ラン・スルー・フィールド・ウィズ・ザ・ストライダー #1

ニンジャスレイヤー×ストライダー飛竜のクロスSS。エイプリルフールネタ。#1
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おゆはり @SSoyuhari

青装束のニンジャが持つトンファーめいたカタナが、赤い光りを帯びている。先ほどの衝撃波は、あのカタナから発せられたものだ。フジキドは合点した。あのニンジャは、やはり照明灯の上にいながらにしてファイアイーターを始末したのだ。さりとて、アイサツ途中の攻撃が看過できるかは別である。 49

2017-04-01 10:57:39
おゆはり @SSoyuhari

相手のアイサツ中に攻撃する事は、卑劣極まりないシツレイの極致だ。仲間からもムラハチにされるほどである。一方、ニンジャスレイヤーとてアンブッシュを警戒していなかった訳では無い。「卑怯な」思わず言葉が漏れた。強者がサンシタめいた行いをすることが不可解でならなかったのだ。 50

2017-04-01 11:01:50
おゆはり @SSoyuhari

「自分から隙を晒しておきながら、おめでたい奴だ」青装束のニンジャは、表情を一切崩さずに返答する。その言葉に、ニンジャスレイヤーは怒りを露わにした。全てのニンジャを……否、この国に連綿と伝わる「礼」を侮辱する言葉だ。「オヌシ、どうやら死にたいようだな。名を名乗れ」 51

2017-04-01 11:03:04
おゆはり @SSoyuhari

「無意味な行いに興味など無い」青装束のニンジャは、光り輝くカタナを左右に素早く一回ずつ振った。衝撃波だ!追尾ミサイルめいてニンジャスレイヤーを強襲!「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーは後方上空へ跳躍!だが、おぉ、見よ!二つの赤い衝撃波も上昇、なおも追尾を続けるではないか! 52

2017-04-01 11:04:17
おゆはり @SSoyuhari

「ヌゥーッ!イヤーッ!」ニンジャスレイヤーは宙返りをしながらスリケンを四枚同時に投擲、衝撃波を相殺!だが、相殺できたのは一つだけだ。残りの衝撃波が襲い来る!コワイ!「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーは廃ビルを蹴ってこれを回避!目標を失った衝撃波は勢い余って廃ビルを破壊!無残! 53

2017-04-01 11:05:36
おゆはり @SSoyuhari

そのままニンジャスレイヤーは、青装束のニンジャの脳天へ踵を打ち下ろし攻撃だ!「イヤーッ!」青装束のニンジャは、トンファーめいたカタナの腹で踵落としを難なく防御!「……ッ!」否!その衝撃は青ニンジャを介して足元の照明灯を粉々に砕いていくではないか!ゴウランガ!照明灯無残! 54

2017-04-01 11:06:47
おゆはり @SSoyuhari

咄嗟に青装束のニンジャはガードの手を払い、後方に跳躍!二人のニンジャは間合いを取ってほぼ同時に着地した。照明灯が崩壊した今、二人を照らすのは、青ニンジャのカタナが発する光のみである。淡白かつ静かに、青ニンジャは問う。「その外見といい、奇声といい、さっきの輩の弔いか」 55

2017-04-01 11:07:59
おゆはり @SSoyuhari

「違う。ファイアイーター=サンは私が殺すべきニンジャだったのだ」「それは残念だったな」青装束のニンジャはカタナを構え直した。「貴様もクローンか?」「今度は私がオヌシに質問する番だ。オヌシの目的は何だ」 56

2017-04-01 11:09:06
おゆはり @SSoyuhari

「一方的に質問ばかりするのはシツレイだ」「……」青装束のニンジャは、しばらく沈黙したのち答えた。「裏切り者の抹殺と、任務の遂行だ」「裏切り者?」裏切り者、任務……このニンジャは、いずれかの組織に与する者のようだ。「どうやら貴様は俺の敵ではないらしい……今のところはな」 57

2017-04-01 11:11:06
おゆはり @SSoyuhari

青装束のニンジャは、腰に巻いたベルトにカタナを装着すると、高空へと跳躍した。「なにっ!?」ニンジャスレイヤーが空を見上げると、そこには、おぉ、見よ!鳥めいたロボットが見事にニンジャを拾い上げ、飛び去って行くではないか。ワザマエ!気配すら感じさせない連携だ! 58

