Precious(後編)

横村楽器店シリーズ7
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りえぷぅ @riem124blue

664 横山「クセやねんから、しゃあないやんけ。」 村上「…なんやねん、またなんや抱え込んどるんか。」 横山「…別に…。」 村上「おまえはホンっマ悩むん好きやなぁ。」 横山「アホか!誰が好きで悩むねん。」 村上「スピーチのことも少しは悩んでくれよ?」

2017-03-05 22:13:45
りえぷぅ @riem124blue

665 横山「…………っ!」 やっば…それ、すっかり忘れてた…。 村上「なんや、忘れとったんかいな…。」 横山「…っんなわけないやろ…アホ。」 村上「ま、ええけどな、即興上等やから!カッカッカッ!」 あかん…コイツ泣かすスピーチ考えて日頃の仕返しせな…。

2017-03-05 22:14:02
りえぷぅ @riem124blue

666 村上「よっしゃ!そろそろ終礼しよかぁ?亮、すばると一緒にシャッター閉めて来てー!」 卓上カレンダーに目をやる。 気付けばコイツらの結婚式今週末やん…。 やっば、ホンマ忘れてた…。 スーツとかも確認しとかななぁ…。 村上「ほい、じゃ、今日は以上!お疲れさまー!」

2017-03-05 22:14:19
りえぷぅ @riem124blue

667 鍵を閉めて、みんなの後ろ姿を眺めながら、ゆっくりと歩く。 この感じ好きやなぁ…。 俺の中では世界でいちばん平和な風景やと思うわぁ…。 「じゃ、社長、また明日ー!」 そんな声に手を上げて、俺はひとりで桃子の店を目指した。

2017-03-05 22:14:32
りえぷぅ @riem124blue

668 店の前、ひとりの女が手を振ってコッチを見とる。 こんなんするの、桃子ぐらいしか思い当たらんけど、髪の色は真っ黒で真っ直ぐやし、化粧も服もだいーぶ地味。 でも近付いてびっくりした。 横山「桃子っ?!」 桃子「えっへっへー♪びっくりした?」

2017-03-07 22:18:44
りえぷぅ @riem124blue

669 横山「おまっ…どうしてんっ?!」 桃子「黒髪なんか、久しぶりだよ~!どぉ?似合う??」 横山「お…おん…似合ってんちゃう?」 ぐりんぐりんしてた髪は、黒くて真っ直ぐになっとる。 まるで印象が変わるなぁ…。 桃子「あっ、惚れた?」 横山「アホか…!」

2017-03-07 22:18:48
りえぷぅ @riem124blue

670 いや、でも、もし彼女おらんかったら…ってのは考えてしまうくらい…かわえぇ…。 髪型や服装ひとつでこんなにも印象変わるんやなぁ…あ、化粧も変えとるか…。 いや…それにしても女ってコワイ…。 桃子「じゃっ、行こっか♪」

2017-03-07 22:18:53
りえぷぅ @riem124blue

671 横山「あのなぁ…俺は昨日の金払いに来ただけやで?それに店前に待ち伏せしての同伴なんか、聞いたことないわ!」 桃子「いやだな、何言ってんの社長。」 横山「はぁ?」 桃子「待ち伏せ同伴じゃなくて、待ち合わせデートだよ♡」 横山「やから、今日は飲まへんて、」

2017-03-07 22:18:57
りえぷぅ @riem124blue

672 桃子「もぉ!このお店には入りません!あたし、もう辞めたし!」 横山「へっ?!」 桃子「キャバ嬢、辞めたの!!」 横山「辞めた…?」 桃子「田舎に帰ることになったの。だから、今日は最後にデートして欲しいだけ!」 横山「…帰るんや…。」

2017-03-07 22:19:03
りえぷぅ @riem124blue

673 それで髪型とか服装変えたんか…。 桃子「そゆことで、横山社長の時間を勝手に買い取らせていただきました♡」 横山「買い取るってなんやね…あっ!おまえまさか、昨日の飲み代…!」 桃子「さっすが社長!ご名答♡さっ、行きましょ行きましょ♪」

2017-03-07 22:19:07
りえぷぅ @riem124blue

674 腕に絡みついてきて、その腕をグイグイと引っ張る。 横山「やっ、こら!ちゃんと俺払うし!やから離せ…、」 桃子「固いこと言わないで♡」 横山「これじゃ、待ち伏せ拉致やからな!俺彼女おるし!!」 桃子「だから、今夜だけだってー!てかもう明日にはいなくなるし!」

2017-03-07 22:19:14
りえぷぅ @riem124blue

675 横山「えっ…?」 帰るって、そんな急なん…。 桃子「最後の夜なの…。」 真っ直ぐ俺を見る。 横山「最後やったら余計…、」 桃子「社長といたいの。最後は社長…横山さんと一緒に過ごしたいと思ったの。彼女がいることも知ってるし、浮気なんかしない人なのもわかってる。」

2017-03-07 22:19:20
りえぷぅ @riem124blue

676 …それって…。 桃子「デートするだけだよ。セックスしようなんて言わないから。ごはん食べて、ちょっと一緒に歩くだけでいいから…。」 だから“買い取った”ってことに…。 横山「…わかった…。」 桃子の腕を絡ませたまま、俺は歩き出した。

