或る大学生と美しいニートの話

はぴ @sumiley7

フジマル「それにしてもジキルくん、教え方上手だね。お兄ちゃんなんだっけ？」 ジキル「どうかな、双子だからあんまり兄っていう感じはしないんだけど」 ビリー「へぇ。双子ってどんな感じなんだい？同じ顔がもう一人いるんでしょ？」 ジキル「慣れたよ、もう。あまり顔もあわさないし」#ニート話

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ビリー「でもジキルは顔綺麗だからもう一人いても目の保養になるね？」 ジキル「えっと……」 ロビン「そのすぐ口説く癖良くないんじゃないかねぇ」 ビリー「ロビンは三人いてもいいよ♡」 ロビン「わぁ嬉しくない」 ビリー「フジマルは一人でいいかな……」 フジ「なんで？」　#ニート話

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ビリー君は口説いてるっていうか欧米人的な素直さがあるというか……軽薄というか……すごいさらっと人褒めるよ女の子相手にもこんな感じ　#ニート話

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ジキル「弟は僕と違って、粗暴……いや、えっと明るくて……、不良……自立してると言うか……うん、なんだろう、僕には持ってないものを持ってて、顔はともかくあまり似てないんだ」 フジ「ジキルくんが弟のこと嫌いなのだけ伝わってきた」　#ニート話

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フジ「でもジキルくんの弟ちょっとあってみたいかも、顔似てるけど似てないってなんか面白そう」 ジキル「もしかしたらそのうち会えるかもね、そのうち……」　#ニート話

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勉強会終わって帰り道、マツキヨによるついでに三人を途中まで送っていくフジマル。 ロビン「お疲れさん」 フジ「ジキルくん、今日はありがとう。凄い助かったよ」 ジキル「こちらこそ、お役に立てたならなによりだ」 ビリー「試験終わったら一緒に遊びに行こうね～」　#ニート話

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マツキヨ寄ってシャンプー買って出たところで、「フジマルくん」と声をかけられる。振り返るとジキルが立っていた、街灯の光が眼鏡に反射して表情が読めない。 「あれ、どうしたの？」「実は君の部屋に忘れ物したみたいで……」「え、マジ？取りにくる？」「うん……ごめん」　#ニート話

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二人で歩き出そうとしたところで道の向こうから誰かが歩いてくる。緩めの白いニット、地面に引きずらんばかりの白い髪。徒歩五分のマツキヨに来るだけで肩で息をしている虚弱な姿。彼はゆっくりと呼吸を整えると、顔を上げた。 「忘れ物っていうのは、これかな」　#ニート話

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マーリンが手にしたスマートフォンをジキルに放り投げた。ジキルが慌ててそれを受け取る。「あ、ありがとうございます」「何、いいよ。でも気をつけなさい、キミたちみたいな若い子には大事な物だろう？」「はい、お手数おかけしました。」ジキルがぺこりと頭を下げて踵を返した。　#ニート話

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「さて、それじゃあ帰ろうか、フジマルくん」ふらりとマーリンがバランスを崩しかけたのをあわてて支える。「わざわざ持ってきてくれなくてもよかったのに」「もう一度うちに来てもらうより早いだろう」「そうだけど……あれ、ていうかどこに忘れてあったの？」「……エヘ」　#ニート話

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「俺の部屋に勝手に入った？」「エヘヘ」「どうやって？」「エヘヘヘ」「モー、可愛い顔で誤魔化さない！」「まあ、まあ、いいじゃないか。そうだぁ、次勉強会するときは私も呼んでね。大学生にお勉強おしえるくらいはできるから」「えぇ……寂しがり屋さんだなぁ」　#ニート話

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最初から、全部あいつが悪かったんだ。お人好しで、物知らずで、人を疑うということを何にも知らなくて。あいつが寄せ付けた厄介ごとをどうにかするのは昔から俺の役割だった。どんなに面倒でも、半身を切り捨てることは出来ないから。　#ニート話

