メニイ・タイド・リビングデッド・アンド・ア・コンクリート・グラッジ　＃１

劉度 @arther456

◇◇◇◇◇◇◇ ←九十一式徹甲弾

劉度 @arther456

（これからSSを投下します。TLに長文が投下されますので、気になる方はリムーブ・ミュートなどお気軽にどうぞ。投下中はTLを余り見ないので、感想・実況などを #ryudo_ss に書いて頂けると、後でチェックして小躍りします。では、宜しければ暫くの間お付き合い下さいませ）

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「うおあああああ！？」空母棲姫の悲鳴が夜の海に響き渡った。去年の秋からマリアナを探し続けて、とうとうトラック泊地に迷い込んだ空母棲姫は、泊地艦隊と応援部隊にこれ以上ないほどボコボコにされ、敗走している最中であった。 1

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「待てぇーい！ここで会ったが百年目！首おいてけじゃ！」追撃部隊の先頭に立つのは利根。20.3cm三号砲を撃ちながら、ボロボロになって逃げる空母棲姫を追いかける。「何なのこれー！？敵はパラオ奪還でマリアナにはいないって聞いたのに、どうしてこんなに集まってるのー！？」 2

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「なーにがマリアナじゃ！それは去年の話じゃし、ここはトラック泊地じゃぞ！」「嘘、マジ！？ちっくしょう空母水鬼の奴、私に嘘教えやがったな！」「観念して降参せい！そりゃあ！」砲撃が空母棲姫の背中を直撃！「グワーッ！」機関損傷、速力低下！ 3

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「よし、その艦貰った！」だが、次弾を装填する利根に、通信が入った。『利根ちゃん、すまない！追撃は中止だ！』「何じゃと！？」『すぐに戻ってきてくれ！』「しかしあともう少しで奴を仕留められるのじゃぞ！？」獲物を目の前にしての撤退命令。納得できるはずがない。 4

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だが、利根の不満は提督の一言で覆された。『そいつは囮だ！今、トラックが空爆を受けてる！』「なんじゃと！？」「何だって！？」思わぬ知らせに利根が、そして空母棲姫までもが驚愕する。『夜が明ける前にトラックに戻らないと！だから、追撃は中止だ！』 5

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「……し、仕方あるまい！今日のところは、このぐらいで勘弁しておいてやるぞ！」通信の間に既に逃げ初めていた空母棲姫の背中に、利根は捨て台詞を投げかける。「それはこっちのセリフだ！覚えていろーっ！」空母棲姫も捨て台詞を吐いて、夜の海へと消えていった。 6

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【メニイ・タイド・リビングデッド・アンド・ア・コンクリート・グラッジ】＃１

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利根たちが帰還する一方、彼女が所属する横須賀鎮守府第３３地区指揮艦『蔵王』では、提督が泊地との通信を続けていた。「こちら横須賀３３地区！トラック泊地、応答願います！」『こちらトラック泊地だ！どうぞ！』時折、音声に爆音や銃声が混じる。夜間から激しい攻撃を受けているようだ。 7

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「敵機動艦隊は発見できましたか！？」『駄目だ！敵機は東から来てるんだが、見つかんねえ！奴ら、夜間長距離爆撃なんて器用なことやってるみたいだ！』東から、と聞いて提督は思案する。今、自分たちがいるのもトラック泊地東方だ。敵機動部隊は近いところにいるのかもしれない。 8

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トラックからレーダーで見つからない距離、それでいて夜明けには艦隊がトラックに到着する距離。更に空母棲姫攻撃のために出撃した自分たちに見つからい場所。海図を睨むと、その条件を満たす場所は３ヶ所あった。「タウイタウイの『野見宿禰』とラバウルの『饒速日』に通信を！」 9

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回線はすぐに繋がった。『ごっつぁんです！タウイタウイ第３艦隊『野見宿禰』艦長、飯田でごわす！』『ラバウル第５艦隊『饒速日』艦長、物部である』「横須賀第３３地区『蔵王』艦長、東郷です」『何事じゃ？さては早くも祝勝会の相談であるな？』「違います」『あれっ』 10

