけで、天龍。ツラ貸せ」 「あんたまでかよ兵頭のおっさん。オレ追い出して艤装に何する気だ」 そう。このおれをおっさん呼ばわりする一見小娘的な生命体が、天龍。 眼帯がなければ、きっとそこらの学生で十分通用する年若さだが──。 #不知火に落ち度はない

2017-01-21 01:55:22
不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「お前のかわいい艤装はおやっさんがちゃんと面倒見てくれっから。それよか折り入って話あんだよ」 「あん? あー、ちょい待てよ? 当ててやるから」 ほう。当ててくれるならやりやすい事この上ないが。 天龍が俺の考えを当てられたことなど一度も無かったりする。 #不知火に落ち度はない

2017-01-21 01:57:04
不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「龍田ンところの鍵。ほい」 「ちげーよ!!!?」 差し出された鍵を遠慮無く突き返すわけで。 どこをどういう感じで考えたらそうなるんだよお前。 これからどシリアスな話しようとした俺の話の腰を複雑骨折させるのやめてくんね? #不知火に落ち度はない

2017-01-21 02:02:32
不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「いや。姉としちゃ複雑だけどさー。いーんだぜ?」 「わかった風ににやつきながら肩を叩くんじゃねっつの。人の話聞いてくれませんかね!?」 「隠すなって。仲いいじゃん、龍田と」 「その会話の内容お前知ってるの?」 絶対知らないと思うけどさ、お前。 #不知火に落ち度はない

2017-01-21 02:06:25
不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「たりめーだ。男と女が話す内容つったら、だいたいわかるって。ガキじゃあるまいし」 「ほー。じゃあ俺とお前の間に恋が芽生えてないのってどういう不具合?」 「あ、オレ無精髭NG」 「すぱっと切られたな」 「そうそう気に病むなって。龍田は押したらいけるから」 #不知火に落ち度はない

2017-01-21 02:11:11
不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

断言するとそれはない。 龍田、俺のことよく知ってますし。 つーか天龍以外知ってると思うけど、長門と俺フツーに付き合ってますし。 どうしてこいつは、戦闘以外のことは全部すっぽぬけて置き去りにしてるのかと問い詰めてやりたいところである。 #不知火に落ち度はない

2017-01-21 02:12:49
不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「じゃあ、なんだよ。オレの艤装を48時間以内に感動のフル稼働に出来る手でもあんのか?」 「あったらどうするって?」 「天龍様の大活躍を約束し、この鍵をおっさんにやろう」 「だから、それ龍田の部屋の鍵だろ!?」 繰り返すが、俺長門と付き合ってますから。 #不知火に落ち度はない

2017-01-21 02:17:17
不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「アホな事はいいからちょーっと、外で話そうぜ」 「お。何、MAXコーヒーとか。どこで買ってきたんだよ」 餌を出してお誘い申し上げるとあっさり釣れる天龍。 こいつ味覚はかないのお子様だったりするわけで。 そのくせコーヒーじゃないと、やだという複雑さよ。 #不知火に落ち度はない

2017-01-21 02:29:39
不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

なお天龍フェイバリットはUCCミルクコーヒーか、ダイドーのMコーヒー。 ブラックはどのブランドでも、半分も飲めないお子様味覚党である。 「そいつは内緒。飲みたきゃ話につきあえよ」 「しょーがねーなー。おっさんにつきあってやんよ」 はあ、とため息一つ。 #不知火に落ち度はない

2017-01-21 02:33:22
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