垂れ流し

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うさ @usa_kororin

(メンタルセラピストなりたて新兎) 本日の診療は終了しました。の札をドアにかけているとそのガラスのドア越しに見覚えのある人がいるのが見えた。ここ、東雲メンタルクリニックに通っている患者さんだった。宇佐は施錠したばかりのドアを開けて外に出て「今日はもう終わっちゃったよ?」

2017-02-16 15:42:29
うさ @usa_kororin

@usa_kororin と優しい声音で伝える。すると「知ってます。」と言う返事が返ってきた。はて、ならばなぜわざわざこの時間に?という疑問をそのまま投げかける。「じゃあ…どうしてこの時間に?」「このあと宇佐先生といたくて…。」「ボクと?」患者が宇佐個人にプライベートで会いたい

2017-02-16 15:42:44
うさ @usa_kororin

@usa_kororin と言う人は珍しくなかった。 そのどれもに断ってきたし、もちろん今回も断るつもりだ。「えっと…ごめんね。そう言うのはお断りさせてもらってるんだ。」「彼女がいるんですか?」「そうだね。恋人がいるよ。」宇佐がそう返事をすると女性は宇佐の方へ駆け出した。

2017-02-16 15:43:20
うさ @usa_kororin

@usa_kororin 手には包丁が握られている。(ヤバい!) そう思って咄嗟に避けるが避けきれず鋭利な刃が腹部を裂いた。「ぐっ…!」痛みにどっと脂汗が出る。白衣が真っ赤に染まっていく。(大丈夫、あの時ほど痛くない。)そう思うと少し冷静になれた。

2017-02-16 15:43:40
うさ @usa_kororin

@usa_kororin 立ち上がり、どうにかして包丁を奪おうと近付く。「こういうこと、しちゃいけないってわかってるよね?」返事はなかった。宇佐の血を見てカタカタと震えるばかりのか弱い女性から凶器を奪うのはそう難しくなかった。

2017-02-16 15:46:27
うさ @usa_kororin

@usa_kororin もう少しで凶器を奪えるといったところで女性は奇声をあげながら包丁を振り上げた。その刃先が宇佐の腕をかすめ、また血が出る。「痛いなぁ。…あのね、ボクは怒ってないからとりあえず話をしよう?」押さえた腹部からはまだ血が流れている。

2017-02-16 15:49:51
うさ @usa_kororin

@usa_kororin 意識が薄れていくが女性から目を離さない。「ほら、怖くないから。ね?まずそれを置こうか。」足元がふらふらと覚束なくなっていくのがわかった。膝をつきうなだれると女性が近づいてくる足音がした。「宇佐先生が…優しくしてくれるから私…」

2017-02-16 15:54:11
うさ @usa_kororin

@usa_kororin どうにか頭をあげて女性を見やる。泣いていた。(泣きたいのはこっちの方だよ…。)「先生が好きになっちゃった。私と付き合ってよぉ!!!」「ごめん。それはできないかな。」叫び声のような告白をきっぱりと断ると女性はギュッと包丁を握りなおして宇佐へ向ける。

2017-02-16 15:57:09
うさ @usa_kororin

@usa_kororin そこへ戸締りをしに行ったにしては戻るのが遅い宇佐を変に思ったのか東雲が様子を見に来た。「君は何をしているんだい?」どちらに話しかけたのかわかりづらい調子で語りかける。「政さん…その子…。」「わかってるよ。…君、それをこっちに渡しなさい。」

2017-02-16 16:00:26
うさ @usa_kororin

@usa_kororin 第三者が現れて焦ったのか包丁を取り落す。宇佐はそれをすかさず取ると、女性は真っ青な顔して座り込んでしまった。「警察、呼ぶからね?…あと救急車も必要だねぇ。」「…お願いします。」そう言って宇佐の意識は途切れた。

2017-02-16 16:03:30
うさ @usa_kororin

@usa_kororin 次に目が覚めた時、最初に目に映ったのは泣きじゃくる霰の顔だった。無意識に頭を撫でようと腕をあげる。その腕には点滴のチューブが繋がれていた。そこでようやくここが病院だということに気が付いた。「にいとぉ…!」目が覚めた宇佐に抱き着いて名前を呼ぶ霰。

2017-02-16 16:07:10
うさ @usa_kororin

@usa_kororin 腹部が痛むがそれを言うと心配されるので口には出さず頭を撫でてやる。「心配かけたね?ごめんね。」声が上手く出なかったが伝わったようで霰は何度もうなずいた。すると別の声が聞こえてくる。「そんなに締め付けたら傷開くだろうが!」

2017-02-16 16:09:28
うさ @usa_kororin

@usa_kororin 片倉も来ていたようで、こちらを心配そうにして見ていた。「お前を刺した女性はもう捕まえたから大丈夫だ。」「そう…、ありがとう。」ふう、と息をつくと霰がゆっくりと宇佐の体を解放した。

2017-02-16 16:12:21
うさ @usa_kororin

@usa_kororin 涙がなかなかおさまらない霰に声をかける。「大丈夫だよ。これくらいじゃ死なないから。というよりまた君を置いていくわけないじゃない。」そう言うとばっと顔をあげてだって、と言う。「お前の顔があの時と重なって…くそっ!」と病室を飛び出ていってしまった。

2017-02-16 16:16:22
うさ @usa_kororin

@usa_kororin 「片倉くんごめん…霰くんを…。」「わかってるって。」霰の後を追って片倉が病室を出た。だれもいなくなった病室に東雲が入ってくる。「愛されてるねぇ。」「はは、でしょう?」「君も彼もちょっとおかしいよ。」「…いいんです。それで。ボクらは満足してますから。」

2017-02-16 16:20:32
うさ @usa_kororin

@usa_kororin ふぅん、と自分から聞いてきたくせに対して興味もないふうに返事をする東雲に特に何を思うでもなく笑いかける。「にやけ顔をやめなさい。」「政さんがやめたらやめますよ。」

2017-02-16 16:23:31