- n_takahashi_sr
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俺は90年代後半に最初のフランス留学をしたけれども、国民戦線の候補がこれだけの支持を集めるというのは本当に隔世の感がある。今でも信じられない。 フランス大統領選、ルペンがリード拡大 第1回投票世論調査|ニューズウィーク日本版 newsweekjapan.jp/stories/world/…
2017-03-03 23:40:25マリー・ルペンが親父のハード極右路線から距離を取るようにしたという事実をやたらに強調して国民戦線はもはや極右ではないということを言う日本の記事もあるようだが、あの政党とその支持者にどういう欲望が備給されているのかが問題であって、掲げる政策をチラ見した感想など当てにならない。
2017-03-03 23:42:43人種差別的欲望がそこにあることは明白であるとしても、しかし国民戦線の率いているような運動が実はそういう否定的な力だけでは動かないことに注目しなければならない。ここで補助線としてブルーノ・メグレという政治家の名前を挙げよう。
2017-03-03 23:45:06メグレはルペンの父の側近で一時期は国民戦線のナンバー2だった。だが結局路線対立があって、国民戦線を抜けた。メグレの主張は基本的に反移民だが、ルペン父と違ったのは反EUではなかったこと。メグレは国民戦線を抜けたあと政党を作ったが、その政党は「ヨーロッパにはウィ」と言っていた。
2017-03-03 23:47:52しかしメグレの路線は全然拡大しなかった。俺はちょっと意外だった。ソフトなこの路線の方が受け入れられ易いのではと思ったから。だが段々その理由が分かってきた。
2017-03-03 23:48:59人間は意外に否定的なものだけでは動かない。積極的なものがなければ動かない。そういうことではないか。人種差別的欲望から反移民の感情を抱いている人はたくさんいるだろうが、それだけを肯定されてもあまり力にはならないのであって、積極的なものが打ち出されていなければいけない。
2017-03-03 23:51:17では反EUにおける積極的なものとは何かというと、「主権を我が手に取り戻す」ということであろう。「フランスのことはフランス人が決める」。これは実に積極的な主張なのであって、これこそがメグレにはなくて、いまの国民戦線にはあるブースターではないか。
2017-03-03 23:53:01国民戦線の支持拡大の背景には、その人種差別的欲望の表現をソフト化だけでなく、同党が実は積極的な主張を持っていたことがあるように思わえる。するとここからいかなる抵抗運動が必要であるのか、その方向性も見えてくる。
2017-03-03 23:54:52ブレグジットもトランプの選出も、「主権」というこの古い概念がずっと問題になっていた。自分たちで自分たちのことを決められないじゃないかという気持ちがそこにはある。これ自体は真摯な訴えである。問題はこの訴えを受け止める受け皿が排外的なものになってしまうことだ。
2017-03-03 23:56:48もちろん「自分(たち)のことは自分(たち)で決める」という発想は問題なしとはできない。そんなことは可能なのかと哲学的に問うことも必要である。だが、この発想と気持ちには政治がきちんと答えなければならないはずだ。そして答えられていない。だからその発想と気持ちが排外主義に利用される。
2017-03-03 23:59:42反グローバリズム云々で問題になっているのは、主権の行使をどう担保するか、簡単に言えば、政治の決定プロセスへの参加および参加の感覚をどう実現するか、ということだろう。排外主義がこの問いに最も単純かつ危険な解を提示している。排外主義からこの問いを奪還しなければならない。
2017-03-04 00:02:42だからブレグジットにせよトランプにせよ国民戦線にせよ、そこにある排外主義を単に非難したり危険視したりしているだけでは決定的に不十分だということだろう。主権を巡る問いをそこから奪還しなければならない。
2017-03-04 00:04:36「主権」という概念が21世紀にもなってこんなに問題になるとは思ってもいなかった。しかし今はこの概念と向き合わねばならない時代だ。
2017-03-04 00:06:06俺はこの数年間「主権」を立法権で行使することを巡る近代政治哲学の諸問題をずっと論じてきたけれども、今のこの状況を考える上で、そこまで戻って考えることはとても大切だと感じる。
2017-03-04 00:10:10