Precious(後編)

横村楽器店シリーズ7
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りえぷぅ @riem124blue

439 次の日────── 村上「おまえ、何しとんねん!」 横山「はぁ?」 村上「“はぁ?”やないやろ!なんでここおんねん!」 横山「なんでって、自分の会社におって、何が悪いねん。」 村上「いやいやいやいや……今日、親父さんの手術やろがぃ!」

2017-01-11 00:21:36
りえぷぅ @riem124blue

440 横山「おー、そやなぁー。」 村上「“そやなぁー”やないやろ!早よ行けや!」 横山「えぇよ~、俺が行く必要なんかあらへんもん!」 あんなんが何かあるわけないもん。 村上「おまっ」 ☆☆「専務、うるさいです。」 村上「!うるさいて、おまえまで!」

2017-01-11 00:21:40
りえぷぅ @riem124blue

441 ☆☆「本人に行く気がないんだから、言っても無駄ですよ。長い付き合い、分かってるでしょ!今から電話するので、静かにして下さい。」 村上「はぁっ?!…………。」 お、黙った(笑) さすが☆☆やな……この先の夫婦生活が目に見えるようやな。 そのままデスクワークを続ける。

2017-01-11 00:21:45
りえぷぅ @riem124blue

442 もうそろそろ手術終わる頃やな……と思ったら、スマホがメールの受信を告げた。 見ると妹から。 “手術、無事終わったよ” ほらな、やっぱりや。 アイツはそう簡単にくたばらへん。 俺は返事もせずに、仕事に戻った。

2017-01-11 00:21:50
りえぷぅ @riem124blue

443 ──────── えらいもんで、あんな腹立つことあっても、無事終わったと知ってどこか安心してしまう俺。 それがまた腹立つねんけど。 丸山「先輩~いらっしゃ~い♪」 なんだか久しぶりに店に寄った。 マルはいつも通り、何も言わなくてもビール持って来た。

2017-01-11 00:21:55
りえぷぅ @riem124blue

444 あまり連絡してなかった彼女の顔もチラリと見えた。 さっきのマルの声で俺が来とることは分かってるはずやけど……さっぱりこっち見ん……。 えっと……ほんまに見らんな……あれ?なんや怒ってる……? 連絡少なかったから…怒ってるん……?

2017-01-11 00:22:00
りえぷぅ @riem124blue

445 お客さんが一段落したからか、俺の目の前通って、彼女が控え室へ入ってった。 トイレかな……? なんやでも絶対今の、俺の方わざと見らんようにして入ってったやん……。 傷つくわぁ…。 我慢ならんくて、彼女を追いかけた。 その扉を開けたら、彼女はすぐ傍におった。

2017-01-11 22:12:46
りえぷぅ @riem124blue

446 びっくりした顔して…みるみる顔が赤くなった。 XX「……せんぱぃ……どうしてここ……に……、」 横山「どうしてって……おまえが無視するからやんけ……傷つくやろ……。」 XX「ごっ、ごめんなさい!!そんな……つもりじゃ……。」 慌てた上に泣きそうになる彼女。

2017-01-11 22:12:51
りえぷぅ @riem124blue

447 横山「怒ってんのか思てんけど……その様子じゃ…ちがう……?」 XX「ち、ちがいます!!その……っ、」 思いっきし強く否定しつつ……また顔隠す……。 横山「やから……なんで顔見してくれへんの……。」 目の前立って、右肩に手を置いて、それから反対の手で顎を上へ。

2017-01-11 22:12:54
りえぷぅ @riem124blue

448 真っ赤な顔で、うっすらと涙の溜まった目元。 横山「なんで泣くねん……。」 XX「泣いてないもん……。……先輩が……今日来るなんて予想してなかった……。」 横山「なに?来たらあかんかった…?」 XX「だって……まだ忙しいと思ったし……。」

2017-01-11 22:12:58
りえぷぅ @riem124blue

449 もうすぐ零れ落ちる…。 XX「来るって分かってたら、もうちょっとキレイに…、」 え、何それ? 横山「何言うてるん?充分キレイやって……うん…///」 思わず言うて、自ら照れてしまう。 いや、でも、ほんまやし。 てか、そんなん気にしてたやなんて…普通に嬉しい。

2017-01-11 22:13:02
りえぷぅ @riem124blue

450 チュッとキスして抱きしめた。 遠慮がちに背中に手が回ってくる。 なんか……めちゃくちゃ愛おしいんですけど……。 ギュッと腕に力が入る……。 丸山「おっつかれー!!」 バンッと俺らの隣の扉が、勢いよく開く。 そのままの体勢で、ふたりして扉の方を見た。

2017-01-11 22:13:07
りえぷぅ @riem124blue

451 丸山「・・・・・。」 横山「・・・・・///」 XX「・・・・・///」 しばらくふたりを眺めたマルは、何も言わず静かに扉を閉めた。 ……やっば……。 さすがにここでこんなんは…まずかったよなぁ…。 横山「もう上がりやろ?準備し?マルには俺が話すから。」

