クズ鉄のミサキの冒険 第十夜「そしてミサキの希望」

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Sin・蝉ミキサー14thインウィディア @sm_14th_Invidia

眠れないときは異なる世界の話をしましょう。

2012-04-24 01:56:14
Sin・蝉ミキサー14thインウィディア @sm_14th_Invidia

ミサキは全てを許しました。 マハラドがなにも言わずに出て行ったことも、マハラドが考えなしだったことも、黒い雲のミサキが成人を迎えて里を出て行ったことも、そして自分の人生がおそらく今後好転しないことも。

2012-04-24 01:56:36
Sin・蝉ミキサー12thグーラ @sm_12th_Gula

@sm_14th_Invidia いいねぇ。 そうやって現実と折り合いをつけて子供は大人になるんだね。

2012-04-24 01:57:34
Sin・蝉ミキサー14thインウィディア @sm_14th_Invidia

しかしそうなると【鳥獣族】の雛たちにやってしまったことに後悔の念が湧いてきました。 ああ、自分はなんということをしてしまったのだろう、八つ当たりでなんの罪もない存在を傷つけるなんて。

2012-04-24 01:57:55
Sin・蝉ミキサー14thインウィディア @sm_14th_Invidia

ミサキは【鳥獣族】の雛たちが住まう館にもう一度足を運びました。 傷つけてしまった、そして一緒に傷ついてしまった雛たちに自分は大丈夫だと伝えたかったのです。

2012-04-24 01:58:20
Sin・蝉ミキサー14thインウィディア @sm_14th_Invidia

【鳥獣族】の雛たちの住まう館に到着すると部屋の中には何故か大量の鉄くずが積んでありました。 それはミサキが集めるには半年ほどかかるような大量の鉄くずでした。 そしてミサキの姿を見つけた雛たちは口々に言いました。 ねえ、これをカカシに渡して欲しいの!

2012-04-24 01:58:44
Sin・蝉ミキサー14thインウィディア @sm_14th_Invidia

そう、彼女たちは食物連鎖ランキング58位の【鳥獣族】、もし彼女たちが本気になれば76位の【遺物族】より強く、速く、そして優秀です。 もし彼女たちが里の人々に隠れて鉄くずを集めようとすれば【遺物族】の誰もが気付くことはできません。

2012-04-24 01:59:07
Sin・蝉ミキサー14thインウィディア @sm_14th_Invidia

カカシが《善行》を行えない理由がお金にあるのならこれを売ってお金にすればいい、雛たちは言います。 だからこれをカカシに渡して欲しい、彼に希望を与えて欲しい。

2012-04-24 01:59:23
Sin・蝉ミキサー14thインウィディア @sm_14th_Invidia

ああ、――ミサキの目からぽろぽろと涙がこぼれます。 自分はどれほどまでに多くの優しさに、友情に、愛情に気付かず諦めていたのだろうと。

2012-04-24 01:59:44
Sin・蝉ミキサー14thインウィディア @sm_14th_Invidia

ミサキは泣きながらマハラドが自分を裏切ってなどいなかったことを話しました。 そしておそらくカカシはこれからマハラドの元にいきドラゴンを倒すであろうことも。 もっともカカシはミサキ自身なのですから正確にはそうするつもりだというだけの話なのだけれども。

2012-04-24 02:00:45
Sin・蝉ミキサー12thグーラ @sm_12th_Gula

@sm_14th_Invidia ん? お金があればもう《善行》を積むことはできるんだろう? だったらもうドラゴン殺しなんて危険なことはやらなくていいんじゃない?

2012-04-24 02:01:44
Sin・蝉ミキサー14thインウィディア @sm_14th_Invidia

そう、彼女たちの集めたくず鉄を売ればミサキの最初の目的である日々の日々の生きるための労働から解放されて《善行》を行うという目的はすでに達成可能です。 それでもミサキは停滞竜カブトを殺すことにしました。

2012-04-24 02:02:11
Sin・蝉ミキサー14thインウィディア @sm_14th_Invidia

それは親友のマハラドと目指したゴールだからです。 それは雛たちに語り聞かせるカカシの物語は英雄譚でなければいけないからです。 それは彼が愛する、大嫌いだったけど今は愛しているこの里のために必要な行ないだからです。

