【完結】図書館大戦争(仮)

思いついたはいいけど書いている時間がないのでプロットだけ垂れ流すことにした文アルオールキャラ全員強制潜書大乱闘なんちゃら的なやつ 2017/09/10 完結しました 閲覧ありがとうございます
79
前へ 1 ・・ 42 43 45 次へ
シロ@〆最新節済 @siro_xx

春夫も抵抗を続けていた。攻撃を急所に当てて偽物を絵の前から離し、達治が撃つ隙を作ってやればいい。だが敵がそれを許すはずもなかった。『おお、薔薇、汝病めり!』武器を握る手に力を籠めれば籠めるほど、幻聴は烈しく頭に響いた。言葉が彼を追いかける。動作を、呼吸を、幻聴が追ってくる。

2017-09-03 21:21:50
シロ@〆最新節済 @siro_xx

犬の声……鶏の声……女の声……彼の正面を蛾が飛んでいる……蛾が彼の肩に止まる……振り払いたいが武器から手を離すことができない……蛾は彼の視界を妨げるように飛ぶ……時計の音……床を流れる墨の音……彼の気は何度も散りかけた。不快感が纏わりついた。小説の主人公の彼になったようであった。

2017-09-03 21:27:06
シロ@〆最新節済 @siro_xx

この後に訪れる幻覚と幻聴を春夫は記憶から辿る。不眠を患い、悪化していく一方の病は、汽車の音だったりオルガンの音だったりを青年の耳へと押し込んだ。ミニチュアの街を見せ、青年を巨人にしたり、小人にしたりした。恐らくそこまで幻覚が進むと戦闘も危うくなる。春夫は決着をつけるために動いた。

2017-09-03 21:35:09
シロ@〆最新節済 @siro_xx

偽物の刃が振り上げられる。春夫はそれを防御せず、上体を捻って自身の真後ろにある絵に武器を突き立てた。「な……」春夫の右肩に刃が食い込む。だがその刃は先端から墨となって零れ落ちていく……流れる血が春夫の衣服を赤く染める……跳ねた血飛沫が絵の中の虫食い薔薇を鮮やかに咲かせる……。

2017-09-03 21:46:28
シロ@〆最新節済 @siro_xx

偽物はその姿を朧にする……幻覚のように薄れ、消えていく……。「佐藤さん!」ふらつく身体を達治が支えた。「無茶しすぎッス!」「悪い。あれ以上長引くと危険だったんだ」「どういう意味ッスか?」「……いや、忘れてくれ」春夫は頭を振って言った。「戻ろう。墨の門弟が消えたか確認しないとな」

2017-09-03 21:50:12

シロ@〆最新節済 @siro_xx

バンッ!場にいた全員の注意がその銃声に向いた。「次から次へと……!」偽物は忌々しそうに銃声の主を睨んだ。「邪魔しちまったか?でもなあ、三対一ってのは卑怯だろう」銃声の主――子規は銃口を偽物に向けながら言った。重治はハッと気づいて右手側の敵に体当たりし、包囲を強引に破った。

2017-09-10 12:33:03
シロ@〆最新節済 @siro_xx

直後、もう一人の見慣れた顔が現れて左手側にいた敵を引き受ける。「加勢に来ましたよ。若者に任せていつまでも休んでいるわけにはいきませんからね」「夏目さん……すみません、助かります」「いえいえ、こういうときはお互い様です……よ!」たちまち場は三対三の乱戦の場と化した。

2017-09-10 12:39:14
シロ@〆最新節済 @siro_xx

床の上で傷口を押さえながら、龍之介はその光景を見ていた。「……先生……?」「おや、そこにいるのはもしや龍之介君ですか。何十年ぶりかの再会だというのに、……っと、戦いながらだと、ゆっくり、話もできませんね……!」「先生、危険です、その敵は特に強いんです!僕が……、……ウッ!!」

2017-09-10 12:46:42
シロ@〆最新節済 @siro_xx

「君こそ怪我をしているのなら無理をしてはいけませんよ」「でも……っ」「大丈夫だ!こう見えて俺達は結構丈夫だぞ!」子規が龍之介を安心させようと叫んだ。龍之介は納得していない顔をしていたが、かといって怪我をした身ではどうすることもできず、結局は師らの無事を祈り始めた。

2017-09-10 12:55:51
シロ@〆最新節済 @siro_xx

「どけ!僕はおまえの相手をしている暇はないんだ!」「そうつれないこと言うなよな」子規の銃が偽物の鎖骨に命中した。苦悶の表情を浮かべながらも、偽物は止まらない。「ならおまえから殺してやる!」「飛び道具相手に突進なんて、無茶をするなあ」子規は苦笑した。「どこかの誰かさんみたいだ」

2017-09-10 13:08:47
シロ@〆最新節済 @siro_xx

子規は更に撃った。回避というものをおおよそ行う気がない偽物の腹部を、それは容易に貫いた。「く、……あ……ッ」「……おいおい!」それでも偽物は止まらない。止まろうとしない。刃の先が、子規の喉を狙って……。「おうわっ!?」振り抜かれる直前、子規は横からの体当たりで倒れた。漱石である。

