ツイッター小説 お気に入りセレクト 2011/03/03
「教授の遺体は遺言に従って量子テレポート葬に付されることになった。EPRスキャナによって読み取りと同時に分解されてゆく肉体。 エンタングルメントされた先にはしかし情報は送られず、状態の重ね合わせは散逸する。教授はエントロピーの混沌に溶けて消えた」 #twnovel
2011-03-02 22:06:50「雨の日はなんとなくユーウツ」って言う人が多いけれど、そんなことはないわ。お花だって、ミミズだってうれしそうじゃない。いつもは満員のバスだって、ゆったり乗れる。憧れの運転手さんと、二人きり。雨音のBGMがあるから、会話はいらない。そして、私は彼に魔法をかけるの。 #twnovel
2011-03-02 22:49:58#twnovel 安楽死の薬を誰にでも渡す医師は、死神と呼ばれた。だが生きる希望を失った人には神だった。ある日彼は逮捕された。しかしすぐに釈放された。彼が与えていたのはキャンディだった。プラシーボ効果で人は死んでいたのだ。そのことが公になると人々は彼の薬では死ねなくなった。
2011-03-02 23:02:21#twnovel 「忘れないで」そう言うと、病床の妻は髪を抜いて私の薬指に結び、それきり息をしなくなった。葬儀が済む頃には結わえていた髪も無くなっていた。あれから五年、再婚することになり、彼女の墓前で手を合わせた。ふと手を広げると一本の白い髪が落ちる。人の想いも年を経るのだろう。
2011-03-02 23:09:51#twnovel 過去にタイムスリップし、若かりし頃の母と出逢った。意外な美貌に、恋に落ちる俺。煌めくような二人の日々が過ぎるが、このままでは未来が変わってしまう。結局彼女と別れ、未来に帰ることに。別れ際、彼女は言う。「妊娠したの。産まれたらあなたの名を与えるわ」衝撃の事実発覚。
2011-03-02 23:15:21#twnovel 川上から流れてくる銀の腕は、村人の網にかかり、川下のスーパーでパック詰めされて売られる。夕日で空が焼けただれると、薄暗い人々がぞろぞろとやってきて、自分の腕を探し求める。その時間には処分価格になっていて、半額シールの貼られた腕を愛おしそうにくわえてレジに並ぶ。
2011-03-02 23:53:46久々に見るあの子はやっぱり可愛い。「どこ見てるの?」うるさい。僕は雛飾りの二段目から目が離せない。「この子が気になるの?」ゆりは僕を抱き上げてあの子に近づける。ち、ちかいよ、僕は恥ずかしくて顔を背ける。「やぁねぇ。猫のくせに照れちゃって」うるさいうるさいうるさい #twnovel
2011-03-03 00:01:46電子レンジを開けると、昨夜温めたブラックコーヒーが冷めきって忘れられていた。そんなコーヒーをみて、ふと思い出した恋があり、思い出せない熱もあったけど、すべて温め直して飲むことにした。きっと昨日よりも苦いんだろうけど、今度は忘れないように気を付けようと思う。 #twnovel
2011-03-03 00:57:05#twnovel ああ、そうそう。私にもそんな経験がある。ブスで根性悪の私を好きになる人がいる筈が無い。もしいたとしてもそれは何か魂胆があるに違いない。そう思ってしまうのよ。ねえあんた、あんた私を好きだと言ったわね。嘘でしょ。何か魂胆があるでしょ。白状せえ、てめえええ。
2011-03-03 04:35:48雛飾りを出しておいたら、いつのまにか女雛が無くなっていた。近所の猫にでも持っていかれたのだろう。代わりに適当な人形でも置くつもりだったが、今朝、女雛が戻っていた。そしてなぜか随身の一人がぼろぼろになっている。身を賭して姫を救い出したとでもいうような風情だった。 #twnovel
2011-03-03 07:02:44「うちら早よなおしたら嫁に行き遅れるんやて」「誰がそんなん言い出したん。迷惑な」「で、結局出さなんだら意味あらへん」三人官女の愚痴で箱の中でも季節を知る。あたたかな気温。梅の香り。今年も私はここから出られないまま。でも旦那様と従者たちが隣にいるからさみしくない。 #twnovel
2011-03-03 08:41:37#twnovel 気づくと、僕の口の中でバイキンたちがラブ・ストーリーを展開していた。いま、三角関係の頂点に立ったバイキンが、他の二人から責められている場面だ。けれどごめんね。今から君たちは僕の歯磨きというデウス・エクス・マキナによって、一切合切洗い流されてしまうから。
2011-03-03 08:45:30明け方のゴミ捨て場。そこに古いおもちゃが積み上げられている。時計が進む頃、誰ともなく口を開いた。「黙ってるのも疲れるもの」「でもこれで誰にも構われない」「さあ行こう」行こう行こうとおもちゃたちは弾むように動き出す。青煙の立つ明け方、おもちゃ達の薄い影が伸びた。 #twnovel
2011-03-03 10:20:2924時間営業の古本屋。午前二時に本の入れ替えが行われ、珍しい本がたくさん入ってくる。キミはそこの魔力に捕らわれ、気づいたら30年間をその古本屋の中で過ごしてしまっていた…。店主はキミに言う。「ムダな一生になってしまったな」キミは答える。「でも、幸せでしたよ」 #twnovel
2011-03-03 14:36:04#twnovel 「どうしてうちにはお雛様がないの?」病院からの帰り、幼い息子に訊かれた。「うちに女の子はいないでしょ?」「だってママ女の子じゃん」盲点だった。スーパーで雛あられを買い家路に就く。夫が帰ったら報告しなきゃ。うちも来年は雛人形を飾るかもね。そっとお腹に手をあてた。
2011-03-03 15:25:27#twnovel 小人コンピュータを手に入れた。例えば「1足す1は」と紙に書いて入れると、箱の中の小人達が右往左往して答を出してくれるのだった。悪戯に連続体仮説に係わる質問をしてみた。小人達は顔を見合わせると広場に炎をつくり、ホーホーと叫びつつ踊りだした。神様に聞いているらしい。
2011-03-03 20:24:52#twnovel 最近パパがパパラッチみたいな人達に追われてる。パパが実はヅラだってことがバレちゃったのかな。何年か前パパがハゲてきたって気づいたママはそのままでいいじゃないって言ったのにパパはこのままじゃダメだって言ってヅラを作ったんだ。今日もパパはパパラッチに追われてる。
2011-03-03 22:51:24#twnovel 皆様、右手をご覧ください。ただいま夜が生まれました。<オオー!>左手をご覧ください。朝が生まれました。<オオー!>大地が生まれました。<オオー!>海が生まれました。<オオー!>最初の生物が生まれました。<オオー!><オオー!><オオー!>歓声と祝福の声が響く。
2011-03-03 23:11:50#twnovel 恋愛小説を書いてみた。第一章はもちろん二人の出会い。第二章では交際が始まり順調に進むかと思わせて、第三章で破局。お互いに忘れられないまま違う恋を体験し、最終章でめでたく結ばれる。そこまで書き終えて妻と目が合った。私は目を伏せてさらにもう一章、二章と書き進めた。
2011-03-03 23:19:25