ミグ25の生態まとめ

「世界の傑作機」シリーズから、ミグ25の小ネタを備忘録がてら纏めました もくじ ・明日から使える便利な小ネタ ・ミグ25の性能 続きを読む
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ミグ25の機体材料と燃料搭載方式

深海さかな @dzurablk_kai

ミグ25が機体にスチールを用いた一番の理由は、耐熱性 書籍内に載っているミコヤン設計局員の言を引用すると 「スチールの比重はアルミの三倍だが、強度も三倍なので使う鋼材の量は3分の1で済み、注意深く設計すればそこまで重たい機体にはならない」 とのこと これには目から鱗だった

2017-01-27 17:59:53
深海さかな @dzurablk_kai

ミグ25の機体に使われた金属の内訳は、スチール80%、アルミ11%、チタン8%、その他1%で、後継のミグ31(スチール50%、アルミ33%、チタン16%、その他1%)に比べても大変スチール比率が高いのが特徴 これがミグ25特有の長所ももたらしてるらしい その1つが、燃料搭載量

2017-01-27 17:31:26
深海さかな @dzurablk_kai

通常の戦闘機では自重の半分、最大離陸重量の3分の1程度が燃料搭載量で、大陸間を横断する旅客機でも最大離陸重量の4割程度にしかならない燃料比率なのが、ミグ25では驚くなかれ 自重20トンに比べての燃料はなんと14トン! 実に7割を燃料が占めている!

2017-01-27 17:34:44
深海さかな @dzurablk_kai

というのも、機体をスチール製にしたことでジュラルミン機体では困難な溶接構造を用いることができたことがその理由 リベット留のジュラルミン機体では機体の内側にシール材を手作業で塗らなくてはならないのに比べ、その作業が不要になり手の入らない機体細部まで燃料タンクにすることができたため

2017-01-27 17:37:39
深海さかな @dzurablk_kai

ミグ25では仏のミラージュF1やミグ23でも使用実績のあった胴体のインテグラルタンクに加え、この溶接機体そのものをタンクとしたことで、17660Lもの燃料搭載量を成し遂げたという 因みにこの溶接機体の長所はミグ31にも引き継がれててそちらは胴体を延長したことで20250Lも積める

2017-01-27 17:41:05
深海さかな @dzurablk_kai

他にも溶接機体のメリットとしては、燃料タンクに亀裂やクラックが入って燃料漏れを起こしても、すぐさま破損箇所がわかった、なんてのもw この機体の隅々まで収納された燃料は機体の熱が吸うことで、空力加熱も抑えてくれたらしい

2017-01-27 17:43:20
深海さかな @dzurablk_kai

スチール以外の機体の金属として、チタンも主翼の前縁に用いられた 面白いのは「その他」の金属で、ミグ25には一機あたり5kgの銀が使われてたんだとかw エンジン回りの断熱材として、銀でメッキしたスチールネットとガラスウールを用いたためらしい 飛行機だけに、とんだ高級品w

2017-01-27 17:46:49

スチール機体の問題点

深海さかな @dzurablk_kai

とはいえ、鋼はアルミに比べて弾性係数(ヤング率)が高い(ミコヤン設計局員の言だと2倍、本文で筆者が述べているJIS規格だと2.5から3倍)ので、やはり機体の強度不足には悩まされたとか 前述の主翼の振動対策も、それが理由 鋼はとかく曲がりやすい

2017-01-27 18:02:24
深海さかな @dzurablk_kai

主翼の強度を低下させたもう1つの原因は、設計段階で機体の設計荷重を4Gと通常の戦闘機の半分程度に落としていたこともある、という これはミグ25の任務が「大気の薄い高空でSR71やB70といった高速機を迎撃する」ことが目的だったため だからマッハ3なんていうトチ狂った速度を目指した

2017-01-27 18:28:18
深海さかな @dzurablk_kai

とはいえいくら大気が薄いとはいえ風圧そのものは速度に比してガンガン来るし、半面機体強度は並の機体の半分なので外板も半分の厚みでペラッペラ これが主翼の捻れを引き起こした原因で、後には戦闘機型(P型)に装備されたパイロンを偵察機型(R型)にも装備することで主翼強度を上げたとか

