「フォビドゥンフォレスト3話「蝶舞の町内」 #9「地下道」

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『携帯の電波の方はどうでしょうか?』 『ダメです。やっぱり町の電波が邪魔で…』 兄ちゃんが爺さんに答える。位置情報の取得が無理なら電波自体を拾えないかと試したらしいが、難しいよな…。 『町中を停電させる訳にもいきませんしね。目標Bが動きやすくなる上に、防衛力も落ちてしまう』 23

2017-01-31 00:40:34
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『目標Aの霊波は以前、断続的に上空のあちこちで観測されています。一度の観測が長くて、1・2秒程度で…まだシステムも移動の法則性が掴めていませんね…』 紹子さんの声は苦々しげだ。 『敵の位置が掴めない以上、不確実さは増しますが、やはり先に結界を開けるしかありませんか…』 24

2017-01-31 00:46:50
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『ああっ!!?』 駆兄ちゃんがいきなり叫んだ。 『どうしました?何か気付いたのですか…』 『あ、あの…間違ってるかも知れないんですけど…』 『構いません。言って下さい』 『その…今時折掴めている反応はBの方ってことはありませんか?子供を攫ったAのほうはとっくに何処かに…!』 25

2017-01-31 00:50:08
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「何だと!?」 「はる君!あり得るの?」 「いや、嘴一本の奴は人を食わねぇし…そもそも奴のヒナは森の中だ…でも…」 月曜の事件の真相も分かってねぇ今、何かの要素が蝶野郎を狂わせてねぇとも限らねぇじゃねぇか…! 『あ、いえ。それはないです』 俺の焦燥を麻衣さんが全否定した。 26

2017-01-31 00:55:26
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「え?」 『反応は微弱ですが、この十数分でキャッチした反応は全て、子供達が拐われた時ものと同じ個体、Aのものです。そもそもツガイの目標Bは存在の有無もまだ分かってませんから…』 『あ…あ、そうか…そうか…すみません』 兄ちゃんはすっかり消沈しちまった。 27

2017-01-31 00:59:34
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『脅かさないで下さいよ先輩…』 「本当だぜ…」 『すまん…』 『そういう発想は大事ですよ。次の機会に役立てて下さい』 『はい…』 『では作戦準備を進めましょう。片桐くん。現在地から引き返して作戦地点に合流して下さい』 「…分かった」 俺達は今風科の東端にいる。 28

2017-01-31 01:15:20
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切り返して飛ばせば3分と掛からずに作戦地点の森の中央入口に着く。森の久浦達や、学校の佐祐里先輩達も50分頃には到着の見込みらしい。 『主力以外は念の為、分散を続けます。片桐くんに空中で足止めをしてもらって、狙撃で羽を削り、落ちた所をクッション材で受け止める予定です』 29

2017-01-31 01:20:37
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乃愛達を落とす前提なのが不安だが、ガイアのやつが戻らねぇ限り、風科で空中戦が一応でも出来るのは俺くらいだ。俺達は、本来上空に出向く必要なんてねぇんだからこればっかりはしょうがねぇ。にしても奴が来なかった場合を考えると怖い。居場所を掴めてぇが、本当に何ともならねぇのか…? 30

2017-01-31 01:25:04
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『中央に朝が来なかった場合、及びBの捜索のために町の外からも増援が来てくれます。5時近くになりそうではありますが…片桐くん達は…』 町の外…増援…。 「はる君?どうしたの」 後部座席の瑠梨の声で軽く沈みかけた意識が戻る。 「そうだ!一つ手があった!」 31

2017-01-31 01:28:22
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『手とは?』 司令室で各所に指示を出していた爺さんが問いかけてくる。 「ああ。悪い。簡単に頼っちゃいけねぇと思って気づくのが遅れた。俺につてがある。位置情報を掴めるかも知れねぇ」 俺は少し減速して、片手でスマホで電話を掛けた。そして瑠梨に持たせて俺の耳に当てさせる。 32

2017-01-31 01:31:32
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「ただし、ちょっと僚勇会が上に文句を言われるかも知れねぇ。多分普通に犯罪だしな…」 『それは…』 『私が許可しよう』 「おっさん!?」 紹子さんを遮り、篠森のおっさんが通信に入ってきた。 『すまない。少し前から聞いていたよ。到着は5時を過ぎそうだ』 33

2017-01-31 01:34:09
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今日も昨日に引き続きどっかでお偉方と会ってきた所だろう。休めてんのか心配になるぜ。 『上は後でなんとでもする。必要なら千万単位の依頼料も用意しよう』 『いや金は要らんぞ。別のものが欲しい』 『…ん?』 通信に割って入ってきたのは、今正に俺が電話を掛けた相手だった。 34

2017-01-31 01:38:25
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「愛衣…お前な…」 「え…誰?女の子」 俺は無言で片手を出し瑠梨からスマホを受け取っていまう。もう手を塞ぐ必要もねぇ。ブルームのモニターから、中学生未満の背丈で妙に長い袖の白衣を着た、ピンクの長髪の女がにょろっと湧いて出てきた。 「え?」 モニターから出てきた。 35

2017-01-31 01:48:53
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愛衣は風防の上にぴょこんと立つと通信と生の声の両方で喋った。 『「私はサイバー・チルドレンの長女、龍宮愛衣(たつみや あい)。既に位置情報や隣県を含めた霊波・気象情報などは把握済みだ。後はお前たち僚勇会が受け入れるかどうかだ』」 「愛衣」 「なんだダーリン?」 「降りろ」 36

2017-01-31 01:53:16
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「酷いじゃないか!文字通り光速を超えてマッハのスピードでネットをサーフィンして飛んできたのに!彼女に向かってそんな言い方!」 アホ長い袖をぶんぶん振り回して、あることないこと抜かしやがるがそれどころじゃねぇ。 「彼女じゃねぇし、ホラ後ろ!しゃがめ!」 「へ?」 37

2017-01-31 01:55:13
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愛衣の後ろで通路の天井が低くなっていた。愛衣は振り向き途中の側頭部を時速120キロで思い切りぶつけてブルームからすっ飛んだ。 「しゃがめっつったのに…」 立ってさえなきゃぶつかる位置じゃなかったのによ…。愛衣は左側の道に叩きつけられ、何度も撥ねながら後方に消えていく。 38

2017-01-31 02:00:29
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「フォビドゥンフォレスト3話「蝶舞の町内」 #9「地下道」 終わり #10「電子娘」に続く

2017-01-31 02:01:23