姫「嫁に行くことで戦争を止めたいが、わたしの顔は普通なので美しい身代わりを立てることにした」

顔は普通だけど多少小賢しい末っ子の姫様と、察しが良くてめちゃくちゃ顔がいいけど性格の悪い王様付の文官と、その文官の妹で心も顔も美しい娘の話です。 2020.01.24 完結しました。
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乃井 @no_el_ty

「はあー。……王弟に体を許したお前の妹を、そして我が国を、どう守ればよいだろう?その無駄に回る頭を貸すがいい」 「気になさらずともよいのでは?」 「なに?不義が王に伝われば、死罪もありえるぞ。そして我が国は……」

2017-01-26 16:06:17
乃井 @no_el_ty

「私としては、妹が死罪になる確率より、嫉妬した王に妹がめちゃくちゃに抱かれる可能性のほうが高いと存じますが」 「めちゃくちゃに抱かれる」 「女性向け恋愛小説においては」 「女性向け恋愛小説」 「こういう場合にはそういう展開になることが多うございます」

2017-01-26 16:07:09
乃井 @no_el_ty

「知ってる」 「なんと」 「読んだ」 「いかがでしたか」 「それなりに面白い。……ではなく。確かにそのような展開は多いが。やはり小説のご都合主義ではないか?」 「そうでしょうか?」

2017-01-26 16:09:23
乃井 @no_el_ty

「王は美しい所有物を弟に触られたのが腹立たしくなり彼女をめちゃくちゃに犯してやると思っているが実は無意識に彼女を愛していると?」 「思ったより読み込んでおられる」

2017-01-26 16:09:49
乃井 @no_el_ty

「……いや。あり得ぬだろう、やはり。世の中そのように都合のいいようには……」 「絵に描いたような昏君のいる世の中ですが」 「度々我が両親のことを引き合いに出すでないわ、虫唾が走る。……まあだが、お前ほどの男がそう言うのだ。暫く様子を見てみることにしよう。護身用の短剣を寄越せ」

2017-01-26 16:15:48
乃井 @no_el_ty

「えっ。まさか、妹になにかあったら王に飛び掛かろうと?」 「そうだ。なにか問題があるか」 「姫様にそのようなことはさせられません」 「……お前……」 「死体が二つに増えるどころか、私にまでとばっちりが来るに決まっているではないですか!」 「王の前にお前を刺すぞ」

2017-01-26 16:17:25
乃井 @no_el_ty

「…………」 「心中、お察しいたします」 「…………分かるか?」 「…………申し訳ございません。気休めを申しました」 「よい。その気遣いを甘んじて受ける」 「まさか王と王弟があのような荒淫に耽るとは」 「女性向け恋愛小説においては」 「女性向け恋愛小説」 「……よくあることだ……」

2019-08-28 18:04:20
乃井 @no_el_ty

「昨今の流行りでございますか」 「恥じる美姫を高貴な二人の所有物にする、という流れ……"これ女性向け恋愛小説で読んだぞ!!!!!!"という言葉を何度飲み込んだか」 「思った以上に続けて読んでおられる」 「あれを読んでいれば女官との世間話の話題に事欠かぬゆえな。……面白いし」

2019-08-28 18:04:21
乃井 @no_el_ty

「しかし、姫様に何事もなく、ようございました」 「行為を見せつけられたことを"何事もなく"と言うべきか否か」 「姫様が指一本でも触れられていたならば、腹を切る所存でございました」 「嘘だろお前……そんな忠信のような気持ちを持っていたのか……?」 「心底からのお言葉、そこそこ傷付きます」

2019-08-28 18:22:51
乃井 @no_el_ty

「すまぬ。妹が二人がかりで犯されてもあまり心動いたようすが見られなかったゆえ」 「そこで心を動かしたら、それこそ女性向け恋愛小説では?」 「…………なに?そういうのもあるの?」 「兄妹もの……というものが」 「ご禁制では?」 「我が国ならば死刑でございましょうや」 「うわ……」

2019-08-28 18:22:51
乃井 @no_el_ty

「大体、このような状況で心動かされ激昂するなど、今さらかと存じます。妹を替え玉にした時点で、何が起ころうが想定の範囲でございます」 「替え玉が見破られ、殺されてもか?」 「……姫様、これは論理的ではない話ですが」 「うむ」 「見目の麗しい者は、なんとかなるのです」 「…………はい」

2019-08-28 18:22:52
乃井 @no_el_ty

「馬鹿にしましたね」 「鼻で笑ってしまったわ。しかし美しいものはそれだけで赦されるよな、理解はできないが納得はする」 「お分かりいただけますか」 「ぶっちゃけ、この国に来てからお前がちょくちょくやる不敬も顔で赦している時がある」 「なんと」 「お前、ほんとに顔はいいからな……」

