メニイ・タイド・リビングデッド・アンド・ア・コンクリート・グラッジ#2

大和初出撃
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劉度 @arther456

◇◇◇◇◇◇◇ ←九十一式徹甲弾

2015-02-28 21:00:10
劉度 @arther456

【メニイ・タイド・リビングデッド・アンド・ア・コンクリート・グラッジ】#2

2015-02-28 21:01:10
劉度 @arther456

(これからSSを投下します。TLに長文が投下されますので、気になる方はリムーブ・ミュートなどお気軽にどうぞ。投下中はTLを余り見ないので、感想・実況などを #ryudo_ss に書いて頂けると、後でチェックして小躍りします。では、宜しければ暫くの間お付き合い下さいませ)

2015-02-28 21:03:03
劉度 @arther456

トラック諸島、東部海域。真夜中だというのに、ここは今、真昼のように熱い空気が滾っていた。互いの姿もロクに見えないまま艦載機同士のドッグファイトが起こり、投下された爆弾が水柱を、あるいは火柱を上げる。熱戦の続く海域に向けて、更に深海棲艦たちが西進してくる。 1

2015-02-28 21:05:44
劉度 @arther456

「敵艦隊発見!先頭は、重巡リ級フラッグシップです!」僚艦の扶桑の声を聞き、あきつ丸は腰の刀の鯉口を切った。夜は妖魔の世界ではあるが、海上では自分の式神たちの援護は望めない。この関孫六だけが頼りだ。「千代田。夜戦に突入するぞ、下がれ」「はい!」 2

2015-02-28 21:08:57
劉度 @arther456

からくり箱型航空甲板を展開させ、航空機を収容した千代田が後退する。「あきつ丸より『水垣』へ。我、夜戦に突入す。千代田を収容されたし」『『水垣』より第二揚陸艦隊旗艦、あきつ丸へ。了解。初めての夜戦だ、訓練は覚えているな?』「無論だ」 3

2015-02-28 21:12:17
劉度 @arther456

最上が刀を抜き、扶桑が砲を敵に向ける。「海の上でも夜戦のやり方は変わらん」『夜戦要諦、第一箇条』「先手必勝!」扶桑の背の41cm砲が火を吹いた。向かってくる敵艦隊は左右に散開、そこにあきつ丸と最上がそれぞれ刀を構えて突進!まずは手近なイ級を斬りつける! 4

2015-02-28 21:15:29
劉度 @arther456

他の艦がこちらに砲を構える前に、あきつ丸は素早くリ級の懐に飛び込む。リ級が砲から格闘に移ろうと判断する前に、あきつ丸は関孫六の刃をリ級の胴に押し当てる。そのまま、一閃。リ級の上半身が赤い血を撒き散らしながら宙を舞った。残りの軽巡が狙いを付ける前に、高速後退する。 5

2015-02-28 21:18:41
劉度 @arther456

「扶桑!」敵陣から高速退避しながら、あきつ丸は叫んだ。「了解!主砲、副砲、撃てぇーっ!」重厚な砲塔から放たれた砲弾は、瞬く間に敵艦隊を討ち果たした。「最上、怪我は?」「ナメているのか?」鮮血を滴らせた刀を握る最上は無傷。損害無しで第一波を退けた。これ以上ない戦果だ。 6

2015-02-28 21:21:58
劉度 @arther456

『気を抜くな!上空、来ているぞ!』指揮官の声。同時に、頭上から風切音が降ってくる。三者は散開、直後、爆撃が叩きつけられた!「第二波?早すぎる」最上が訝しんだ。先程の第一波が目論見通りに夜戦に持ち込んでいたら、巻き添えを食らうタイミングだ。 7

2015-02-28 21:25:11
劉度 @arther456

辺りを見渡せば、やはり味方の誤爆を受けたであろう深海棲艦が多数見つかった。「おかしい……」深海棲艦とて仲間意識は持っている。味方を巻き込むような攻撃を積極的に行うことはない。あきつ丸は先程斬ったリ級の表情を思い出していた。殺される直前だというのに、全くの無表情だった。 8

2015-02-28 21:28:24
劉度 @arther456

「術を、かけたか」そうとしか考えられなかった。統制のとれすぎている軍隊、損害を顧みない戦略、自分の死すら厭わない深海棲艦。何者かが彼女たちの自我を奪い、操っているとしか思えなかった。だが、誰が?そこから先の思案は、指揮艦から入った通信に掻き消された。 9

