「フォビドゥンフォレスト3話「蝶舞の町内」 #14 「目標B」

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フォビドゥンフォレスト@カクヨム投稿中 @fbd_forest

法的なことを抜きにしても、味方寄りの存在とはいえ恐ろしい能力である。 「…ありがとうございます」 色々と思うことはあるが、副司令は横にいた愛衣に頭を下げる。 「私が勝手にやったことだ。下手に感謝して共犯扱いされても知らんぞ。会話は帰りに改竄していくがな」 21

2017-02-13 00:46:24
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「こ、この人ウチのシステムへの介入を予告してません!?」 「諦めよう。今更だ」 駆がみちるを溜息混じりに諭す。愛衣はそれを気にした様子もなく続ける。 「もっとも、西側もお前達のカメラ以外ではまともに捉えたものは無いようだがな。あの速度だし」 22

2017-02-13 00:52:42
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「ともかく」 副指令が仕切り直す。 「何れにせよ目標Bが『そこ』に潜んでいたのは間違いないようですな。多胡隊はそのままその場で解析を続行して下さい、近くの隊は周辺の捜索を、他の隊は同様の場所に他の敵がいないか再確認をお願いします。多胡隊及び里見が丘への増援は現状では不要です」23

2017-02-13 00:57:45
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『はい!』 「了解しました!」 「現場の隊員は非戦闘域でも最大限の注意を…里見が丘と援軍の様子はどうでしょうか」 「苦戦しています…」 麻衣が正面モニターの片桐の戦闘状況を拡大する。鱗粉に注意しながら蝶を逃さず殺さず食い止めるのは、並列思考があっても容易なことではない。 24

2017-02-13 01:03:40
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「現在、ブレードの予備が届いたので弓や大砲で撃ち出したり、ドローンに持たせて上空へ送っていますが、やはり風と鱗粉が邪魔で十分に届いていません。片桐くんの制御下の刃の数は一進一退ですね」 「風が収まっていないようですね?」 「ええ、幸川くん達も思いのほか手こずっていますね」 25

2017-02-13 01:09:30
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今度は礼太と幸川の戦闘が大写しになる。礼太がビームで援護しながら、幸川が切りつけ、余力があれば礼太も殴りにいく。狙撃手達も二人への誤射にだけ注意し、遠慮なく攻撃を浴びせていく。しかし頭を含む20ヶ所以上へ直撃させても死ぬ様子がない。本来なら急所に当てずとも数発で倒せる敵だ。 26

2017-02-13 01:19:11
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「通常の倍の速度を出せる時点で頑丈なのは分かっていましたが…そこまでとは…!」 今は体制を立て直した者から順に攻撃に参加している。狙撃手の支援を受けて中衛の射手も接近して攻撃しているのだが、事態が好転しない。今は羽根に攻撃を集中させて大きく羽ばたかせないことに徹している。 27

2017-02-13 01:25:13
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それでも僅かな羽ばたきだけで上空の気流が大きく乱れ、片桐を苦しめている。最早、その戦闘力はB級妖怪の姑獲蝶の域を超えている。データを分析しようにも鱗粉が邪魔をしているが、S級並でもおかしくはない。 「変種にしても強過ぎませんか?」 みちるの感想は司令部と現場の総意でもあった。28

2017-02-13 01:28:56
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妖怪の変種は強くても1ランク上がせいぜいの筈なのだ。 『紹子さん、副司令聞こえますか』 「…幸川くん?」 「どうしました?」 幸川からの連絡は2人への直通・秘匿通信だった。2人は訝しむ。礼太・幸川の通信は現場の通信市3人が担当している。それを通さずに連絡してきたのだ。 29

2017-02-13 01:32:13
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「コイツ…素の力は普通だ…俺は普通の姑獲蝶とは殆どやりあったことはないけど…固さも動きも…B級妖怪相応のレベルだ…本来ならな」 「つまり…?」 紹子は幸川に合わせて声を潜める。鱗粉が邪魔な以上、強さを計るのは交戦している者、特に近くで戦う2人に任せるしかない。 30