2019-08-28 18:37:31
乃井 @no_el_ty

「身に余る光栄にございます」 「そのせいでやっかまれることもあるが」 「…………さては姫様、このように執務室へ呼びつけられるたび、あらぬ事柄でいじめを受けておいでで?」 「いじめというほどでは」 「沓が新しいのはそのためですか?髪飾りはいかがされました」 「些事である。気にするな」

2019-08-28 18:37:31
乃井 @no_el_ty

「…………申し訳ございません」 「謝るでない。この状況は総て我が采配によるもの。国の滅びに関わらぬことは些事よ」 「これも私の顔が美しいばっかりに……」 「…………お前、実はあんまり悪いと思ってないな?」 「はい、ええ、あまり。起こってしまったものは仕方がないかと」

2019-08-28 18:37:32
乃井 @no_el_ty

「不敬」 「申し訳ございません。しかしながら、どのようにかして対策は打ちましょう」 「そうだな……手始めに人目のあるところで私を酷く打ちすえてみるか?」 「打ちすえる?」 「嫌がらせのために呼び出されている、と取らせるのだ」 「なるほど。……しかしながら、姫様に手をあげるなど」

2019-08-28 18:53:16
乃井 @no_el_ty

「いや流石にフリだぞ?本気で打ちすえたら打ちすえ返してやるからな」 「…………たとえフリでも姫様を打ちすえるのは」 「目が泳いでおるぞ」 「まあ、ええと、打ちすえるのはなしとしても、よい考えかと存じます。善は急げ、すぐにでも実行いたしましょう」 「よいだろう。では大庭園に行くか」

2019-08-28 18:53:17
乃井 @no_el_ty

「あ、姫様、足元」 「え、……ひゃん!?」 「姫様」 「はい」 「女性らしさとは、咄嗟のときに出ると申します」 「…………男性らしさもな」 「ここは、女性らしく素直に転んでいたほうが愛らしいかと……」 「お前が支えるとわかっていれば曲芸師ばりの開脚を決めることもなかったわ……」

2019-08-28 18:53:17
乃井 @no_el_ty

「むしろ何故支えないと思ったのです」 「お前を信じなかったのではない、お前の反射神経を信じなかったのだ」 「より悪いです。お怪我は?足は痛くないですか」 「大事ない。……それよりいつまで触れているつもりだ」 「いえ、……女性向け恋愛小説においては」 「女性向け恋愛小説においては」

2019-08-28 18:53:17
乃井 @no_el_ty

「このような事態が起きると、女性はときめき」 「ときめき」 「恋に落ちるものですが。……大丈夫でございますか」 「……………………ないわー」 「それはようございました」 「むしろお前、あると思ったの?」 「いえ……しかし私、顔はよいので……間違ってときめいたら大変かなと……」

2019-08-28 18:53:18
乃井 @no_el_ty

「さて、美姫を兄弟で所有することにより内乱の恐れはなくなったかに見えるこの国だが」 「忍び寄る敵国の影、と」 「……まさか南の商業国から来た客人があれに手を出すとは……」 「未遂に終わり、なによりです」 「死ぬかと思った」 「ご立派でございました」

2019-09-04 11:43:39
乃井 @no_el_ty

「……今頃、お前の妹は"折檻"されているのだろうな」 「折檻」 「縛られたり」 「縛る」 「じれったくいじめられたり」 「いじめる」 「縛ったまま奉仕を強要されたり」 「奉仕を強要」 「外国の趣向というものは理解できぬよな」 「左様でございますね」

2019-09-04 11:43:39
乃井 @no_el_ty

「……お前の妹が誘いをかけたわけでもないのに。仕置きなどと言われて弄ばれるのはあまりに……」 「……女性向け恋愛小説においては」 「今その話する?」 「羞恥を煽られ責められることは、好まれる流れでございますが。……現実において、好まれるか好まれざるかは、人の性趣向によりますれば」

2019-09-04 11:43:39
乃井 @no_el_ty

「だよね……」 「ところで、我が妹は流されやすい性格ながら、本当に嫌なことを我慢していられるほど気が長くもございません」 「……うん?」 「それらを鑑みるに、妹は本心から嫌がってはおりません」 「嫌がっていない」 「嫌がってみせつつ、実は快感に打ち震えております」 「快感に」

2019-09-04 11:43:40
乃井 @no_el_ty

「ですから姫様、あまり気になさらず」 「……ここで、そうか、と言うのは人としてどうかと思うが、……そうか……」 「はい」 「……そうかぁ……事実は、小説より奇なり、だなあ……」

2019-09-04 11:56:54
乃井 @no_el_ty

「……そんなことよりも、姫様。この首の傷はいかがなさったのです」 「ああ。庇った時、南の王付きの忍に拘束されたから、そのときのものだろうな。痛みはないが、深いか?」 「……薄皮が切れておいでです。深くはございませんが、湯浴みの際には沁みるでしょう」 「薬を」 「は。失礼いたします」

2019-09-04 12:53:55
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