2017-09-10 13:14:38
シロ@〆最新節済 @siro_xx

「あっ……ぶないな!もうちょっとやり方があっただろ!?」「緊急回避に手段なんて選んでいられないよ」「って、馬鹿、後ろっ!」子規は叫んだ。先程まで漱石が相手をしていた墨の敵が、二人の身体を突き刺そうとしていた。転がったままの二人は回避が間に合わない。「正岡……!」

2017-09-10 13:22:38
シロ@〆最新節済 @siro_xx

漱石が子規を庇うためにその身に覆い被さった、その直後。ばしゃん!と大きな水音を立てて墨の文士が弾け飛んだ。「えっ……?」別の文士の返り墨を全身に浴びた重治も何が起きたのかわからず呆然と呟いた。「……そんな」その声で全員我に返った。偽物の重治だけは弾け飛んでいない。

2017-09-10 13:30:28
シロ@〆最新節済 @siro_xx

「……佐藤さんが、負けた……?」偽物が独り言のように呟いた。「……なんだかよくわからんが」「形勢逆転、というところですかね」「……ひょっとして、残っている敵はあと君だけなのかい?」重治が訊ねた。「……そういうことになったみたいだね」偽物は認めた。そして天を仰ぎ、息を吐いた。

2017-09-10 13:41:28
シロ@〆最新節済 @siro_xx

だが、偽物は刃を手放さなかった。「…………それでも、物語は僕に戦えと言っている」「……まだ続けるのかい」「僕が自害して幕を閉じる?ああ、そういう結末もあるだろうね。でもそれはできないんだ。僕達は偽物と言っても、解釈の方向に悪意があるだけで、本物と根本的に異なる存在にはなれない」

2017-09-10 13:47:35
シロ@〆最新節済 @siro_xx

偽物は続けた。「どんなに不利でも、『僕』は自らの命を諦めることはしなかった。それは『僕』の逃れられない運命で、事実だ。僕にその選択はない。そしてこの僕の性質上、投降して一人生き延びるなんてことは絶対にできない。僕は戦う。死ぬまで、いや、死んでも、僕は戦い続ける……!」

2017-09-10 13:52:42
シロ@〆最新節済 @siro_xx

「……ならば君が戦えなくなるまで君を倒し続ければいいんだね?」重治も偽物に刃を向けた。傷口が開いて背中に激痛が走ったが、それは気力で無視した。「いくよ。これが本当に最後の戦いだ」「……望むところだよ」偽物が言った。「これが最後だ。どんな手を使ってでも僕は――……」

2017-09-10 14:01:15
シロ@〆最新節済 @siro_xx

偽物は刃の切っ先を天に向けた。「『役に立たぬものを持つていることは役に立たぬ』」「……ッ、まさか」「『それらことごとくをおれは火中した』!」その刃の切っ先が燃えた。無数の『炎』という文字が刃全体を覆い尽くす。それを振るうと、床の墨の上に『炎』という文字が散らばった。

2017-09-10 14:11:10
シロ@〆最新節済 @siro_xx

「これは一体……?」「夏目さん!あの文字を切ってください!僕の偽物は……、それでこの図書館、いえ、この本そのものを焼き尽くそうとしています!」「……!」漱石は慌てて散らばった文字を切りに動いた。子規もそれに続く。「『みな残るところなく燃えつくした』……」「……止めろ、っ!」

2017-09-10 14:16:54
シロ@〆最新節済 @siro_xx

重治の攻撃を偽物は炎を纏った刃で受け止めた。「どうして、……っ、そんなことをしたら君自身も……!」「『おなじ泣きごとを繰りかえし巻きかえし並べようとするもの』」「答えろっ!」「……理由なんてないよ。僕が戦うことに、僕がここに存在することに、理由は与えられていない」

2017-09-10 14:26:42
シロ@〆最新節済 @siro_xx

「理由がないのにどうして戦えるんだ」「呼吸をするのに理由が必要かい?……そういう話だよ、わからないかな」刃と刃がぶつかるたびに『炎』という文字が二人の足元に散らばっていく。重治はなるべくそれを足で踏んで消しつつ立ち回るが、このままでは自分達が火に囲まれるのは時間の問題だった。

2017-09-10 14:37:30
シロ@〆最新節済 @siro_xx

(何か……突破口を)強さは鏡写しのように互角。子規か漱石の援護を望むのが最善であろうが、二人の消火作業にはもう少しかかるだろう。そしてそれが終わる前に偽物は再び炎を撒き散らすはずだ。(とにかくこの刃をなんとかしないと……!火を消す……水……水になるもの、何か……!)重治は考える。

2017-09-10 14:47:37
シロ@〆最新節済 @siro_xx

「『たいまつは田のくろでぼうぼうと燃えていた』」偽物はまた新たな詩を諳んじた。「……」その詩には覚えがある。先の詩も。重治自身の詩だ。(この偽物は、詩の内容を具現化している?一体どうやってそんなことを……)「正岡!そちらの本棚に火が!」「おう!『いくさかな我もいでたつ花に剣』!」

2017-09-10 14:57:57
シロ@〆最新節済 @siro_xx

その瞬間、重治は閃いた。「――――そうか」撃ち抜かれた炎の文字を視界に捉えながら呟く。そうだ。自分達も――重治自身も――普段の潜書の際に自身の書いた言葉を声にしながら攻撃しているではないか。誰にそうしろと教えられたわけでもないのに、魔法使いの呪文のように、口にしているではないか。

2017-09-10 15:08:22
前へ 1 ・・ 42 43 45 次へ