「フォビドゥンフォレスト3話「蝶舞の町内」 #11「電子娘②」

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まとめを更新しました。「「フォビドゥンフォレスト3話「蝶舞の町内」 #10「電子娘」」 togetter.com/li/1076904

2017-02-02 00:25:06
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「フォビドゥンフォレスト3話「蝶舞の町内」 #11「電子娘②」

2017-02-02 23:46:56
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「ダメです!目標A、森を目指しません!軌道自体にも今のところ変化なし!」 「目標Bも現れません!」 麻衣と駆が報告する。結界開放から1分強が経過したが、姑獲蝶の反応は上空を通過してしまった。愛衣の予想が当たってしまった形だ。片桐達は待ち伏せ地点の里見が丘に後2分半で着く。 1

2017-02-02 23:58:31
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「中央の部隊は、事前の通達通りに待ち伏せの失敗と同時に半数を残して里見が丘に向かっていますが、恐らく、片桐くん達に2分強遅れて48分頃の到着になると思われます」 愛衣の忠告はあったが、中央部隊を迂闊に動かせばそれこそ敵に気づかれて作戦が失敗する恐れがあったのだ。 2

2017-02-03 00:13:27
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彼等が使う予定だったクッション材は、森の低階層に常備してあるもので、本来は妖怪大量発生時に、他の資材と組み合わせて即席の防壁を作る為のもので、大きい。目立たせず急いで動かすのは不可能に近かった。どの道、片桐が足止めに成功すればトラックでの里見が丘への運搬が間に合うと思われた。 3

2017-02-03 00:20:34
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「あっ、でも東から運んで貰ってる高所作業車は間に合いそうですよ…です!」 これはトラックの荷台部が高さ15mまで延びるもので、高所自体が少ない風科には一台しかない。滅多に使わない為、ガレージの奥に仕舞っていたので本来の作戦には僅かに間に合わなかったが、それが功を奏した。 4

2017-02-03 00:27:26
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「では、里見が丘の3番出口前に片桐くんの到着に合わせて停車させて下さい。可能なら到着前に台車は延ばしきって構いません」 紹子が運転手に連絡する。 「一分後に里見トンネルを抜け次第、延ばし始めるそうです。そう早く延ばせないので片桐くんが来る前に何処までいけるかかは微妙ですが」 5

2017-02-03 00:32:56
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「少しでも伸びてりゃ十分だ。あとは何とかする」 「今から40秒ほど後に途中で武器を載せた貨車が並走しますので使ってください。粘着弾、ビーコン、発煙弾を撃ち出す銃が3種類です。少し重いでしょうから使った端から投棄して構いません」 「分かったぜ」 6

2017-02-03 00:43:04
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副司令が作戦概要を説明する。一分半後の4:45に里見が丘の3番出口から飛び出し作業車と片桐のブレードで高さ50メートルまで跳び上がる。1分前後で姑攫蝶がやってくるので、足止めする。更に1、2分あれば地上に援軍が到着するので、彼らと連携して蝶から乃愛と子供達計四人を取り返す。 7

2017-02-03 00:46:39
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『それで乃愛達の無事は確認できたのか?』 片桐が問う。結界の穴に近づかなかったにしろ、地上に数十の隊員がいるその上空を通ったのならば、蝶の姿を確認するくらいは出来た筈だ。そう考えたのだ。 「いえ…この20分間、霊波反応だけで、誰も姿は見ていないのよ」 『…なんだと?』 8

2017-02-03 01:02:06
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紹子が片桐に説明を行っている間、司令室には僅かに休息の時が出来た。水分を摂ったり、体を延ばすなどしている。2分ほどで、いよいよ救出と討伐の本番であるから最後の機会である。この中で一番若く勤続期間も短いみちるは珈琲を口にしてから、先程から気になっていたことを尋ねた。愛衣の事だ。 9

2017-02-04 00:43:10
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「あの…非常時で副司令達も受け入れてたので後回しにしてましたけど…」 「ああ、彼女のことだろ…」 駆は重々しく答えながら、片桐の通信状況を確認する。今は紹子以外の通信は聞こえていない。 「龍宮愛衣…彼女はあの龍宮黒乃の姉ですよ」 副司令が目を伏せて休めたまま言葉を継ぐ。 10

