空想の街・冬の目覚め 2017・期間外

うらはら @ura_saraha

女は身じろぎもしない。その姿を見ながら窓也は内心の衝撃を押し殺していた。まさかこの街で影の無い人間に会うとは。いや住人とは限らない。旅人か越してきた人間か。考えるうちにふつふつと湧き上がるのはやはり。「俺はあなたを軽蔑するよ」　@hrsrh_a #空想の街　#原料屋　#夕闇俳句帳

ハラ@企画用アカウント @hrsrh_a

「それは弱さだ。逃避だ。狡さだ」飛んできた言葉が自分の体をずたずたに裂いてゆくのを小雨は目を見張って見ている。何が起きているか分からなかった。青年の言葉は続く。「耐え難い現実を受け止め切れずにあなたはただ逃げている」　@ura_saraha #空想の街　#原料屋　#夕闇俳句帳

うらはら @ura_saraha

「名を失った者は因果を失う、顔を失った者は個を失う、影を失った者は」乾いた唇を湿らせる。「影を失えば心を失う。皆心の何処かで知っている。だから心の痛みに耐えられなかった者は、進んで影を手放して、そうして一目散に逃げてゆくのさ」　@hrsrh_a #空想の街　#原料屋　#夕闇俳句帳

うらはら @ura_saraha

「でもそれは逃避行に過ぎない。一過性の旅に過ぎない。置いてきた傷跡は癒えぬまま何時までも持ち主を苛む。心を捨てても傷は消えないさ。痛覚が消えたって傷口は残ってるだろう。どうしてみんなそこを履き違えるんだろうな」　@hrsrh_a #空想の街　#原料屋　#夕闇俳句帳

うらはら @ura_saraha

喋りすぎたか、と窓也は一度口を閉じた。街灯の下に立つ女はぴくりともしない。激昂でもするかと思ったのだが。「…俺は忠告しているのさ。誰が弱かろうが誰が逃げようが、俺にはどうだっていい話だが」　@hrsrh_a #空想の街　#原料屋　#夕闇俳句帳　「歪みはいつか、持ち主を殺す」

ハラ@企画用アカウント @hrsrh_a

がらんと空いた洞に青年の声が反響して響く。歪みはいつか持ち主を殺す。太陽を避けて生きる日々を思い出す。晴天に眉を潜め、日傘がなければ外も歩けない。風に舞う紅色の花びらを思い出す。桜の花びら。ずきずきと痛むのは。　@ura_saraha #空想の街　#原料屋　#夕闇俳句帳

ハラ@企画用アカウント @hrsrh_a

「知ったような、口を、」きかないで、と言った声はあまりに細く震えていた。潮風に千切れて散り散りになってゆくそれを青年はつまらなさそうに見た。「ただのお節介だ」くるりと踵を返す姿を、小雨は呆然と見つめた。　@ura_saraha #空想の街　#原料屋　#夕闇俳句帳

こみや@空想の街 @Ne2_co

「著　好文果映子」の文字を見た。 かえ、子。つまり。あゆ子しばらくその奥付を眺めていた。街の中らしい出版社の住所。数十年前の年月日。自分へとつながる誰かが、この街で書き留めたもの。この街で受け取ったものを、かたちにしたもの。――先をゆくひとの、影。 #空想の街 #はなのえ文庫

こみや@空想の街 @Ne2_co

月は昔の月ではない。花も昔の花ではないかもしれない。瞬きのように目覚めた花も、空を一直線に割いた閃光も……けれど、それが時を超えて、にこころに投げかけているものがある。それは確かだ。あゆ子はふと、机の片隅に置かれた紙へと手を伸ばした。 #空想の街 #はなのえ文庫

こみや@空想の街 @Ne2_co

【冬】　花眠る 目覚めを終え、花がしばしの眠りにつくこと。間を置かずに咲く花もあれば、ほぼ眠ったまま次の季節を待つ花もある。 先をゆく影まだ遠く花眠る 花眠りなぞれば淡きふみの文字 #空想の街 #空想歳時記 #はなのえ文庫

こみや@空想の街 @Ne2_co

歳時記の、季語募集の紙。掲示板まで貼りにいかなければ。足をのばして花も買いに行こう…もうすぐ目覚める春の蕾を、先を行くひとに手向けるために。 本を衣装箱へ戻して蓋をする。羽織と襟巻を纏って戸を開ければ――本の匂いの籠る室内に、花の名残の香が舞い込んだ。 #空想の街 #はなのえ文庫

はなまめ @gp_c_

｢?!｣｢そ、明日夜9時。やった事あるね？｣｢わー！はるさんがメインディッシュ?!ひー、永久保存で録音しますー！｣(…無理ことわ『嫁の』｢!｣『嫁の無礼は旦那の躾だよ？』 ｢…｣｢宣伝ポスター頂きま、って鷲尾さんですか、お返ししますー｣｢君真顔怖いねぇ｣ #空想の街 #ここ聞ぃ