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何度も、何度も繰り返して、やがて飽き飽きした俺はやがて一つのことを思いついた。ああ、そうだ。あいつに近づく奴を端から全員排除していけばいいのだと。　#ニート話

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フジマルが学校へ行こうとするとドアからぴょこっと顔出してるマーリン。 「今から学校？」「うん」「ここ最近不審者が近くをうろついてるみたいだから気をつけてね」「大丈夫でしょ、あ、今日三限までだから夕方から鑑賞会する？」「する！ピザとろう」「おっけー」 　#ニート話

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いってきまーす、と元気に階段を下りていくフジマルをしばらく眺めてから部屋に戻るマーリン。カーテンは閉め切られていて、電気もついていないので薄暗い。たくさんのモニターが接続されたパソコンの前に座って、マーリンがよし、と気合を入れる。 「さて、世界の平和でも守ろうかな」　#ニート話

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「ねーロビン」「なんですー？」 「ここ最近このあたり治安悪いらしいよ」「物騒だねえ」「僕今日バイトなんだけど」「ご苦労さん」「夜道怖いから迎えに来て」「オタクはオレの彼女か？」「僕が暴漢に襲われてもいいの？」「自分で何とかしてくれ……」　#ニート話

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でもなんだかんだ人がいいのでビリーのバイト終わりに迎えに行ってあげるロビン。ビリー君は学生街からちょっと離れた路地裏の隠れ家的ダーツバーで働いてると良い。 「うわ、マジで来たの？」「殴るぜ？」「ウソウソ、ありがと色男」「どーいたしまして」#ニート話

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二人でダラダラ喋りながら歩いていると、後ろからもう一つ足音が付いてくる。(気づいてる？)(ああ、ピッタリついてきてやがる)(僕が可愛いからかな……)(は？)(ジョークじゃん。とりあえずこの通り抜けたら人通り多くなるから様子見ようか)(ま、気の所為の可能性もあるし……)　#ニート話

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と言葉を交わしたところでロビンが数メートルくらい吹っ飛ぶ。 「……え？」「まずは一匹」そこでビリーは初めて背後の男にロビンが蹴り飛ばされたのだと気付く。「もう一匹」声を上げるより早くビリーの腹に衝撃が走り、視界がぐるりと裏返る。次の瞬間にはロビンに抱き止められていた。　#ニート話

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「――が、ハッ」「大丈夫か？おい、ちょっとオタクあんまりにも乱暴じゃないですかね。なんか俺達に恨みでも？」ロビンの言葉に男は何も答えなかった。その代わりにポケットから鈍く光るナイフを取り出す。二人の顔からさっと血の気が引いた。　#ニート話

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「おいおい……刃物はちょーっとまずいんじゃねぇの？まずは話し合おうや」「五月蠅ぇなァ、テメェらみてぇのがほんっと目障りなんだよなァ！」ロビンの制止にも聞く耳持たず、男がナイフを振り上げる。ビリーは思わず目を瞑った。だが、それから何秒待っても衝撃はない。#ニート話

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おずおずと目を開けると、真っ先に目に入ったのは黒みを帯びた赤色だった。真っ直ぐ、庇うように伸ばされたロビンの右手から溢れた血が、肘を伝ってビリーの服にも垂れ落ちているのだ。「いっ……づぅ……」「ロ、ロビン！大丈夫！？」「ああ、悪いな、服」「そんなのどうでもいいから！」#ニート話

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男は血の赤にもひるむことはなく、ただ機嫌が悪そうに舌打ちをした。刃を振って血を払うと再度ナイフを振り上げる。今度はビリーは目を瞑らなかった。ただ真っ直ぐに、男を睨み付ける。 その刃が降ろされかけた瞬間、路地に鼓膜を劈く大音量が響いた。クラクションの音だった。　#ニート話