稲川淳二の『つぶやき怪談』(2017.03.29)

稲川淳二 @Junji_Inagawa

「えっ？　何が」 「実はな・・・　この３日間、おかしなことがあってな」 息子さんに、夜中の出来事を話したんです。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

すると息子さん、急に顔色が変わって、 「お父さん、そりゃおかしいよ。 僕もね、毎回カーテンがピッチリ閉まっているから、 隣はどんな人かな、と思っていたんだ。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

でね、看護婦さんに聞いてみたんだ。そしたら・・・」

稲川淳二 @Junji_Inagawa

「看護婦さんの話じゃ、隣の人は寝たきりのお爺さんで、 声帯が潰れているから、いっさい声が出せないんだって」

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息子さんの話を聞いた菅野さんはビックリして、 「待てよっ、俺は夜中に隣の人と何度か話をしているんだぞ」

稲川淳二 @Junji_Inagawa

「でも」 「じゃあ、俺が夜中に話した人は、誰なんだ？」 ふたりとも息を飲んだんです。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

考えてみれば、入院してから隣の患者さんの顔を一度も見たことがない。 どんな人か全然わからない患者さんなんです。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

菅野さんは気持ち悪そうに、 『俺はいったい誰と話していたんだ？』

稲川淳二 @Junji_Inagawa

隣では相変わらず、カーテンがピシッ、と閉じられたままです。 ふたりとも気持ちが悪くて、 どうしてもカーテンを開けて見る気がしなかったんですねえ。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

その日の晩、菅野さんが寝ていたら、 なぜかやたらと胸苦しいんです。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

ううっ、ううーっ、って胸苦しさで目が覚めた。 脂汗を流して、目が覚めたんですよ。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

すると自分のベッドの横で気配がしたんです。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

それで、フッと横を見ると、 隣から見知らぬ男が、こっちをジーッ、と覗いているんです。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

菅野さん、 『こ、この人が声帯の潰れたお爺さんか？』

稲川淳二 @Junji_Inagawa

すると、カーテン越しの患者さんから声がした。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

「その人が西田さんですよ」

稲川淳二 @Junji_Inagawa

そう言って更に、 「私にはね、もう見舞いはいらなくなったんですよ」

稲川淳二 @Junji_Inagawa

真っ青になった菅野さん。 だって、西田さんはすでに死んでいることをお爺さんの話で、 知っているんだから。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

『死んだ人と、隣の老人は毎晩話していたのか？ 　見舞いがいらなくなる？』

稲川淳二 @Junji_Inagawa

強い恐怖を感じたまま菅野さんはそのまま、 気が遠くなって気絶するように眠ってしまったんです。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

翌日・・・・ 隣のお爺さん、亡くなっていたそうです。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

菅野さん、寒気を覚えたんです。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

『もしかして西田さんて・・・』 『死神だったのか』

稲川淳二 @Junji_Inagawa

無事に退院した菅野さん、 あの時の出来事を思い出したんですね。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

多分、深夜になると隣のお爺さんに、 毎晩、死神が話しかけていたんでしょう。 ベッドで苦しんでいるお爺さんに、話しかけていたんですよ。