『デーヴァ』と化した輪花を抹殺した後、おたまは彼女の亡骸を抱えて跳び、中学校に戻った。そこには既に大勢のマスコミがおり、輪花の遺体と共に現れたおたまを見るや否や彼女に殺到した。「珠・ブランシェさん!その子は!? 事件と何か関係が?」1
2017-03-28 09:33:23「貴方が所属する道場の門下生の犯行という情報がありますが、まさかその子の事でしょうか!?」「もし門下生だとすればあなた方道場にも問題があるかもしれませんよ! どうなんですか!?」マスコミ達の質問に対しオタマは殺気で答えた。「ガババァッ!」マスコミ達は一斉に卒倒する! 2
2017-03-28 09:36:03おたまは倒れ付すマスコミ達に一瞥もせず歩き、輪花を片手で抱えながらポケットからミニコンを取り出し、電話を掛けた。「もしもし、すくよ? ちょっと調べて欲しい奴がいる。『ブレイス』って奴よ。明日直接お前に会いに行くから、その時までにお願いね」3
2017-03-28 09:38:47翌日。ヒルデン首都『教都市』内に建つWMA(World Mage Association)本部ビルの応接室で、珠・ブランシェと影夢好代(かげゆめ すくよ)はそれぞれソファに座り、テーブルを挟んで向かい合っていた。4
2017-03-28 09:51:16今のおたまの格好はフォーマルなレディーススーツ姿だ。下は少し膝上丈のスカートである。すくよは同じくスーツだが、ブレスレットやネックレス、ピアス等を付け、あまり正装には見えない。すくよの髪は膝まで届く長い黒髪であり、それを二つに束ねている。瞳は茶色で、青色の眼鏡を掛けている。5
2017-03-28 09:55:39「で、ちゃんと調べたんだろうな?」まずおたまが口を開いた。「ああ勿論、親友の頼みとありゃああっという間に調べてやるさあ。丁度WMA内でも大きな案件になっていた事だしぃ」すくよは隣に置いた鞄から資料を取り出し、それをテーブルに無造作に放り投げる。おたまはすぐ手に取り読む。6
2017-03-28 09:57:31「お前の弟子の……輪花ちゃんだっけか? その子が出会った『ブレイス』って奴だけどさぁ。どうやらここ最近になって世界中で目撃される様になった未確認存在らしい」「未確認?メイジじゃねえのか?」「ああ、よく分からん。突然現れたんでWMAのメイジリストにも載っちゃいねぇ」7
2017-03-28 10:02:24「ふむ、チルカ、ブレイピア、ラーカラーン、ノーディン、そしてヒルデン……目撃情報が多民族国家に集中してんな」おたまは資料に描かれた地図を見ている。「ああ、各種族同士の軋轢、差別、そういうのに付け込んで人を『デーヴァ』に変えているらしい。意外と現代的なテロリストだねぇ」7
2017-03-28 10:06:45すくよは作成した資料を手でぴらぴらと持ち読みながら話を続ける。「あとデーヴァに変えてる人間も殆どが低所得の人。どうやら今の暮らしに不満がある奴を積極的に狙ってるようねぇ。特にここ数週間だけで世界で13件発生してやがる。しかも場所もバラバラ。そんだけ移動できる金あんのか?」8
2017-03-28 10:12:00「しかも、ほぼ同時刻に数千キロ離れた場所に出現してるじゃねえか。なんか特殊な転移魔法か?」とオタマ。「いや、転移魔法使えばそこにエーテルの痕跡が発生するはず。それが全く無い。可能だとすれば現在のあたし等やお神さまが知りえるエーテル概念を一から考え直さなきゃいけなくなる」9
2017-03-28 10:14:19「だよなぁ……こりゃ厄介だ」おたまは頭の触角を指で引っ張り悩み顔をした。「だからだ」すくよは身を乗り出した。「実は既にロードノルの魔法大学に頼んで各地に現れたデーヴァの死体を解剖させて何かこのブレイスとかいう奴の手がかりになる物が無いかを調べさせてた」10
2017-03-28 10:19:18「グッドタイミングだよお前」すくよは二ヒヒと笑った。「つい昨日大きな発見があったと大学から連絡が来た。WMAの情報担当としてあたしが行く予定だったんだけどね。お前もこれ興味があるんだろ? 付いて来るか?」「当たり前だ。行くかロードノル」11
2017-03-28 10:23:26「おう、そこの飯奢れよ」すくよはおたまの前に拳を突き出した。おたまもそれに拳を重ねた。そして次の日、おたまとすくよの二人はヒルデン国際空港から飛行機に乗り、魔法研究の本場、十大神の一柱「ヘイロウ」とその眷属「エルト」の地たるロードノルへ向かったのであった。12
2017-03-28 10:27:42