2017-03-07 22:19:27
りえぷぅ @riem124blue

677 桃子が行きたいって言うたんは、この辺じゃいちばん綺麗に夜景が見えるって言われとるホテルのイタリアンの店。 確か…妹の親友の父親が経営しとるホテル。 妹が結婚式あげるゆーてたとこ…。 桃子「ぅわっ…ホントに綺麗なんだけど!」 キラキラした目で夜景を見とる。

2017-03-08 23:21:14
りえぷぅ @riem124blue

678 桃子「好きな人とココでごはん食べるのが夢だったんだぁ♪」 横山「ふーん…。」 桃子「ひとつ、夢が叶ったよ!ありがとう横山さ…あ、せっかくだから、名前で呼んでいー?えーっと、きみたん♡」 横山「きみた…!///やめてくれよ~もぉ立派なオッサンやで…。」

2017-03-08 23:21:19
りえぷぅ @riem124blue

679 桃子「なんで?いいじゃーん♡」 ケラケラ笑う。 夢が叶ったて…ここでメシ食えたことが? それとも…好きな人と…? 桃子「お料理もおいしーねー♪」 いつもテンションは高めやったけど…こんなにはしゃいでる桃子は初めて見るな…まぁ、そんな付き合いでもなかったか。

2017-03-08 23:21:25
りえぷぅ @riem124blue

680 そぉや…俺は桃子の何を知ってんねん。 桃子はなんで最後の夜を、俺と過ごしたい思たんや…。 桃子「田舎に帰ったらね?…お見合いするんだって、あたし!今の料理長らしいの。つまりは後継ってこと?あ、そうそう!期待されてた妹ね?なんと!駆け落ちしちゃったんだって!」

2017-03-08 23:21:29
りえぷぅ @riem124blue

681 至って明るく、おもしろそうに話しとる彼女が、逆に痛々しい…。 桃子「期待してただけに、すーんごい落ち込んだらしいよー、ウチの親!あっ、そもそも寝込んだとか言ってたのも、そのせいらしいの!それ隠して呼び戻そうとしたとか…焦ってるよね!ぷぷぷ…!」

2017-03-08 23:21:35
りえぷぅ @riem124blue

682 好きなだけ喋らせてあげよ思た。 俺は頷くだけ。 桃子「妹もさ、期待が重過ぎたんじゃないかな?姉はどっか行っちゃうし、逃げ場もなくて。結局、出来損ないのあたし呼び戻して…まーでも、期待されてないから気楽でいっか!あー、きみたーん、も1杯ワイン飲んでいい?」

2017-03-08 23:21:44
りえぷぅ @riem124blue

683 横山「えぇよ?好きなだけ飲み?」 桃子「やったー!あっ、あたしね、このホテルのお部屋も取ってるの!だから、酔い潰れても大丈夫だから!」 横山「へっ?!」 桃子「いやいや1人で泊まるし!勘違いしないで…って、そーんなあからさまにホッとした顔されるの…ムカツク(笑)」

2017-03-08 23:21:51
りえぷぅ @riem124blue

684 横山「えっ…すまん…。」 桃子「あはは!いいんだけどさ。もうね、部屋引き払っちゃって。荷物も送ったし。だから、せっかくだし、このホテル取ったんだぁ~。」 その後も桃子は順調に飲み進めて…完全に酔い潰れよった…。

2017-03-08 23:22:02
りえぷぅ @riem124blue

685 しゃあないから、肩に担いで部屋まで送る。 半分夢の中なのに、義務のように謝る彼女。 桃子「きみたぁん、ごめんね~…?」 横山「えぇよ…。」 最後やし、て思ったけど、それは口に出さへんかった。 すでにチェックインしてあった部屋には、小さなスーツケースがひとつ。

2017-04-01 19:20:07
りえぷぅ @riem124blue

686 明日目が覚めたら、この小さな荷物持って田舎に帰るんか…。 寂しいやろな…。 かといって一緒に寝るわけにもいかんしな。 ベッドの上に寝かす。 横山「桃子?水飲んどくか?」 桃子「ことみ…。」 横山「え?」 桃子「琴美だよ、きみたん…手紙の本名見たでしょ?」

2017-04-01 19:20:14
りえぷぅ @riem124blue

687 確かに…そんな名前やった…。 桃子「キャバ嬢辞めたから…。」 横山「…そやな…琴美?水飲んどき。」 小さな備え付けの冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出して、彼女を抱き起こした。 片手で支え、口元にペットボトル運ぶと、素直にそれを口にした。

2017-04-01 19:20:22
りえぷぅ @riem124blue

688 ペットボトルに蓋をしてから、ベッドサイドにそれを置いた。 そしてゆっくりと離れようとしたら…、俺の腰に手を回してギュッと抱きついてくる。 横山「…もも……琴美…?」 頭を撫でた。 桃子「…すき…大好き…。」 小さいけど、ハッキリと聞こえた。

2017-04-01 19:20:33
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