2017-02-13 01:36:04
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「俺もレコードアームズや、村井の真白ちゃんの術で強化して貰ったことがあるから分かる…コレはあの感覚に近い…コイツ、多分変種じゃないぞ。何かで…いや何かに強化されてる…!」 「…やはり、そういうことですか…」 衛守副司令の中で全てが一つに繋がった。 31

2017-02-13 01:39:20
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『その様だね…』 風科へ急ぐ車中で、秘匿通信を含めた全てを聞いていた篠森司令も同意する。姑獲蝶の結界の通過、潜伏場所、そして先日のバケグモ事件…その全てが、ある1つの事実を示していた。 「とにかく、今は奴を倒すことです」 衛守は一旦、その事実を頭の隅に退けた。 32

2017-02-13 01:42:11
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ちょうどその時だった。 『遅くなりましたっ!』 佐祐里の声が響く。先程、片桐と瑠梨が来たのと同じトンネルから、恵里を後ろに乗せたブルームで飛び降りてきたのだ。道路へ衝突する前に風の盾で衝撃を殺し、そのまま目標Bを目指して疾走する。A級4人ならS級だろうと勝てない敵ではない! 33

2017-02-13 01:47:18
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「……皆、道を開けて!彼等も来たわ!」 紹子は警告と共に、『ソレ』の進路を現場の隊員達のグラスなどに表示させる。 佐祐里達ではない。トンネルから見て北西から、それは亜音速で突っ込んできた。事前に報告を受けていた隊員達は準備していたクッション材を、ソレの進路上へと運ぶ。 34

2017-02-13 01:51:08
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『「ズッ…ドォォオオオン!…すみません…ピタンと止めて下さあああ…ギュム』 土煙を巻き上げ、林を裂いて高台から現れたそれは30mの高さからクッション材に激突し、諸共に、丘の下の道路に転げ落ち、轟音が響く。下の隊員も退避済みだが、落ちた「彼女」が心配になる音だった。 35

2017-02-13 01:56:00
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落下寸前に飛び降りた3人…藤宮涼平と、朝来想良、久浦祥汰は無傷だった。数分前、今落下した彼女…ガイア・クレーバーンは合体したユニットを分離出来ないまま、乗機を台として涼平に運ばれていた。途中で帰還を急ぐ主力と出くわしたガイアはこの3人だけを乗せてきたのだ。 36

2017-02-13 02:00:25
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重装備と癒着してしまったガイアだったが、装備したブースター自体は生きていた。それを乗機の上で無理に吹かしたのだ。当然、本来の用法ではない。自動車に飛行機用ジェットエンジンを付ける様なもので、普通なら上に乗れば途中で粉微塵の血風と化すところだが、この3人も普通ではなかった。 37

2017-02-13 02:05:04
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想良の重力球で体を固定し、祥汰と涼平が障害物を排除しつつ、ガイアの姿勢を制御する。無茶なやり方でなんとかこの局面に間に合ったのだ。当然、目標Bの奇襲はともかく異様な強さは想定外で、本来なら無駄な努力で済むところだったが、彼等にとっては残念なことに役に立ってしまったのだ。 38

2017-02-13 02:08:42
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『なんですか今の音…え?ガイアちゃん?…涼ちゃんも!?』 遅れて数秒、岩橋の丈の駆るブルームて、叶音も到着した。 「若手の主力が集結してくれましたか…では、作戦を再編します。皆さん!あと一息です。子供達を必ず助けましょう!」 「『了解!!』」 副司令の宣言に隊員達が応じる。 39

2017-02-13 02:13:24
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「フォビドゥンフォレスト3話「蝶舞の町内」 #14 「目標B」終わり #15 「救出撃」に続く twitter.com/fbd_forest/sta… 次回更新は火~水曜の予定です。

2017-02-13 02:14:38