はなまめ @gp_c_

ひばり｢え、ほんと行けるの？！｣ 犬｢応とも。湯治だ、その伸びっぱなしの羽干してこい｣ 秋｢うしおちゃん銭湯休めないって｣ ひば｢ンなんいいのよあそこちんかもだし当てにゃしないわ！んじゃいってきまーす！｣ 犬秋｢いてらー｣ 犬秋｢いぇーい｣ #空想の街 #FM時計塔 #ここ聞ぃ

はなまめ @gp_c_

犬｢ご覧の通りに今回は不詳色男な若旦那こと鷲尾犬太郎、万を辞してon wave Debut!期待していた奴等にゃ悪いが俺も目立つは大好きでね、日晴良の声には負けるが夜の一時耳貸しちゃァくれねぇか。その代わりっちゃ何だがサービス、するぜェ？｣ #空想の街 #FM時計塔 #ここ聞ぃ

はなまめ @gp_c_

秋｢放送は明後日2月8日午後9時から。相肩は銭湯の旦那って話で兄さんが心配です。お手紙はリプかDMで、質問感想愛の告白遠慮なく突っ込んでやってよ｣ 犬｢……待て。秋ちゃんじゃねぇの｣ 秋｢何言ってんだか、僕は予約の電車があるから今日帰るよ｣ #空想の街 #FM時計塔 #ここ聞ぃ

佐和島ゆら@星月堂へようこそ（新作）販売中 @sawajimayura227

彼女は恋をしてはいけない人でした。募る恋は真っ赤に高々と燃える殺意に代わり、愛したものを殺すだろうという呪いを受けた人でした。 だから彼女は言いました。 「恋なんて、いらないわ。迷惑になるだけだもの」 #空想の街　#毒と恋

佐和島ゆら@星月堂へようこそ（新作）販売中 @sawajimayura227

だから彼女は恋をしませんでした。毒のような己の身を呪い、ただ学問に身を捧げることを決意していたのです。学問で分からないことがあるとすぐに答えてくれて、優しい彼女は人気はありましたが、誰も彼女の側にいようとしませんでした。#毒と恋　#空想の街

佐和島ゆら@星月堂へようこそ（新作）販売中 @sawajimayura227

付き合う前から、先生と彼女はとても気が合っていました。彼女は先生を気にしてましたし、先生も彼女の行動をつい見てしまうのでした。ある日、皆が酔いすぎるほどによった飲み会がありました。#毒と恋　#空想の街

佐和島ゆら@星月堂へようこそ（新作）販売中 @sawajimayura227

ある酒癖の悪いことで有名な教授が言いました。 「君は、学問のためなら身を捧げられると言っていたね」 彼女は頷きました。彼女にはそれには自信がありました。どんなことでも受け入れようと考えていました。#毒と恋　#空想の街

佐和島ゆら@星月堂へようこそ（新作）販売中 @sawajimayura227

「なら、そこの、相馬君とキスでもしてみたらどうだい。恋を知らないのはしょうがないとして、男を知らないのは女としてはまずいだろう」 それがとんでもない言葉でした。声を上げるのを是とする女性団体がいたら、迷わず抗議するでしょう。もちろん彼女は断りました。#毒と恋　#空想の街

佐和島ゆら@星月堂へようこそ（新作）販売中 @sawajimayura227

すると教授は一冊の本を取りだしたのです、それは外国で最近発売された論文集でした。この国に届くのに、もう一年かかるだろうと言われた最新論文集でした。教授はにやりと笑います。#毒と恋　#空想の街

佐和島ゆら@星月堂へようこそ（新作）販売中 @sawajimayura227

「これをキスして見せたら、あげてもいいだろう」 先生は思わず戸惑います。これを手に入れたら研究分野でトップを走ることは出来るでしょう。だからといって、彼女にセクハラな行為するには抵抗がありました。#空想の街　#毒と恋

佐和島ゆら@星月堂へようこそ（新作）販売中 @sawajimayura227

飲み会は奇妙な間が起きます。皆が二人がどういう行動をするのか、興味を持ったのです。そして、行動を起こしたのは彼女でした。 「先生」 #空想の街　#毒と恋

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「倫子さん……？」 　真剣な彼女の瞳を目にした途端、彼女は顎を持って先生と唇を重ねます。見せつけるように、数秒、衆目を集めました。 彼女は淡々と、言葉を放ちました。 「これでご満足ですか？」#毒と恋　#空想の街

佐和島ゆら@星月堂へようこそ（新作）販売中 @sawajimayura227

その言葉に教授は満足げに頷きました。 そうして論文集を二人に手渡したのです。 #空想の街　#毒と恋