第2回Twitter小説大賞(windcreatorの応募候補作まとめ)

まとめたのは、自作(3/5時点の1130作)からtwitter小説大賞向けに自選した約30作です。 文頭を赤くした作品を投稿します。 『第2回twitter小説大賞』3/11の13時締切 続きを読む
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とおる6th @windcreator

には「絶対時感」がある。今が何時何分何秒なのか、ハッキリ分かってしまう。日本標準時で。これは寝ていても全くズレない。修学旅行でもズレなかったし、漫画や小説に没頭していてもズレない。なのに、君に会っている間は狂いっ放し。 #twnovel

2009-11-28 00:51:50
とおる6th @windcreator

草が嫌いだった。ファミレスでは禁煙席。喫煙スペースには近づかない。身体には毒で、お金も掛かる。服にだって髪にだって臭いが染みる。良いことなんて、一つも無い。煙草は嫌いだ。嫌いだったんだ。いつも煙草を吸っていた君と離れてからは、煙草を吸わずにはいられなくなった。 #twnovel

2009-12-06 07:29:52
とおる6th @windcreator

度寝禁止令が公布された。特に、二度寝常習犯としてマークされていた俺には「幼馴染法」が適用され、毎朝隣の家の幼馴染が俺を二度寝させないようにすることが義務付けられたらしい。隣の家から目覚まし音が響く。俺は今日も、彼女が慌ただしくやってくるのを目をつぶって待った。 #twnovel

2009-12-09 05:08:26
とおる6th @windcreator

父の作った砂時計がある。ところが祖父は、極端に不器用な人だったらしくて、肝心なくびれた部分が塞がってしまっている。何でそんなものが大事そうに飾ってあるのか、祖母がそっと教えてくれた。「あなたと離れていると私の人生はこうなってしまう」そう言って口説かれたの、と。 #twnovel

2009-12-11 06:59:07
とおる6th @windcreator

は生まれてからずっと、ある男に養われている。男は私に衣食住を与え、家庭教師を付けて教育し、代わりに私をモデルに絵を描いた。物心ついた時には私は人形のように「ただ在る」ことを身に着けていた。毎日毎日、男は私を描き続ける。私はまだ、彼の絵を見たことがない。 #twnovel

2009-12-16 17:21:13
とおる6th @windcreator

んな人にも、心を引き裂かれる一言がある。そこを切り裂けば死をもたらす死線のように、その言葉を突き刺せば人は簡単に心砕ける。不幸にも私にはそれが見えた。人の心の一番脆い部分が。ある日、私は力を忌み嫌うことを止めた。浮かぶ言葉の逆が励ましになることに気付いたのだ。 #twnovel

2009-12-29 11:44:38
とおる6th @windcreator

「言葉にも質量保存の法則が成り立つと私は思うのです。それはつまり重みを持った言葉は相手にも重く響き、軽く呟かれた言葉は相手にも軽く流されるのです。ところでここにあなたへの想いをまとめたレポートが300枚ほどあるのですが、読んでいただけますか?」「それは、重いね」 #twnovel

2010-01-08 19:45:54
とおる6th @windcreator

きるのに絶望してしまった、素敵。友人に相談したら、「とりあえず語尾を『素敵』にして一週間過ごせ」と言われた、素敵。奴には借りがあるので仕方なく従う、素敵。最初、近所の人には驚かれたが声を掛けられることが増えた、素敵。明日はレジの彼女におはようと言いたい、素敵! #twnovel

2010-01-17 23:38:00
とおる6th @windcreator

イシテルヨ、と私は言った。それは仲間が集まり他愛ない話で盛り上がる中での一言。 雑多な言葉に紛れ込ませた、告白。気付かれたいのか、気付いて欲しくないのか。他人事みたいに、分からない。それなのに、彼の顔が見れない。 あ。 私、こんなにも本気だ。全身に痺れが走る。 #twnovel

2010-01-19 03:25:40
とおる6th @windcreator

い。雨の匂い、水没する校庭、今日は体育館で練習。風の匂い、蕾、ひるがえるスカートは去年より短い。山の匂い、空気の味、空が近いのは気のせいではない。汗の匂い、シャワー、洗い流せない大切な記憶。君の匂い、通いなれた部屋、心の帰る場所。君の隣。嗅ぐ度に、あの日の私。 #twnovel

2010-01-21 20:08:48
とおる6th @windcreator

約した部屋に入ってすぐ、彼が用意した服に着替える。どうせ、大した意味は無い。それでも、全身を映す鏡を何度も確認してしまう。それが、悔しい。どうせ感想を漏らすこともなく、少しだけ強引に脱がせるのだ、彼は。なのに、己が身を飾る衣装の皺一つさえも美しく魅せたい。恋。 #twnovel

2010-01-26 00:06:44
とおる6th @windcreator

ーヒーと恋愛は似ている。温かく、ほろ苦いけれど、やめられない。甘い言葉を砂糖代わりに、優しさをミルク代わりに、あなたのために淹れる一杯の恋心。甘過ぎても冷め過ぎても美味しくない。いつかあなたの好みを知り尽くし、もう他の人が淹れたコーヒーは飲めないと言わせたい #twnovel

