ロンリー・アカギ

劉度 @arther456

◇◇◇◇◇◇◇

劉度 @arther456

（これからツイッター小説を投下します。TLに長文が投下されますので、気になる方はリムーブ・ミュートなどお気軽にどうぞ。感想・実況などは #ryudo_ss をお使いいただけると大変ありがたいです。忙しい方はtogetterまとめ版をどうぞ。それでは暫くの間、お付き合い下さい）

劉度 @arther456

【ロンリー・アカギ】

劉度 @arther456

「こちらが今回の輸送物資のリストです」「Thanks！確かに受け取ったヨー」33地区の金剛さんが、私のリストにサインしてくれました。あとは彼女が積み荷をチェックしてくれれば、タウイタウイから始まった護衛船団の長旅もようやく終わりです。1

劉度 @arther456

「Checkには3時間ほどかかりマース。それまでゆっくりしていくといいネー」「ええ。横須賀に出て、お店を回ってみようと思ってます」「Good idea！ゆっくり観光していきなサーイ！」海の上からチラっと見ただけでも、横須賀はタウイタウイよりずっと活気に溢れてました。楽しみね。2

劉度 @arther456

それから、諸々の手続きを済ませて、鎮守府を出ました。「See you!」「ええ、また後で」金剛さんにお辞儀をして、私は街に繰り出しました。……うーん。ちょうどお昼だけど、思ったよりお腹が空きませんね。お腹を空かせるついでに、少し辺りを歩いて見ましょうか。3

劉度 @arther456

横須賀に来るのは初めてなんですよね。最初は横浜の中華街に行こうと思ったけど、33地区は中華街からけっこう離れてるみたい。そうすると、このあたりで美味しいご飯を探すしかありませんね。グルメと噂の33地区の提督にお店を聞ければ良かったんですけど、今日はご不在でした。4

劉度 @arther456

まあ、自分で探すのが一番楽しいし、それでいいかな。そう思いながら大通りを歩いたけれど、並んでるのは小洒落た高いお店ばっかり。味はいいんでしょうけど、独りで入るお店じゃないし、そういう気分でもないんですよね。なので、適当な細い道に入ってみましょうか。5

劉度 @arther456

細道には、表通りから隠されたように、昔ながらの横須賀の街並みが広がってました。うん、このちょっとごちゃついた感じ。これなら期待できそうです。こういうところに安くて美味しい、穴場の店っていうのが隠れてるんですよ。まあ、ハズレはそれ以上なんですけれども。6

劉度 @arther456

早速、どこからか炭の匂いが漂ってきました。誘われるがままに歩いてみると……これは、焼き鳥屋さんでしたか。ランチサービスとかはやってないみたいです。昼から焼き鳥は、流石にね？でも、匂いのお陰で少しお腹が空いてきました。そろそろ食べるものを決めましょうか。7

劉度 @arther456

すぐ目の前に一人鍋ランチのお店があります。でもパスです。鍋ならタウイタウイで毎日食べてますから。それに白米って気分でもないんですよね。船の上だとお米ばっかり食べてましたから。陸の上だからこそ食べられるものが欲しいです。……ああ、そうだ。あれがありました。麺類です。8

劉度 @arther456

真水を贅沢に使って茹でたパスタ。これです。これは船の上じゃあ中々お目にかかりません。そうと決まれば早速、脳内お食事電探をパスタ向けに調整しないと。パスタ屋となると……ううん、この細道には見当たりませんね。大通りに戻りながら、お店を探してみましょう。9

劉度 @arther456

大通りに向かって少し進むと、ありました。レストランの看板です。『レストラン　PyaPya』知らないお店ですね。最近できたんでしょうか？お店は新しめな感じで、お昼時なのにあんまり人がいません。すぐに食べられるのはいいんですけど……味は大丈夫なんでしょうか。ちょっと迷います。10