2017-02-04 00:47:54
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「黒乃…?」 「あの時は、まだ貴女が入る前のことでしたね。万理くんを連れていったウォーロックと言えばお分かりでしょうか」 「えっ…」 龍宮黒乃は一言で言えば、殺人や破壊の罪で国際指名手配されている魔術師である。とはいえ、僚勇会や風科が、直接黒乃に何かをされたわけではない。 11

2017-02-04 00:52:53
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ただし関係者であった万理という男が彼女の仲間になった。つまり身内から犯罪者が出たことで、上からの援助を受けにくくなってしまった。話題にすることもタブーに近かったが為に、黒乃の名ではピンと来なかったみちるも「身内」の名が出れば流石に思い当たった。 12

2017-02-04 01:03:42
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「じゃあ何故愛衣…さん?と春夏くんがあんなに仲が良さそうなんですか?」 「そこは私にはなんとも…交流があることさえ知りませんでしたから」 副司令は軽く首を捻る。 「あ、それは俺もです」 駆はこの中ではプライベートでも片桐と付き合いの深い方だが、彼も知らないのだという。 13

2017-02-04 01:08:22
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「あと…何なんでしょうか。凄いハッキング能力を見せたり、こう…パソコンのモニターから出入り?している様に…ひぃゃあっ!?」 「それは私から説明してやろう」 みちるが奇声と共に面食らったのも無理はない。眼前のモニターから当の愛衣がにょろりと出てきたのだから。 14

2017-02-04 01:13:11
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「にょろんぬ」 ホラー映画の如く画面から這い出し、ヌタウナギめいた動きでみちるの背後に回り込み耳元で囁く。 「お前はなかなか良い奴だ。ネットで炎上させたい奴がいたら私に言え。1人100円で請け負うぞ」 「何ワンコイン価格で人の人生台無しにさせようとしてるんですかっ…!?」 15

2017-02-04 01:18:07
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みちるは後ろを振り向いて愛衣の顔を見た。視界の端に違和感を感じて、もう一度前を向く。片桐達の中継映像の中に愛衣がいた。後ろにもまだいる。1人の人間が同時に2ヶ所にいる!? 「お前は今、『何でだ?何でだ?二人いる?』と思ってあるようだが、なんのこたぁない。多重ログインだ」 16

2017-02-04 01:23:51
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「…ろぐいん?」 「安心しろ。別にこの世界がバーチャルだとかいうクラインな壺案件じゃあない。私は電脳世界に存在の比重を置き、向こうからこっちにログインしている感覚なのだ。我々サイバーチルドレンはそういう存在だ」 「うへああっ!?」 四体の愛衣がみちるの周囲を取り巻く。 17

2017-02-04 01:33:47
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「こういう能力を活かして、魔術師によるネット犯罪を防いだり検閲をするのが我々サイチルの使命だったのだが…」 手の中に黒髪の少女の映像を具現する。 「あのアホのせいで第2世代まで研究者ごと壊滅したんだよチクショウ!」 映像を床に叩きつけて赤いシミに変える。 18

2017-02-04 01:47:17
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「…スマン。取り乱した…そろそろ時間か」 「うぉっ!?」 みちるの周りから一人もいなくなった愛衣は駆のモニターの上にいた。本来ならモニターが破損ないし変形する筈だが特に異常はない。かといって愛衣の体はホログラフの様にも見えない。見た目に反して体重が極端に低いかのようだ。 19

2017-02-04 01:58:58
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モニターの向こうではブルームに並走してきた小型の貨車から片桐が武器を受取り、瑠梨に手伝わせて装備しているところだ。向こうの愛衣は手伝わずに貨車に乗っている。「あの…例えば龍宮さんの力で桐くんを子供達の所に飛ばすとかは出来ませんか?」 駆はふと思いついて尋ねた。 20

2017-02-04 02:12:50
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「今ダーリンにも聞かれているが、それはちょっと無理だ。大体私は基本、画面からしか出られんし、出せん。子供のスマホの向きによっては激突するぞ」 「ダメですか…」 「そもそも電波が悪いから下手するとダーリンが真っ二つになるぞ。その場合上と下のどっちを私が貰おうか?…いや両方か?」21

2017-02-04 02:17:04
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『じゃあ…恥を忍んで頼むけどよ…』 ちょうどモニターの向こうでも片桐が続きを尋ねていた。 「こっちでも言っておこうか。『私が手伝えるのはここまでだぞ。物理的に手伝うと逆に迷惑がかかる…犯罪者の姉らしいからな、私は』」 2人の愛衣が同時に両手を投げやりに開いて溜め息を吐く。 22

2017-02-04 02:24:07