或る大学生と美しいニートの話
続けて場を襲ったのは光だ。強いヘッドライトの光。 「小童ども、乗れ!」一番先に動いたのはロビンだった。一体それが誰なのかはわからなかったが、とりあえずビリーの腕を引いて立たせ、車の方へ向かう。同じ謎なら通り魔よりは安全だと判断したためだった。 #ニート話
2017-03-07 20:22:52「クソッ、覚えてなよ!」車に乗り込む寸前、立ち上がる時にひろっていた石をビリーは男に向かって投げつけた。当たったかは定かではない。それを知るより早く車は走りだしていた。 人心地ついて初めて、乗り込んだのが馬鹿デカいリムジンであることに気付く。 #ニート話
2017-03-07 20:23:32「あの、すみません、助けてくれてありがとうございます……貴方は……」「貴様らごときに名乗るななどないわ!喋らず大人しくしてるがいい!」「あっ……はい……」あれ結局この人もヤバいんじゃね?って不安になるけどロビンは怪我してるしとりあえず大人しくしてる二人。 #ニート話
2017-03-07 20:24:28それから五分もせずに、車から叩き出される。「マーリンに会ったら伝えておけ、『この我に些事を押し付けるとは、次会った時に覚えておくがいい』とな」結局助けてくれたのが誰だったのかもわからず、顔を上げるとそこはフジマルの住むアパートだった。 #ニート話
2017-03-07 20:24:54とりあえずフジマルの家をピンポンするビリー。ロビンの血はもうほとんど止まってるけど顔色はあまり良くない。数秒もすると、ドタバタと慌ただしい音とともに勢いよくドアが開いた。 「ロビン、ビリー、ほんとに来た!」「……ほんとに?」「とりあえずあがって!」 #ニート話
2017-03-10 20:12:05さっきからの超展開に頭をハテナでいっぱいにしながら二人がフジマル宅にあがる。部屋の中央ではぺたりとマーリンが座り込んでいた。 「やあ、待ってたよ。とりあえず応急手当しようか」 マーリンが自分の隣を叩き、ビリーにせっつかれてロビンが腰を下ろす。 #ニート話
2017-03-10 20:13:17マーリン「ザックリだけど傷口は綺麗だよ、あとで病院行こうね」 ロビン「……とりあえず、色々聞きたいんすけど」 マーリン「ん、なーに?」 ロビン「オタク、何者?」 マーリンが包帯を巻く手を一瞬止め、けれどしれっとした顔で再開する。「何者とは、難しいことを聞く」 #ニート話
2017-03-10 20:15:25「あの車の怖い兄ちゃんはオタクの差し金だろ?だとしたらオタクはオレ達が通り魔に襲われたことを知ってたことになる。もし、影で見ていて電話で助けを呼んだとして、それならオタクが今ここでオレの手当てをしてるのがおかしいんだ。あるいは……通り魔がオタクの差し金だったのか」 #ニート話
2017-03-10 20:16:13フジマル「そ、そんなわけないだろ!」 マーリン「ふふ、いいんだよフジマル君。面白い推理だね、ミステリー作家になれるんじゃないか?でも、証拠はどこだい」 ビリー「ねえこの人マジで犯人じゃない?」 ロビン「うん……割と適当言っただけなのに驚いてる……」 #ニート話
2017-03-10 20:16:59フジマル「ま、マーリンがそんなことする訳ない!確かにマーリンは胡散臭いクズだけど、人を傷つける……ような……ことは……」 ビリー「ボリュームダウンしてるけど」 マーリン「私はミステリアスなお兄さんだからねえ。でも、あんまりはぐらかしてるのも良くないなあ」 #ニート話
2017-03-10 20:17:39マーリンがわしわしと白い髪をかき回すと、一枚の白紙のメモをロビンに渡した。「ここに私に見えないように、好きな言葉を書いてみて。後ろ向いてるからさ」 ロビンが怪訝な顔をしながらも頭に浮かんだ一節を書き落とす。背中を向けたマーリンが、肩を揺らした。「ナーサリー・ライム?」#ニート話
2017-03-10 20:19:57「ナ……え?」「ああ、マザーグースと言った方がいいのかな」マーリンの言葉にロビンが目を丸くする。その表情さえ、マーリンには見えてはいない。「好きなのかい?」「ノーコメント」「だれが駒鳥殺したの」ロビンが舌打ちをしてメモを放り投げる。 #ニート話