2010-02-05 16:54:22
とおる6th @windcreator

はグーを出すわ。「なら俺はパーを出す」あなたは嘘をつかない人よね。「お互いに勝つためには容赦ないだろ」でも、プロポーズの言葉は『一生大事にする、絶対に嘘は吐かない』だったじゃない。「それを持ち出すのは卑怯じゃない!?」信じてるわ、せーの「「ジャンケンポン!」」 #twnovel

2010-02-11 18:14:39
とおる6th @windcreator

「先輩!」背中から掛かる聞き慣れた声。生真面目な後輩だ。髪を揺らして駆けて来る。部室に何か忘れたかな。思わずポケットの財布と鍵を探る。ある。何だ? 弾む息をそのままに、彼女は可愛げな腕時計を見てホッと息をつく。満面の笑顔。「ギリです!」それは、どっちの意味? #twnovel

2010-02-14 23:59:29
とおる6th @windcreator

、好きって十回言って? 「好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き」 私のことは? 「好きだよ」 じゃあ、大好きって百回言って。「えっ?」 その後は、愛してるって一万回言って。 「……一日一回でもいい?」 えっ? 「ぼくが愛してるという度に君はキスで答えて」 #twnovel

2010-04-25 21:23:34
とおる6th @windcreator

つも姉のお下がり。ランドセルも、洋服も、髪どめも。姉はいつもピカピカの新品。だけど、わたしはそれを妬んだりはしないの。姉のことが大好きだから、姉の残り香をまとったものが、一番のお気に入り。 #twnovel だから、わたしがあなたを欲しくなるのは当たり前のことなの、お義兄さん。

2010-04-27 13:07:08
とおる6th @windcreator

「来いよ」と言われるまま、彼に着いてきた半生だった。出会いは、ありふれた若い男女の飲み会。交わした言葉すら数えるほどもないままに、彼は私の手を取って言ったのだ。「来いよ」と、無骨な態度とは裏腹に、驚くほどやさしく手を取って。 #twnovel 「当分は、来るな」が彼の最期の言葉。

2010-05-15 22:37:52
とおる6th @windcreator

#twnovel ――巻注意報が発令されました。屋外にいる方は速やかに避難してください――突然の雨に打たれ、もうその建物に飛び込むしかなかった。毒々しい光を前に戸惑う彼女の手を引いていく。シャワーを勧めると彼女は無言で頷いた。二人の間には今、竜巻よりも激しい風が吹き荒れている。

2010-07-24 23:19:26
とおる6th @windcreator

な、うちが幽霊になって自分の前に出てきたら、ツッコんでくれはる? どろろ~んって化けて出たら驚いてくれはる? そんでもって、うちとの思い出で少しだけ泣いてくれはる? ねぇ? うちは出来るで。50年も一緒やったから。自信あらへんならうちより先に逝ったらあかんで。 #twnovel

2010-07-26 03:38:50
とおる6th @windcreator

の川原沿いを歩くと、浴衣姿の『花火』が静かにベンチで空を見上げていた。「こんばんは」恐ろしく綺麗な横顔に思わず声を掛けてみる。振り向いた姿には一分の隙も無い。さぞかし空で映えるのだろう。ふっと一息吐いて、彼女はまた空を見上げた。「ちょっとだけ月に嫉妬してたの」 #twnovel

2010-08-01 02:58:00
とおる6th @windcreator

”fly me to the moon.”家出した彼女の書置きはそれだけ。僕たちは変なカップルなんだと思う。彼女がふらりと家出して、僕がそれを追う。追いつければ旅行になり、見つけられなければ彼女探しの一人旅だ。でも今夜は、月が綺麗だから屋根に登る。先客が笑った。 #twnovel

2010-08-23 19:39:44
とおる6th @windcreator

かが過ごした薄い跡の残る部屋に、次々と段ボールが増えていく。半分が僕ので、もう半分は彼女のだ。二人で過ごす日々はどんなものになるだろう。床が抜けないようにしないとね、と積み重なった本を見て二人で笑った。お互いの本を読み終わる頃、僕たちはどう変わっているだろう。 #twnovel

2010-09-25 15:33:45
とおる6th @windcreator

繰娘は時刻を告げる。それはもう寸刻も違わぬ精確さで、彼女は時刻を告げる。彼女の体内に納められた複雑で精巧な絡繰が、極めて精確な時を刻み続ける。彼女さえいれば、もう時計など必要ない。だから、主人は言う。「君には一生僕の側にいてほしい」2秒、彼女の時がズレた。 #twnovel

2010-11-25 16:23:11
とおる6th @windcreator

意に見上げると星が減っている。漆黒の夜空は徐々にその色を紫紺へと変え、遠くから迫る夜明けの気配は次第に濃くなっていく。暁が近い。そこまで持ち堪えれば生き残れるかもしれない。酒をしこたま飲みたい。運が良ければ酒場の娘もまだ独り者かもしれない。死んでたまるか。 #twnovel

2010-12-08 03:08:20
とおる6th @windcreator

人式おめでとう。あなたの晴れ着姿を想像したら、思わず顔がにやけてしまいます。二十年の歳月は、あなたをどんな人にしましたか? あなたの傍には、大切に思える人はいますか? この手紙が、最後の手紙になります。生まれてきてくれてありがとう。パパを支えてあげてね。母より #twnovel

2011-01-11 00:02:05