2017-01-11 22:13:11
りえぷぅ @riem124blue

452 彼女は何も言わずに、少し心配そな顔して頷いた。 それを確認して控え室を出る。 田口「もしも~し?店長?丸山さぁん??」 客がいなくなった店内の真ん中、テーブル席に無表情で座るマル。 そして、そのマルに話しかける調理人の田口。 絶対聞こえとるはずやのに、マルは無反応。

2017-01-11 22:13:16
りえぷぅ @riem124blue

453 はぁ、とひとつ溜息ついて、そこに近付いた。 横山「田口、もぉ上がりなんやろ?」 田口「はい!そぉなんすけど……。」 横山「コレ、俺のせいやから、気にせんと帰ってえぇで。」 田口「えっ!……ほんとに大丈夫ですか……?」 横山「大丈夫や、早よ帰り。」

2017-01-12 22:31:48
りえぷぅ @riem124blue

454 田口「はい……じゃ、お先です!お疲れさまでした!」 軽く手を挙げて送り出す。 そして、テーブルに目を移す。 微動だにしない、ずっと無表情のマル。 その向かいに腰掛けた。 横山「マル……その……すまん…仕事場でこんなん、あかんかったよな…すまん…。」

2017-01-12 22:31:52
りえぷぅ @riem124blue

455 丸山「……まぁええんちゃいますかぁ……。」 あー……完全に拗ねとるな……。 横山「俺もほら、あーなんや、色々家のことでゴタゴタしてたやん?な?ほいでほら、つか、彼女にもあんま連絡できてへんかってさ?」 丸山「俺なんかはもっとどーでもえぇですもんね…。」

2017-01-12 22:32:02
りえぷぅ @riem124blue

456 横山「ちゃうやん!やから、こーして来た、」 丸山「俺なんかどーせついでですやん。」 いやいや、コイツは何に対して拗ねとんねん。 丸山「そもそもですよ?付き合うって時も報告あってよかったんやないすか?先輩はウチの常連さんやし、XXちゃんはウチの社員なんすからね?」

2017-01-12 22:32:08
りえぷぅ @riem124blue

457 ソレを、おまえが、言うかね? おまえやって嫁と付き合うのに、俺に許可とか報告なんかなかったやろ! ……ってゆーんは、今度にしよう……。 横山「…それは…すまん…。」 丸山「まぁ、いいんすけどね!」 その口調はとても“いい”と思ってるふうには聞こえない…。

2017-01-12 22:32:14
りえぷぅ @riem124blue

458 丸山「とにかく!このお店でヤラシイことは禁止です!」 “ヤラシイ”て…。 横山「はいはい…。」 丸山「はい、は1回!」 横山「はい!!」 もぉ…めんどいわぁ…。 そこへ準備を終えた彼女が。 XX「あの…お、お疲れさまです…。」 丸山「おぉ~お疲れっ!」

2017-01-12 22:32:19
りえぷぅ @riem124blue

459 何事も無かったかのように、笑顔で挨拶するマル。 丸山「疲れたやろぉ?早よ帰ってゆっくりしやぁ~♪今日は送ってくれるダーリンもおるしなぁ♡」 XX「えっ…?!///」 コイツ…ほんま…。 なんか色々言いたいことあるけど、今日はもー帰ろ…。 なんや疲れた…。

2017-01-12 22:32:26
りえぷぅ @riem124blue

460 横山「ほんなら帰ろか?マル、また来るわ。これで足りる?」 お金をテーブルに置いた。 丸山「もちろん足りる…ってか、多過ぎっす!」 慌てるマルを制して、彼女に目で店を出る合図を送った。 横山「そんならな~ごちそーさ~ん!」 出口まで見送るマルに手を上げた。

2017-01-13 19:52:51
りえぷぅ @riem124blue

461 少しだけ先を歩く俺んとこに小走りして並んだ彼女。 気付いて歩幅を合わせる。 XX「店長…知ってるんですね…。」 横山「ん?」 XX「わたしたちが…付き合ってること…。」 横山「あぁ…ごめん、言うてん。知られるん、嫌やった?ごめんなっ?」

2017-01-13 19:53:02
りえぷぅ @riem124blue

462 XX「いえ!…なんなら…自慢てゆーか…言いふらしたいくらいだし…///」 横山「へっ?!///」 うわ出た!反則! 何も言わず、俺の手に指を絡ませてくる…って、何?! こんな積極的やったっけ?!

2017-01-13 19:53:16
りえぷぅ @riem124blue

463 XX「ほんとは…ちょっとさびしかったんです…わたしから連絡していいか分からなかったし…。」 あかん…。 横山「なんでやねん、えぇに決まっとるやろ…。そんなん…遠慮すんな…。」 俺、なんだかんだ疲れが溜まって…。 XX「先輩…あの…今日…、」

2017-01-13 19:53:29
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