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「トラック泊地から緊急通信が入りました。現在、当該泊地は敵機動部隊の夜襲を受けています」モニタの向こうの勝利に緩んだ顔が、驚愕の表情に様変わりした。『そんなっ！？なら、おい達が今ぁ追い詰めた空母棲姫は……』「囮、でしょう」『ぬう……っ！』 11

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『やれやれ、敵の戦術にこうも呆気無く引っかかるとは、やはり後方の輸送任務とは訳が違うようじゃのう？』ラバウル物部大将が馬鹿にしたような溜息をつく。気に障る言い方だが、事実だ。「我々はこれより反転、トラック泊地を攻撃する敵部隊を見つけ出し、これを撃破します！」 12

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『敵の位置は掴んでおるのか？』「正確な位置は分かりませんが、予測出現地点は三箇所まで絞れました」通信ウィンドウにマーカーの引かれた地図が写る。この３箇所のうちのいずれかに敵艦隊がいるはずだ。「よってこれから艦隊を３つに分け、進撃を……」 13

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『待つでごわす』タウイタウイ飯田大将が口を開いた。『前の戦で疲弊した艦隊を３つに分けるのは得策じゃぁなか』「承知の上です。ですから敵を発見した艦隊はまず牽制攻撃に徹し、他２艦隊の到着を待って……」『うんにゃ、そいじゃ遅せ』ルートの一つに、☓印が記された。 14

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『ここらん海は、波と渦潮が酷ぇ。おい達でも渡るのは難しい海じゃ。深海棲艦も近づきたかぁ無かに決まっとろうよ』「本当ですか！？」『じゃんさい！』ここは外地組の方がよく知っている海だ。海図だけでは分からないこともある。それを知る者がいたのは、提督にとって幸運であった。 15

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『全く。やはり現場を知らぬ者がいると苦労が絶えんわ』二本に減ったルートの内、更に一本に☓が書かれる。「物部大将？」『ここは空母棲姫の逃亡想定ルートの一つじゃ。我はあの姫がここを通ると思い、潜水艦隊を伏せておいたのじゃが……今、連絡があった。敵は見当たらんとよ』 16

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「……お二人とも、ありがとうございます！」『礼は要らぬ。それよりはよ号令せい。兵は神速を尊ぶ、であろ？』「はい！オペレーター妖精さん、全艦に通達！これより進路を反転、ポイント25,63を通りトラック方面に進撃！途上の敵艦隊を撃破し、トラック泊地を解放します！」 17

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「了解です！」途端に、艦隊が慌ただしくなった。それぞれの指揮艦にたった今まで戦っていた艦娘たちが帰投し、僅かな休息と補給を得る。その間に指揮艦隊は反転、一路トラックを襲う敵機動部隊に向けて前進し始めた。「隼鷹たちの様子はどう？」僚艦の収容を終え、提督が聞いた。 18

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「それが……龍驤さんは大破。大鳳さんと隼鷹さんは中破。他の皆さんは小破か無傷ですが、艦載機の損耗が激しく、稼働率は５割を下回るかと……」つまり、航空戦力が半減している。厳しい状況だ。「中破以上の３人は艤装解除。稼働する艦載機は、他の艦に集中させて」 19

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「制空権はともかく、航空打撃力が減ってしまいますね……」それを聞いた大和が呟いた。確かにその通りだが、無理な出撃で余計な犠牲を出すわけにはいかない。「次の戦いは、戦艦の長距離艦砲射撃が決め手になると思う。大和、頼むよ」「え、私が出るんですか？」「……えっ？」 20

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見れば大和は艤装はおろか、戦闘服すら来ていない。そもそも第一種戦闘態勢なのに、艦娘が艦橋にいる時点でおかしい。「あの、出撃準備は」「え、提督、いるだけでいいって言ったじゃないですか？」「時と場合にもよるよ！早く準備しなさいこの重要塞ホテル！」「マジですかぁ！？」 21

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