アメリカはいかにしてホーネットを改修し、またF35の開発に至ったのか

昔の雑誌から発掘したのでまとめてみた もくじ ・ステルスウィーク ・ATA計画とNATF計画 続きを読む
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深海さかな @dzurablk_kai

A12では空母甲板上への固定のために、ワイヤーを張るためのポイントも多数用意されてた これらの大半は飛行時には露出することのない車輪回りや折り畳まれた主翼の断面にあったことも興味深く特筆に値する点 pic.twitter.com/yPaLw8DDMO

2017-02-16 01:34:31
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深海さかな @dzurablk_kai

更にA12では、メンテナンス性の向上も設計に盛り込まれてた 梯子を使わずともメンテナンスができるよう機体の下面に手が届くよう、機体の全高は低く抑えられていた他、コックピットのガラスも横にヒンジがあることで主翼に乗らなくとも機体上部中央のメンテナンスができたんだとか pic.twitter.com/bIit3Dp7UT

2017-02-16 01:37:32
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深海さかな @dzurablk_kai

おそらくスペースや機材に限界のある空母上では、飛行の度に電波吸収塗料を塗り直さなくてはならなかったというB2の劣悪なメンテナンス負担を、少しでも減らす必要があったことに起因する設計なのだろうなあ 乗り込み梯子もF117と違い機内に収納されるので滅茶苦茶ユーザーフレンドリーである

2017-02-16 01:40:01

中止になったATA・NATF計画と、後継のAX計画

深海さかな @dzurablk_kai

とまあ、こんな風にATA計画の下、先進的な艦載機を目指して開発が進められていたA12だったが 先進的すぎて機体重量が要求性能の八割増しなどになってしまい 冷戦後の国防予算削減がトドメとなって、あえなく開発は中止に

2017-02-16 11:57:59
深海さかな @dzurablk_kai

90年の4月には調達数が削減、91年1月に中止が決定とあいなったそうな

2017-02-16 11:59:02
深海さかな @dzurablk_kai

このA6E代替機計画であるATA計画の中止が決定された91年1月には、同じくF14代替計画のNATF計画も先送りが決定されてる つまり先述の、91年6月に開催された「ステルスウィーク」は詰まる処「冷戦後の新型機開発計画中止を食い止めたい」軍産側の政治家に対するアピールだった訳

2017-02-16 12:07:24
深海さかな @dzurablk_kai

さて、これらA6EとF14の代替計画が予算削減で頓挫した後に立ち上げられたのが、AX(次期攻撃機)計画とホーネット更新計画 前者は後にA/FX(次期戦闘攻撃機)計画へと名称が変更されていて、文字通りマルチロール機の開発で戦闘機と攻撃機をまとめて更新してしまおう、というもの

2017-02-16 12:18:26
深海さかな @dzurablk_kai

スーパーホーネットの開発は、このAX計画が成果を得るまでの所謂「つなぎ」として進められていたらしい

2017-02-16 12:19:34
深海さかな @dzurablk_kai

AX計画とホーネット更新計画を同時並行する予算はどうすんのか、というと、どうやらF14D(トムキャットに爆撃能力を付与する、所謂ボムキャットへの更新)計画を中止にした上で、更に中止になったA12開発計画の予算をまとめて流用する予定だったんだとか

2017-02-16 12:22:03
深海さかな @dzurablk_kai

AX計画は海軍のA6E・F14の更新のみならず、空軍のF111・F15E・F117Aといった戦闘爆撃機やステルス機も更新してしまおう、という更に野心的な計画で、ロッキードマーチン・ノースロップグラマン・マクドネルダグラスの三社が意欲的な案を提示している

2017-02-16 12:25:31

AX計画の予定機たち

深海さかな @dzurablk_kai

マクドネルダグラスは、先に計画中止の憂き目にあったA12アベンジャーを更に改善して、ノースロップグラマンはF22に破れたYF23Aを改善して、このワガママな要求に応えようとしていたんだとか

2017-02-16 12:27:01
深海さかな @dzurablk_kai

ロッキードが提示した案も大変興味深く、F22を可変翼化したF22Aに、ボムキャット同様2000ポンド爆弾×4の爆装能力を付与する予定だった 離着陸時には16゚、巡航時には21゚、高機動時は45゚、高速侵入時は71゚、駐機時には77゚の後退角を取れるのだとか

2017-02-16 12:31:07
深海さかな @dzurablk_kai

というかこのF22A計画自体が、先に中止されたNATF計画のために予定されていた機種で、ロッキードはこれと並行して別の設計チームもAX計画に際し編成している

2017-02-16 12:34:08
深海さかな @dzurablk_kai

とまあ、こんな感じで進められてたAX計画も、やはり予算の都合か93年9月に中止に 同じタイミングで、空軍のF16代替機計画だったMRF計画も中止になって、それらを統合する予定で新たに立ち上げられたのが、後にF35を産み出すことになるJAST計画というわけ

2017-02-16 12:38:38
深海さかな @dzurablk_kai

MRFは「他任務戦闘機」 JASTは「統合新攻撃戦術機」 の略ね

2017-02-16 12:42:38
深海さかな @dzurablk_kai

つまり、「海軍のA6E攻撃機代替計画(ATA)」と「海軍のF14戦闘機代替計画(NATF)」を統廃合して「空軍の攻撃機も代替しようとした」のがAX計画で、ホーネットの更新はこの繋ぎ このAX計画と「空軍のF16戦闘機代替計画(MRF)」も統廃合したのが、JAST計画のF35

2017-02-16 12:41:41
深海さかな @dzurablk_kai

だからJAST計画では、「海軍のA6EとF14」「空軍のF16」「海兵隊のAV8B」を代替する予定として進められた

2017-02-16 12:43:54
深海さかな @dzurablk_kai

これらホーネット更新計画とAX計画、NATF計画は、報告書内でも比較検討されていて ・価格面ではホーネット更新計画が ・ステルス性能ではAX計画とNATF計画が ・航続性能ではNATF計画が 有利だったらしい 結果的にコスト面で勝るホーネット更新計画だけが生き残った訳だね

2017-02-16 12:49:41

現代まで受け継がれる計画の副産物たち

深海さかな @dzurablk_kai

さて、これら多数の新型機開発計画には、膨大な予算が費やされた訳だけど 実はそれらすべてが無駄になった、という訳ではなく、後進の計画には中止された計画からも流用された要素が多い これらも興味深いので最後にご紹介

2017-02-16 12:52:03
深海さかな @dzurablk_kai

例えば、ATA計画とNATF計画を統廃合したAX計画では、ATA計画での採用を目指したA12やNATF計画での採用を目指したF22A、それらに先立ち空軍のATF(先進戦術戦闘機)計画でF22に破れたYF23Aの案がまんま、メーカー各社によって流用されてるし

2017-02-16 12:56:54
深海さかな @dzurablk_kai

92年から計画が立ち上げられたF/A18E/F(スーパーホーネット)の開発計画でも、これら計画の産物は活かされていて スーパーホーネットに採用されたエンジンはGE(ゼネラル・エレクトロニクス)社のF414-GE-400というエンジンなのだけれど・・・

2017-02-16 13:00:22