「フォビドゥンフォレスト３話「蝶舞の町内」 #9「地下道」

フォビドゥンフォレスト＠カクヨム投稿中 @fbd_forest

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（前回までのあらすじ：俺は片桐。田舎町の風科に住む高１だ。俺は僚勇会って組織で仲間と共に北の森に出る妖怪共を倒す仕事をしている。…妖怪・姑獲蝶が乃愛とガキどもを攫いやがった！頭の良いガキ、怜人から手掛かりを得た俺は瑠梨を連れて、例は反応のあった場所へと急いだ！）

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屋敷の垣根を跳び越えて走り、近所の僚勇会員の家の地下ガレージへと、坂状のスロープを下って入る。外から見て陰になる位置にある扉。横の認証機にスマホを当てると扉は開き、俺達は飛び込んだ。更に少し階段を降ると、縦横１０ｍもない地下道に着く。オレンジの常夜灯が俺達に反応して点いた。 1

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この地下道は風科の地下全体に縦横無尽に張り巡らせれてて、その殆どに２・３本のレールが通ってる。この上を専用の乗り物や貨車が高速で走る訳だ。俺達は線路の端に留めてあるレールブルームに乗る。バイクの下部をタイヤごと割いてレールを咥え込ませた形状で、二人乗りも可能だ。 2

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俺が前に乗り、瑠梨は後ろ。俺の背の半分辺りの高さに後部座席の奴が掴まる所がある。体を頑丈なベルトで手早く固定する。 「行くぞ？」 「うん」 『いつでもどうぞ！』 オペレーターの麻衣さんの声。さっきから俺達の直接対応をしてくれてる人だ。地下の移動は殆ど本部任せになる。 3

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鉄道路線みてぇにルートが固定されてりゃ手動メインでいけるが、この地下道は殆ど何処へでも行ける代わりにルートが複雑化で、本部で集中制御してくれねぇと間違いなく事故る。今は俺達だけだがどの道ガイドがねぇと迷う。起動ボタンを押し、ブルームを動かす。一気に時速ニ百キロまで加速する…！ 4

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「フォビドゥンフォレスト３話「蝶舞の町内」 #9「地下道」

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俺達が近づくごとに前方の照明が次々に点き、後ろのが消えていく。ルートは自動だから、俺がすることは加減速だけだ。瑠梨に注意を払いながらも、カーブでも百五十を下回らない程度に飛ばす。 「…じゃあっ！…森の中に他の蝶は見当たらねぇんだな！？」 『ええ、雛だけよ。処す？処す？』 5

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森の中の黒音さん達が奴の巣を見つけたそうだ。 『いえ、まだ早いでしょう。姑獲蝶はそこへ戻ろうとする筈。結界の一部を開けて、蝶をそこへ誘導する選択肢も残しておきましょう』 衛守の爺さんが言う。篠森のおっさんの家の執事長で僚勇会の副司令官だ。 6

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『そうね。取り敢えず爆弾も有るだけ仕掛けたし、距離を取って隠れながら何時でも焼けるようにしているわ…もし外のと別個体…つがいが来たら？』 黒音さんは副隊長の筈だが、隊長を差し置いて話を進めていく。姑獲蝶は夫婦で子育てをする虫妖怪だ。もう一匹何処かにいると思ったほうが良い。 7

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今回、敵の姿はまだ確認されてねぇから乃愛達を攫ったのをＡ（アルファ）、いる筈の番をＢ（ベータ）と仮称している。この間も俺達のブルームは進む。奴は最初に反応を捉えた場所から移動し続けているようなんで、こっちも動き続けてる。奴の反応は途切れ途切れにしか追えてねぇ。 8

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行動パターンを分析して先回りを狙っているが、上手く行かねぇらしい。既に攫われてから１０分近くは経ってる。親の蝶は人は食わねぇ。幼虫に食わすだけだ。嘴が２つ有る変異体は別だが、怜人が１つだと証言してくれてる。つっても上空を連れ回されてる乃愛達の体力が心配だ。落ちるかも知れねぇ。 9

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『ＧＰＳ…駄目です。端末を持ってる子の保護者に連絡が付きません。出張で関西に行っているようで、直接の接触もすぐには…くそっ！』 別のオペレーター…俺のクワガタ仲間の駆（かける）兄ちゃんが悪態をつく。やべぇ…折角教えて貰った手掛かりが！ 『中部支局には依頼を掛けていますが…』 10

