或る大学生と美しいニートの話

はぴ @sumiley7

「ごちそさんでした」「えっ、マーリン3グラムくらいしか食べてなくない？」「おなかいっぱいになっちゃった……」「まあ……ならいいけど。マーリンとご飯食べると俺が太る……」「若者はたくさん食べておおきくなりなさい」「伸びるなら縦に伸びたい……」フジマルくんは160ちょいくらい。

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「そういえばマーリン嫌いな食べ物とかない？一応聞いとく」「特にないなあ。一般的な食材なら評価はだいたい等しいね」「えらーい」「えへへー、キミは好き嫌いとかないのかい？」「えー、えーっと、なくはないけど……」「なになに？」「………………ピーマンが嫌い」「…………フッ」「笑ったな！」

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別に根本的にマーリンの食生活が改善したわけじゃなくて、一人の時はマーリンはやっぱりカロリーメイトを齧ってウィダーを啜ってる。

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フジマル君が大学から帰ると普通のアパートには不釣り合いなでっかいリムジンが止まってて、いかにも”金持ちやり手若社長です！！！！”みたいな金髪の男が機嫌悪そうにその車によっかかって煙草をふかしている。（ひえ～やばい人だよ）と思いながら早足で通り抜けようとしたところで声をかけられる

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「おい、そこな雑種」「ざっ……お、オレでしょうか……」「この男を知らぬか」「マっ………い、いや、知らないです」「この我に嘘をつくなよ、命が惜しければな。あまり我に手間をかけさせるな」「ﾋｯ」「ちょ、ちょっと、フジマル君は関係ないでしょー！げほっオエッ、久々に大声出すとしんど……」

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アパート二階の共用廊下の手すりに寄り掛かってマーリンが青い顔でこちらを見下ろしている。「貴様がさっさと出てこないのが悪い！おい、さっさと降りてこい」「す、すぐ、はー、降りるから待ってって」ふらふらと降りてくるマーリンと金髪男を見比べるフジマル君。

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「マ、マーリン…………」「ああ、ごめんねフジマル君ビビらせて。彼はギルガメッシュ、態度は酷く口は悪いが、性格も同様に苛烈なので気をつけなさい」「ええと……ど、ど、どういう関係で」「えーーと、うーーん…………そうだな、えーっと……………ネトゲ仲間」「ねとげなかま」

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「おい、マーリン、さっさとせぬか、この我を待たせるでない」「わかってる、わかってますって王……じゃあね、フジマル君。少し出掛けるが明日には帰ってくるので美味しいご飯を用意して待っててね」 そういってマーリンは手慣れた様子で、リムジンに乗り込んだ。走り去る音は、驚くほど静かだった。

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次の日の夕方、マーリンは平気な顔で帰ってきた。 「ただいま、フジマル君。」「ほ、ほんとに帰ってきた」「何、帰ってきちゃダメだった？」「いや、ううん、でも俺、あの人のこと、や、ヤクザかなんかかと思って震えてたのに」「はっはっは、当たらずとも遠からずかな」

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「そ、それって大丈夫なの？」「心配することはない。ギルガメッシュと私は大学の同期でね、共通の友人の見舞いに行ってたんだよ。私はこんなだからね、いつか行くいつか行く、と言ってるうちに彼の堪忍袋の緒が切れたらしい」「……じゃあ、悪いのはマーリンじゃないか」「……今日の夕飯は何かな？」

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「(露骨に話題そらしたな……)今日のご飯はカレーだよ」「それは本当かい！いやはや、夕食の誘いを断ってそそくさと帰ってきたかいがあった」そう言って無邪気に笑う男のことを、俺はほとんど何も知らない

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ニートマーリンは人間………人間なんだ…………たぶん………おそらく………みたいな微妙な位置にいてほしい。オリジンのマーリンみたいに人外ひけらかしたりしないし、ご飯も食べるし、眠る。でもどこか人間離れした雰囲気もある。

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ニートマーリン部屋の中ににいるとき冬は着る毛布をもふっと着てて、夏はクソダサＴシャツにトランクスとかでうろうろしてる。季節感がないから外出するときは微妙に周囲からずれた服着てるんだけど、どれもすごい高級品かつやっぱり顔がいいからおしゃれに見えるずるい男

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マーリンのお手伝いしてるフジマル君が「もー、明日までの課題があるのに」ってぼやいたら「課題？どれ見せてごらんなさい」っていうから見せたら１からメチャクチャわかりやすく解説してくれたので「！？！？！？」ってなるフジマル

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「マーリンっていつも部屋で一人で何してるの？」「えー……？世界防衛？」「……俺やったことないのだけど、ネトゲって楽しいの？」「楽しいとか楽しくないではないなあ」「もはや中毒では？」「だって、一人ですることもないのだもの」「本読むとかは？ほら、今は電子書籍もあるし」

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「昔は読んでたけどねえ。今はダメだ、目、しょぼしょぼする」「おじいちゃんかよ。じゃーあれだ。映画。借りてくるから一緒に見よ？」「私が一人の時の話じゃなかったっけ？」「あっ……まあ、そこはそれということで」「良い良い、いつでもDVDを持っておいで。だいたい私は暇してるんだから」

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「マーリンはどんな作品がいい？」「なんでもいい」「が一番困るんだけどな」「うーん……だったらあれだ、ベッドシーンがあるやつ」「サイテー」

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アクションを見るフジマル「……ッ(めちゃくちゃ手に汗握ってる)」 ホラーを見るフジマル「うわっ！(ビクッてなる)」 ラブシーンを見るフジマル「…………(無言でそわそわしてる)」 感動モノを見るフジマル「…………ぐすっ(ぼろぼろ泣いてる)」 マーリン(面白いな……)

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「面白かったね！」「うん、そうだね」「特にクライマックスでヒロインが主人公を命を呈して守るところとか……」「ごめん、見てなかった」「なんで！？！？」「キミを見てる方が面白かったから……」「俺は見世物じゃない！」

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マーリンの部屋にテレビはないけど、4つくらいモニターの繋がった超ハイスペックパソコンがあるので映画を見るときはそれを使う。モニターの前にクッション二つ置いてぽふぽふ叩くの、あまりにあざとい。「ポップコーンも買っておいたよ！あとスピーカー新しくしちゃった！」「セレブ……！」

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マーリンとフジマル君のベッドは壁を隔ててすぐ隣。あんまいいアパートじゃないからお互いがベッドに寝てるときに片方が壁を叩くと「こんこん」と聞こえる。その事に気付いた二人が深夜に秘密の会話をモールス信号でするなど。

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「トン」と「ツー」は叩き方で分けてると思って。普通の大学生フジマル君は「SOS」くらいしかできないけど、マーリンはスムーズにすごい長いメッセージを送ってくる。「何何、全然分かんないんだけど―！」『ふふふ、頑張って解読してみたまえ』←壁叩いて遊びながら携帯で通話してるバカップル。

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マーリンが繰り返し送ってくるメッセージを頑張って覚えて、どきどきしながら解読してみたら「おすしたべたい」だったので手巻き寿司パーティーを企画するフジマル君。