セシウムホットパーティクルを取り出してみる

一般的な写真撮影用のフィルムを使ったホコリ試料のオートラジオグラフィーの輝点に合わせてホットパーティクル近傍の試料を取出し薄く広げていって粒の取出しを試みました。粒の存在は実感できます。光学顕微鏡での確認が当面の目標です。
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3つ目と4つ目の試料と現像フィルムです。右側の4つ目は布水浸液からの沈澱シートです。スポットの数は少ないですが非常に強いスポットが1点見られます。次にこの試料のみを示します。

ここではこの一番強い黒点に対応する試料の部分を切り取り、その中にある放射性物質を詳しく調べてゆきます。
 白い点線の矢印の先に赤丸で示した部分は黒点に対応する試料の部分です。肉眼で見えるような粒は無く、試料の他の部分となんら違いは見られません。

この写真では、黒点に対応する位置に赤い花丸のような目印をつけてあります。覆っているラップと一緒にカッターでこの部分(約2mm×3mm)を切り取ります。
 続いてこの部分の放射能の強さをNaIシンチレーション検出器(ATOMTEX AT1125)にて測定します。このベラルーシ製の測定器は1インチ×40mmという小さ目のNaI結晶で、感度はあまりよくないのですが、次に示すように、今回のような点状の試料や薄く小さい布のような試料ではNaI部分に密着させて最大限に感度があがる配置をとることでセシウム137に対して1Bq程度の下限値で検出することができます。

NaI部分に密着させるためこのようなプラスチックの円筒に貼り付けます。

測定器にセットしたところです。中心がNaIの部分です。
 次に測定結果を示します。

このような2~3㎜の微小片であるのに放射性セシウムの明瞭なピークが見られ、セシウム137gが8.3Bqあります。6年たって約87%に減衰しているので、事故当時に減衰補正すると約9.5Bqとなり、最初の気象研の論文の粒子の、約3倍のセシウム量となります。粒子の組成が論文と同じとすれば、大きさは直径で約1.4倍程度が見込まれ、3μm程度と期待できます。

 次に示すのは切り取った試料部分からラップを取り除いたもので大きさは約2mm×3mm程度です(赤矢印)。後で扱いやすくするために透明ラッカーを接着剤替わりにして、さらに広い薄いシートに貼り付けてあります。

この小片の中のさらにどの部分に放射性粒子があるかを探してゆきます。まず、はさみで半分に切り分けます

このように、A,B2つの部分に分け、ベータ線に感度の優れたパンケーキ型GM管(直径5cm)でカウントを調べます。最初は"B"の方です。

ここでは表示がμ㏜/hとなっていますがこれはカウント/分に比例していて放射線の強さに比例してます。写真のように"B"の方は0.137μ㏜/hです。この値は試料の無いところで測ったバックグラウンドとほぼ同じ値で、放射線は検出にならないレベルです。
 続いて"A"の方です

こちらは0.395μ㏜/h。前の"B"片の3倍近くあり、明瞭な差です。放射性粒子はこちらにあると判断できます。

続いて"A"をさらに切り分けます。

測定のため離します。

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