2017-03-10 20:21:52ビリー「……メンタリスト?」 フジマル「透視能力者!?」 ロビン「いやさすがにそりゃないでしょ、漫画じゃあるまいし……」 フジマル「後者、当たらずとも遠からずかな」 ロビン「……はぁ」ロビンが額をおさえて深く溜息をつく。「オレァ、夢でも見せられてるんですかね」 #ニート話
2017-03-10 20:22:35「私の能力は透視を行うこともできるけれど、それだけではない。この力は距離も遮蔽物も一切関係ない。どんなに距離が離れていても、そうだ、たとえキミたちが地球の裏側にいたところで私は全てを見透かすことができる。私の目はそれを可能にするんだよ」 #ニート話
2017-03-10 20:23:27「この能力は生まれついてのものでね、物心ついた時には実際にこの目で見える視界と遠くを見る視点を切り替えれるようになった。まあ制御できるまで時間がかかったけどね……この能力を使って私は色々なものを見ることが出来た。ああ、とはいえ覗きなんてしてないよ、ほんとほんと」 #ニート話
2017-03-12 21:09:56「というのも、この能力とて万能ではないからだ。第一に、狭い範囲を見ると疲れる」「広いところより?」「航空写真をイメージしてくれたまえ、ほら、地図みたいにさ。狭い範囲を見るには拡大、拡大、拡大をしないといけない。さっきの透視は正直かなり疲れた」 #ニート話
2017-03-12 21:10:35「第二に、検索なんかは出来ない。つまり、私が日中キミを探すとして、その時は大体の目星をつけてからしらみつぶしに探す必要がある。それこそ、上空から探すようなもんだ。まとめると、ちまちました探し物なんかは出来ないってわけだ」 #ニート話
2017-03-12 21:11:28「最近はこの近くに不審者が出るってことで、能力を使って簡単にお家からパトロールをしてた所、偶然キミたちのあとを怪しい人影がつけているのを発見したので、電話で救援を呼んだのさ」マーリンが大きく息を吐く。「以上、私は怒涛の長台詞で疲労困憊だが、納得してもらえたかな?」 #ニート話
2017-03-12 21:12:36ロビン「納得……はしてねぇけど」 マーリン「あらら」 ロビン「超能力とか幽霊とか信じないタチなんでね。まあバカは信じてるみたいだけど」 フジマル「マーリン……すごい……!」 ロビン「バカは信じても俺は信じてねえんで」 ビリー(二回言った……) #ニート話
2017-03-12 21:13:59「でもまあ、いい歳した大人がそんな細かい設定作って語ってる方が信じたくないんで、ま、そういうことでいいですわ」ロビンがやれやれと首を振った。 「僕は何でもいいんだよね。大事なのは結果〜」「オタク、こういうとこ心広いっつーか……あんま深く考えねぇよな……」 #ニート話
2017-03-12 21:14:36マーリン「まあ、話の真偽なんてここで話してもしたかたないしね」 ロビン(噛んだ……) マーリン「大事なのは事件の犯人、真相じゃないか?」 ビリー「そう、それだよ!(バンッ)」 フジマル「(ビクッ)」 #ニート話
2017-03-12 21:15:33ビリー「もーーーほんとムカつく!あいついきなり僕のお腹蹴りやがったんだよ!?」 フジマル「ビリーも怪我したの?平気?」 ビリー「平気じゃない!けど平気!僕は痛かっただけだけど、ロビン、は」 ロビン「うえっ、おいおいおい」 #ニート話
2017-03-12 21:17:15ビリーの大きな瞳からぽろぽろと涙がこぼれる。 ビリー「血、僕、びっくりして」 ロビン「ああああ悪かったって!平気だから!血も止まってるし、な」 フジマル「ロビンが泣かせた……」 ロビン「風評被害!」 ビリー「うええ……」 ロビン「マジ泣きかよ!」 #ニート話
2017-03-12 21:18:31ロビン「わーった、わーったから!怖かったもんな」 ビリー「あんな奴こわくはなかった……」 ロビン「そ、そうか……」 ビリー「でも、僕のせいだ……」 ロビン「あー……そう思うんだったら、明日からの講義のノートうつさせて貰ってもいいか?」 #ニート話
2017-03-12 21:20:07