クズ鉄のミサキの冒険 第二夜「黒い雲のヒジリ」

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Sin・蝉ミキサー14thインウィディア @sm_14th_Invidia

退屈なときは異なる世界の話をしましょう。

2011-02-20 02:44:04
Sin・蝉ミキサー12thグーラ @sm_12th_Gula

@sm_14th_Invidia クズ鉄のミサキが飛び降りるところまで。

2011-02-20 02:46:19
Sin・蝉ミキサー14thインウィディア @sm_14th_Invidia

クズ鉄のミサキは風に煽られ落下し、地面に叩きつけられ……まだ死んでいない自分にふと気がつきました。 風に煽られたことで身体が流され、隣の屋敷のベランダに落ちてしまったことで落下距離が十分でなかったのです。

2011-02-20 02:49:43
Sin・蝉ミキサー14thインウィディア @sm_14th_Invidia

そこは【鳥獣族】の雛たちの住む屋敷でした。 【鳥獣族】の《善行》は「大陸を移動すること」。 彼らは文化、道具、植物、言葉、そういったものを持って大陸を移動します。 そうすることで大陸は発展してきました。

2011-02-20 02:53:29
Sin・蝉ミキサー14thインウィディア @sm_14th_Invidia

しかし、彼らの子供は飛ぶことができません。 ですから【鳥獣族】は卵を孵すと子供を置いてどこか遠くに旅立ってしまいます。 そして彼らの子供を育てるのはこのあたりでは【遺物族】の役目です。 

2011-02-20 02:56:27
Sin・蝉ミキサー14thインウィディア @sm_14th_Invidia

【遺物族】は《善行》により他人の代わりを為すことに喜びを覚えるので、子を育てる役目を持っているが《善行》によってどこかへ飛んでいきたい【鳥獣族】との利害が一致した形になります。

2011-02-20 02:57:29
Sin・蝉ミキサー14thインウィディア @sm_14th_Invidia

クズ鉄のミサキが落ちたのはそういう【鳥獣族】の雛のための家でした。 大きい音に驚いてベランダに【鳥獣族】の雛が集まります。 その中で一番に口を開いたのは黒い雲のヒジリでした。

2011-02-20 03:01:02
Sin・蝉ミキサー14thインウィディア @sm_14th_Invidia

「ねえ、貴方はどうやって来たの?【遺物族】は空を飛べないはずでしょう?」

2011-02-20 03:01:53
Sin・蝉ミキサー14thインウィディア @sm_14th_Invidia

クズ鉄のミサキは困り果ててしまいました。 自分の先の見えない人生に息苦しさを感じて高いところから飛び降りて自分を壊そうとしたら失敗してしまった、なんて正直な返答、ただでさえ他人にはしたくないのにましてや子供にするだなんて

2011-02-20 03:03:33
Sin・蝉ミキサー12thグーラ @sm_12th_Gula

@sm_14th_Invidia そりゃあそうだ。 それで、ミサキはなんて答えたんだ?

2011-02-20 03:04:51
Sin・蝉ミキサー14thインウィディア @sm_14th_Invidia

「ああ、実は僕はドラゴンの背に乗ってこの上まで来たんだ。僕はドラゴンハンターでね。黄金竜スマウグと戦ってたんだけどさあ、その首を落とすかと言うところで飛んでね。なんとかしがみついて倒そうと頑張ってたんだけどこの上で振り落とされてしまったんだ」

2011-02-20 03:09:07
Sin・蝉ミキサー14thインウィディア @sm_14th_Invidia

それはクズ鉄のミサキは幼い頃に読んだ童話を元に急いで物語を作りました。

2011-02-20 03:10:11
Sin・蝉ミキサー14thインウィディア @sm_14th_Invidia

【ドラゴン族】は食物連鎖ランキング5位の化け物。 食物連鎖ランキング76位の【遺物族】や58位の【鳥獣族】では本来到底たちうちできないような種族です。 その《善行》は「欲望のままに力を振るい生きること」。 大陸に住む全ての生き物に対する災害として【ドラゴン族】は存在しています。

2011-02-20 03:12:42
Sin・蝉ミキサー14thインウィディア @sm_14th_Invidia

通り道にある集落を気まぐれに破壊し、目についたという理由で里を滅ぼし、そして対策されて退治される。 それが【ドラゴン族】の生き方であり存在意義です。

2011-02-20 03:14:45
Sin・蝉ミキサー14thインウィディア @sm_14th_Invidia

そうした【ドラゴン族】を退治してるなどと言ってしまったためにミキサは大昔に読んだ童話を元に急いで嘘の上に嘘を積み重ねなければいけません。 ミサキはお話の中で七つの海を渡り様々な人と出会い【ドラゴン族】と戦う理由とその手段を得ていきます。

2011-02-20 03:18:01
Sin・蝉ミキサー14thインウィディア @sm_14th_Invidia

【鳥獣族】の雛たちはその知識の少なさから疑うこともせずクズ鉄のミサキの話を興奮しながら聞いています。 屋敷の外を知らない彼らにとってクズ鉄のミサキの話は非常に面白く、みな一様に白熱しました。

2011-02-20 03:22:51
Sin・蝉ミキサー14thインウィディア @sm_14th_Invidia

しかしクズ鉄のミキサもずっとしゃべり続けられるわけではありません。 嘘の上に嘘を重ね、あるときふと限界が来ました。

2011-02-20 03:23:54
Sin・蝉ミキサー14thインウィディア @sm_14th_Invidia

「僕はもう行かなくちゃ。あいつを追っかけなければいけない」

2011-02-20 03:24:18
Sin・蝉ミキサー14thインウィディア @sm_14th_Invidia

「ねえ、また来てくれる?」 【鳥獣族】の少女、黒い雲のヒジリは問いかけます。

2011-02-20 03:26:05
Sin・蝉ミキサー14thインウィディア @sm_14th_Invidia

「そうだね、余裕ができたらまた来よう。そのときに話の続きをしよう」

2011-02-20 03:27:11
Sin・蝉ミキサー14thインウィディア @sm_14th_Invidia

屋敷の外に出て、はじめてクズ鉄のミサキは自分が誰かを喜ばせることができたのだと気付きました。 そして不思議とあのずっと自分に付きまとっていた閉塞感がなくなってることにも。

2011-02-20 03:28:33
Sin・蝉ミキサー14thインウィディア @sm_14th_Invidia

クズ鉄のミサキはお話の続きを考えながら帰路につくのでした

2011-02-20 03:29:20