2017-01-27 18:32:42
深海さかな @dzurablk_kai

そうそう、さっきチロッと名前を出したSR71 あれが超高速飛行のために専用燃料(JP7)を使うのは有名だけどミグ25も気化しにくい専用燃料(T6、T7P)を使うらしい ・・・しかし、1000機以上も生産されたミグ25はSR71に比べ、燃料の融通はかなり楽だったんじゃないかしらw

2017-01-27 18:42:42

エジプトでの実地試験

深海さかな @dzurablk_kai

ミグ25ってソ連本国で実戦任務に就くよりも早く、エジプトで偵察任務に就いてたのか ソ連本国で最初にミグ25を受領したのはウラルの西、サヴィノ基地の第764戦闘航空連隊で、71年7月1日に受領、73年8月9日にアラート任務に就いてる エジプトに派遣されたのは71年3月のこと

2017-01-26 15:41:01
深海さかな @dzurablk_kai

70年に中東戦争絡みでエジプトのナセル大頭領がソ連に支援を要請したことに加え、当時はミグ25開発も終わりに差し掛かりトラブルが相次いでいた上、69年に防空軍司令のカドムツェフ将軍がミグ25試乗中に墜落死してることもあり、派遣に際しては逆風に面したミグ開発陣の働き掛けがあったらしい

2017-01-26 15:46:02
深海さかな @dzurablk_kai

派遣チームは第63独立航空分遣隊と名付けられ、指揮官は第二次大戦での19機撃墜のエースにして機種転換訓練部隊の副司令のB.A.バエフスキー少将 パイロットの一人にはテストパイロットのV.ゴルディエンコ、技術チームには航空工業相次官のA.V.ミナーエフも参加し、並々ならぬ顔ぶれ

2017-01-26 15:50:49
深海さかな @dzurablk_kai

結果的にこの実地試験的にも政治的にも意義深い派遣は大成功 ・ミグ25はそれまで3分に抑えられていたアフターバーナーの使用時間を40分にまで伸ばせ ・イスラエルの対空ミサイルは高度二万メートルに全く届かず ・燃料とミサイルを減らしたF4も追いすがることができなかった という

2017-01-26 15:54:48
深海さかな @dzurablk_kai

困ったイスラエルはミグ25の離着陸時を狙おうとしたものの、離陸時はエジプトのミグ21が警護に上がり着陸時もエスコート、飛行場周辺にはミサイルを対空機関砲を設置したためイスラエル機の方が返り討ちに遭ったという

2017-01-26 15:56:48
深海さかな @dzurablk_kai

結果的にこの一年の実地検証でミグ25は一機も撃墜されず、作戦は大成功だった 笑える話としては、当時はミグ25の最大速力はマッハ2.83に制限していたものの、パイロットが飛ばしまくってマッハ3を出したことが後にフライトレコーダーでばれ、上官に大目玉を食らったりしたこともw

2017-01-26 15:59:14

ミグ25の型式について

深海さかな @dzurablk_kai

ミグ25の型番一覧 まずは戦闘機仕様のP型から PD型とPDS型は76年のベレンコ中尉亡命事件以降の改修型で、レーダーをツポレフ128ベースのスメルチから、ミグ23ベースのサプフィールに変更したことでルックダウン能力を得てる ちなみにDというのは「改造」の頭文字から pic.twitter.com/aXZYO0cFkr

2017-01-28 12:36:09
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深海さかな @dzurablk_kai

ミグ25が輸出されたのもベレンコ中尉亡命の影響で、機密が漏洩したためにソ連防空軍機にしては異例の処置だとか こちらはレーダーがスメルチのままなので、ルックダウン能力は無いが、赤外線探査装置(IRST)はあり 輸出はアルジェリア、イラク、シリア、リビアなどに為されている

2017-01-28 12:42:59
深海さかな @dzurablk_kai

ソ連崩壊後はウクライナ、ベラルーシ、アゼルバイジャンがミグ25を受領したものの、今も運用しているのはアゼルバイジャンのみで、他の二国は2005年頃に退役したと見られてるらしい

2017-01-28 12:44:11
深海さかな @dzurablk_kai

ミグ25P型系列のレーダー(スメルチ・サプフィール)とIRST(TP26Sh)の性能 IRSTはミグ25の改修型(PD・PDS型)と輸出型に搭載された装備で、レーダー波を探知されない利点があった 面白いのはスメルチで、性能は一緒ながら元のツポレフより探知範囲が狭められてる点 pic.twitter.com/yJswBTLenw

2017-01-28 12:48:14
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