2015-02-28 21:31:40
劉度 @arther456

『あきつ丸。舞鶴艦隊から救援要請だ。援護に回れ』「了解した。最上、扶桑、舞鶴艦隊に合流するぞ」「分かった」進路を変える。その後ろでは、ブイン所属の指揮艦が爆撃を受け炎上、沈没しつつあった。敵の我が身を省みない戦術に対して、こちらの旗色は悪い。 10

2015-02-28 21:34:27
劉度 @arther456

「些か面倒だな」あきつ丸としては日本軍が何人討たれても何とも思わないが、ここでトラック泊地が壊滅するのは歓迎できなかった。トラックが陥ちれば戦線は縮小する。まだ日本には本土よりも南洋に目を向けていて貰いたかった。「……仕方がない」ため息を付き、懐に手を差し込む。 11

2015-02-28 21:37:42
劉度 @arther456

取り出したのは、小さな木像だった。長年海水に浸かっていたせいで、原型が判別できなくなるほど黒ずんでいる。だが、この像に宿った強大な神性は、木像が風化消滅することを許さないでいた。「奴を呼ぶのか」隣を走る最上が木像に気付き、あきつ丸に呼びかける。 12

2015-02-28 21:40:53
劉度 @arther456

「海軍が余りにも頼りないのでな。それに、奴と一度は顔を合わせておいたほうがいいだろう」「そうだな。奴らが肝を冷やすのを、楽しみにしよう」あきつ丸は木像を握り締め、呼びかけるように呪文を紡ぎ始める。声は宿った魂を通して、彼方へと響く。遠く、深い水底へと。 13

2015-02-28 21:44:04
劉度 @arther456

モニタの向こうの空が、徐々に明るくなっていた。夜明けが近い。「敵の機動部隊はまだ見つからないの……!?」全軍でトラック泊地へ反転する提督は、焦っていた。トラック泊地まであと30海里。目と鼻の先といってもいい。これ以上近づけば、航空戦ではなく砲撃戦の距離だ。 15

2015-02-28 21:47:34
劉度 @arther456

恐らく敵の作戦は、夜間爆撃で混乱を与え、夜明けと同時に水上打撃部隊が泊地に突入、制圧するというものだろう。囮に戦力の大部分、特に空母部隊を釣り出されたトラック泊地では防ぎきれない。「まさか、もう……」敵はトラック泊地に突入してしまったのだろうか。 16

2015-02-28 21:50:45
劉度 @arther456

その時、艦橋にブザーが鳴り響いた。「先鋒、『野見宿禰』より入電!敵機動部隊を発見とのこと!」「よしっ!」間に合った。提督は拳を握る。だが、続く報告を聞いて冷や汗が吹き出した。「敵の構成は……空母棲鬼3、戦艦ル級改!他、空母ヲ級が多数とのこと!」 17

2015-02-28 21:53:57
劉度 @arther456

「棲鬼3!?何かの間違いじゃない!?」「ですが、そう報告されています!」「鬼!?それとも姫!?」思わず聞いたが、意味のない問いだった。どちらの艦載能力もヲ級の数倍であることに変わりはない。「鬼です!」弱いほうが3匹、と聞いても気休めにしかならなかった。 18

2015-02-28 21:57:09
劉度 @arther456

「全部隊に通達!敵機動部隊を発見!空母、軽空母部隊は直ちに抜錨、航空機を展開せよ!」妖精さんたちが周囲の艦隊に打電を始める。「敵の航空戦力は強力である!駆逐艦、軽巡は対空砲撃に専念せよ!」「棲鬼の話はしなくていいんです?」「いい!どうせ信じてくれない!」 19

2015-02-28 22:00:23
劉度 @arther456

『瑞鶴?出てもいいの?』「お願い、翔鶴姉!」『蔵王』からは翔鶴が抜錨した。烈風のみを装備し、防空に専念するよう伝えてある。そして、空母に続くのは水上部隊。「航空攻撃の後、重巡、戦艦は前進、敵を攻撃する。我が部隊の大和に続け!」その一言で、艦隊の纏う空気がざわついた。 20

2015-02-28 22:04:05
劉度 @arther456

『大和じゃと!?』『マジかよ、アンタ、大和ホルダーだったのか!』『フッハッハッハッ!大和の出陣か!諸君、この戦、勝ったぞ!』『大和……5時間……MNB……ウッ頭が』寄せ集め艦隊の士気がにわかに盛り上がった。伝説の艦娘と共に戦えるのだ。海軍にとって、これほど名誉なことはない。 21

2015-02-28 22:07:23