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中部支局ってのは魔術師連合の日本の中部を束ねる所だ。電話番号から直接端末にアクセスして貰う依頼をしたってことだろう。 『時間が掛かりますか…』 『はい…急いでも２０分は掛かると、畜生…』 兄ちゃんが爺さんに無念げに伝える。まずいな…そんなに４人が保つか？ 11

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『そんな風に言ってはいけませんよ。個人情報ですからね…本来彼等の管轄ではありませんから…しかし…』 『町の残存部隊は現在、各所に散って何処に目標Ａが出現しても即応できるようにしています』 麻衣さんより少し貫禄がある声は戦術担当のオペレーター、紹子さんだ。 12

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『ですが問題は３つ。１つは敵の居場所の件。２つ目は救出方法です』 『救出…あっ！』 兄ちゃんが大声を出す。言われてみりゃ、奴を仕留めた所で、４人は空中だ。 『姑獲蝶は地面には降りないようですから、何とか低空飛行させるか、樹上に止まった所を倒したいですが、誘導が困難です』 13

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「やっぱり私が…」 瑠梨が呟く。 「よせ馬鹿！」 瑠梨の言葉に反射的に振り向いて怒鳴っちまった。思わず減速仕掛けたところを再び加速させる。奴はまた移動しやがった。ビュンビュン飛びやがって…！乃愛達になんかあったら地獄でもう一度殺してやるぞ！ 14

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『それは待って下さい…瑠梨さんは私が指示するまでは片桐くんの指示に従ってください』 副司令も瑠梨を制止してくれた。 「そうだ。俺達がまずやらねぇでどうする！？」 「…分かりました…」 瑠梨はひとまず引き下がった。 15

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紹子さんが続ける。 『そして３つ目ですが、蝶の町への侵入経路です』 『それは後で良くないですか？』 若い女オペレーター…確か半年近く前に入ったみちるさんだったか？…が聞いた。俺も一瞬そう思ったが、よく考えるとそうでもねぇ。 『いえ、先程副司令が仰った策を取る場合が問題です』 16

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説明を副司令が引き継いだ。 『ええ、結界をわざと開けて蝶を森の奥に誘導する。敵の習性を思えば一番安全確実に思えますが…』 『すぐにやらないのは瘴気のせいです…よね？』 『そうです。森の上空は瘴気は平均して薄いですが乱れも激しい。突発的に濃い瘴気を吸ってしまう恐れがあります』 17

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『それでも長引けばどの道、体力の低下で命を落としてしまいますから…蝶が何処かに止まるかしない限りは…４：４５を以てこの策を決行します』 今は３９分。後６分だ。このまま奴を捉えられねぇ限りはコレが最善だと俺も思う。 『問題は…奴が開けた穴を通るか、です』 18

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結界を開ける予定の場所には、乃愛たちを受け止めるクッション材や、ツクヨミ隊の狙撃手達が既に待機しているそうだ。奴がここを通ろうと近づけば、森に入る前に助けられる可能性は高い。 『ですが、我々の知らない結界の抜け穴が有るとすれば…蝶はそちらを通るかも知れません』 19

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『ありえない話ではないです。何せ、月曜の事件のこともありますから』 紹子さんが補足する。 『そんなのが有るとして…なら何故奴はフラフラ飛び回ってるんですかね？そっから戻ればいいのに』 駆兄ちゃんが尋ねる。 『例えばですが、抜け穴が収縮を繰り返しているとしたらどうです？』 20

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『実際、過去にはそういう故障もあったようです。随分昔のことですが…』 爺さんがそう言うってことは相当昔らしい。俺も昔の記録は読んでるが、ここ2・30年は町にあんな大型のが出てきたことはねぇ筈だ。 『どちらにせよ、奴の接近に合わせて穴を開けば、そこを通るかも知れませんが…』 21

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『罠だと警戒されませんかね？』 みちるさんの懸念に俺が答えた。 「いや、大丈夫だと思うぜ。俺も姑獲蝶の実物はそんなに見た訳じゃねぇけど、あんま頭は良くねぇ筈だ。何よりとっとと巣に帰りてぇだろうからな」まぁそうはさせねぇけどな！ 『作戦開始まで後5分です』 麻衣さんが告げる。 22