2012-04-24 02:02:28
Sin・蝉ミキサー14thインウィディア @sm_14th_Invidia

だから彼は雛たちにお礼を言って、くず鉄をお金に換えて、そして冒険に出ました。 マハラドの手紙にあった【魔女族】から武器を貰うための場所に向かって。

2012-04-24 02:02:53
Sin・蝉ミキサー14thインウィディア @sm_14th_Invidia

【魔女族】は近年になって急に食物連鎖ランキングに登録された新しい種族です。神が作った種族ではなく【悪魔族】と【黒魔法使い族】が子を為したことによって産まれた種族です。

2012-04-24 02:03:10
Sin・蝉ミキサー14thインウィディア @sm_14th_Invidia

大陸の種族はロウ、カオス、ニュートラルの三種類に分類されます。 カオス勢力は“災害”として生まれた生物であり、彼らの《善行》の多くは人に災害を与え神の敵として信仰をより強くすること。

2012-04-24 02:04:00
Sin・蝉ミキサー14thインウィディア @sm_14th_Invidia

でも彼らのおこす災害はバランスが取られています。神を信じていれば必ず勝てるように調整されているのです。【悪魔族】であれば契約に基づき生物の命を力に変えられます。 彼らの《善行》は《人をそそのかし契約をさせて災害をもたらすこと》です。

2012-04-24 02:04:44
Sin・蝉ミキサー14thインウィディア @sm_14th_Invidia

そう、契約さえしなければ悪魔族は無力なのです。 他にも吸血鬼族なら十字架を持ち彼らを招く人間がいなければ影響を及ぼせない、ゾンビ族なら教会の墓所で死体をちゃんと埋葬すれば発生しない、彼らは災害であると同時に信仰があれば必ず乗り越えられる壁なのです。

2012-04-24 02:05:29
Sin・蝉ミキサー14thインウィディア @sm_14th_Invidia

しかし、【魔女族】は【黒魔法使い族】と交わったことによってその制約から解き放たれました。 【悪魔族】は契約をしなければ他者の命を力に変換する能力は使えません。しかし【魔女族】契約に関係なく命を力へと変換することができます。

2012-04-24 02:06:03
Sin・蝉ミキサー14thインウィディア @sm_14th_Invidia

そして二つの種族の《善行》である《人々を誘惑して契約すること》と《己の欲望のために他人に影響を与える魔術を行使すること》の両方を持ちます。

2012-04-24 02:06:38
Sin・蝉ミキサー14thインウィディア @sm_14th_Invidia

初登場から34位に入り、翌年のランキングでは16位まで上がりました。バランスの崩壊を恐れた神は魔女狩り令を発令しました。 様々なロウの種族、2位の【神獣族】4位の【天使族】、19位の【神官魔術師族】など様々な種族が【魔女族】を殺すために動いています。

2012-04-24 02:07:21
Sin・蝉ミキサー14thインウィディア @sm_14th_Invidia

しかし、【魔女族】は数こそ減ったものの今も隠れて災害を起こします。 彼女たちは徹頭徹尾自分のためにしかその力を振るわない。 そして彼女たちの「自分のため」とは「災害を起こすこと」と同じ意味です。

2012-04-24 02:07:49
Sin・蝉ミキサー14thインウィディア @sm_14th_Invidia

しかし彼女たちは魔法の「使うもの」であって「理解し発展させるもの」ではない。 このまま彼女たちの魔法が発達しないということは彼女たちの緩やかな破滅を意味します。 だからこそ人の世に関わるというリスクを犯してまでマハラドに接触をはかったのでしょう。

2012-04-24 02:09:06
Sin・蝉ミキサー14thインウィディア @sm_14th_Invidia

まったく、里を出る船に乗りながらミサキは苦笑しました。 そんな相手の魔法の研究を、魅せられたからという理由で行ってしまうマハラドはなんて冒涜的なんだろう。 自分の親友のことを思うとおかしくなります。

2012-04-24 02:09:46
Sin・蝉ミキサー14thインウィディア @sm_14th_Invidia

そして数々の冒険の末、一つの海と、三つの峠と、五つの街を越えてマハラドの指定したポイントに到着しました。

2012-04-24 02:09:58