劉度 @arther456

ええい、入っちゃえ。私はお腹が空いてるんです。「イラッシャイマセー」中に入ると、色白のウェイトレスさんが出迎えてくれました。外国人でしょうか？珍しい。「ヲ一人様ですか？」「ええ」「ヲ客様一名様ご来店でーす」「ピャー」カウンターの中から、返事が聞こえてきました。11

劉度 @arther456

「こちらの席へドゾー」片言の日本語でカウンター席に通されました。……気になるところはありますけど、今はご飯です、ご飯。メニューを眺めてみましょう。値段は650～900円まで。ランチタイムは全てのメニューにスープとバゲットがセットでついてくるみたいです。中々のボリュームですね。12

劉度 @arther456

パッと目に付いたのは、一番安いペペロンチーノ。でも次はいつこのお店に来られるか分かりません。ここは、出し惜しみしないで、好きなものを食べるのが上策でしょう。「すみませーん」「ヲッ」「ランチセットで、ほうれん草とキノコのクリームソースパスタを下さい。大盛りで」「ヲヲ盛りですね」13

劉度 @arther456

オーダーを受けたウェイトレスが、キッチンに向かって呼び掛けます。「ヲーヲー、ヲヲヲッヲヲ、ヲッヲッヲッ」「ピャピャッピャッピャッー」何を言ってるか分かりません。店内用語でしょうか？とにかくオーダーは通ったみたいで、キッチンで人が動き始める気配がしました。14

劉度 @arther456

さて、注文が済んだこの瞬間が、一番暇なんですよね。お客さんがいないからすぐに料理は出てくると思いますけど、その間、なんとか気を紛らわせないと。「不知火、おいしい？」「美味しい、と思います」空腹で神経が研ぎ澄まされてるから、他のお客さんの話も丸聞こえです。15

劉度 @arther456

「良かった。約束してから遅くなっちゃったから、これで不味かったらどうしようかと思ったよ」「提督の選んだお店であれば、間違うことはないかと思います」おや、あちらの席の方々は、提督と艦娘のようですね。見たところ、艦娘の子は駆逐艦。制服からして、陽炎型ですね。16

劉度 @arther456

「そういうけど、食べ物は好き嫌いもあるからさ」「……ご安心下さい。この料理は、不知火の口に合っています」「そっか、良かった」提督は安心した様子で笑っています。美味しいとは一言も言わないのが気になるんですけど、気を使っているんでしょうか。17

劉度 @arther456

「失礼します。セットのサラダです」前菜がやってきました。カットしたレタス、トマト、キュウリにドレッシングをかけた、ごく普通のサラダです。パスタが来るまでこれで気を紛れさせましょうか。レタスを1枚、フォークに刺して口の中へ。噛み締めた葉っぱから、瑞々しさが口の中に広がります。18

劉度 @arther456

……うん、普通のサラダですけど、それが美味しいです。やっぱり新鮮な野菜はたまりません。ちょっとしなびたキャベツをドレッシングとマヨネーズで味をごまかしたものとか、漬物とか、船の上じゃそんなものばっかりですからね。これは陸の上のお店の特権です。19

劉度 @arther456

「一番おいしかったもの？うーん……」おや、向こうのテーブルの話が進んでますね。「秋刀魚の塩焼き、かなあ」「……質素ですね」いやいや、魚料理は貴重でしょう。どれだけ贅沢してるんですかあなたたち。「姐さんに引き取られて、初めて食べた料理だし」……ああ、そういう。20

劉度 @arther456

「そういえば、提督のご家族は……失礼しました」ここからでも分かるぐらい、はっきりと提督の顔が曇りました。出しちゃいけない話題だったみたいですね。「あはは……まあ、気にしなくていいよ。みんな死んだし」一気にテーブルの空気が重たくなりました。これは、まずい……。21

劉度 @arther456

「失礼します。セットのバゲットをヲ持ちいたしました」ウェイトレスの子がバゲットを持ってきました。「えっ、あ、どうも」意表を突かれた提督は、驚きながら焼きたてのバゲットを受け取りました。場の空気がうやむやになって、仕切り直しです。良かったですね。22