2017-04-01 11:12:37
おゆはり @SSoyuhari

「……」鳥ロボットが遠く消えた空を、フジキドは歯噛みをしながら見上げるしかなかった。名前すら確認できない正体不明の男。それに、ファイアイーターが語ったストライダーというニンジャ。ヨロシサンとオムラの企み。幾多の修羅場を潜り抜けてきたフジキドでさえ、ニューロンが追い付かない。 59

2017-04-01 11:13:55
おゆはり @SSoyuhari

「……Wasshoi!」不確定要素は、一つ一つ潰していかねばならない。まずは、ファイアイーターに襲われていたオムラの社員、スザキの身柄の確保だ。フジキドは跳んだ。胸中に渦巻くこの黒雲の如き焦燥感を振り払うかのように。 60

2017-04-01 11:15:19
おゆはり @SSoyuhari

廃ビルの隙間にのぞく空は、相変わらず墨を流したような曇天模様。泥だらけになったスーツを引きずり、通りを抜け、河川敷に出てもそれは変わらない。「何という日だ……」スザキは己の身に降りかかった不幸を呪った。かのプロジェクトに関わってから、悉く自分はついてなさすぎる。 62

2017-04-01 11:17:45
おゆはり @SSoyuhari

だが、嘆いてばかりもいられない。冷静に考えるのだ。優秀な技術者である自分を、オムラ・インダストリが簡単に手放すはずがない。ましてや極秘プロジェクトの数少ない担当者なのだ。業務提携先であるヨロシサン製薬に襲われたとなれば、会社も黙っていないだろう。 63

2017-04-01 11:18:58
おゆはり @SSoyuhari

この件については余さず上司に報告し、組織として対応するよう進言しよう。どのみち一介のサラリマンが処理できる問題ではないのだ。問題は、ニンジャに、それも四人に襲われたことを上司に信じてもらえるかどうか。ブッダよ、もしそこにおられるなら、アワレな男にお恵みを。 64

2017-04-01 11:20:07
おゆはり @SSoyuhari

一通り考えもまとまった所で、スザキは携帯IRC端末をポケットから取り出した。どうせこのまま帰った所で女房も娘も寝ている。散々苦労した分、今日は少しくらい良い思いをしたところでバチは当たるまい。スザキの指は、贔屓にしているオイランの番号をダイヤルしていた。 65

2017-04-01 11:21:32
おゆはり @SSoyuhari

「……」いくら待っても、呼び出し音が繰り返される。違法電波と交錯しているのか、異様に電波が悪いようだ。仕事も住処も追われたマケグミが、この辺りに巣くっているのかも知れない。真っ当に通信事業者への利用料を支払わず、違法に電波を傍受するマケグミが。「くそっ」 66

2017-04-01 11:24:35
おゆはり @SSoyuhari

俺はさっさとオイランとネンゴロして今日を終えたいだけなのだ。家庭に居場所が無いサラリマンの数少ない楽しみさえ奪われる謂れは無い。スザキは何度もダイヤルするが、呼び出し音が繰り返されるばかりである。目の前の川の異変に気がついたのは、三回目のダイヤルを数えた時だった。 67

2017-04-01 11:26:27
おゆはり @SSoyuhari

「えっ?」ネオサイタマを流れる川は、そのどれもが暗く淀み、異臭を放っている。生活排水や工場からの汚水が不当に垂れ流されているからだ。当然、魚類等の生き物が生息できる環境ではない。だが、スザキはその川に不穏な黒い影が映っているのを目撃した。 68

2017-04-01 11:27:50
おゆはり @SSoyuhari

川の中に何かいる?……いや、中ではない。ハッと気づいたスザキは顔を上げた。そこにいたのは、体を緑色の装甲で、頭部を黄色のヘルメットで覆った、おそらく人。ジェットパックを背負い、川面の上で滞空している。両肩と右手には銃器めいた得体の知れない武装と、その胸には……三つ巴の社章。 69

2017-04-01 11:30:06
おゆはり @SSoyuhari

「ターゲット確認。こいつがスザキか」「アイエエエ!?」スザキは後ろに倒れ転げた。まさか、またニンジャ!?それに、オムラの社章をナンデ!?「これもクライアントの依頼でな、恨むならお前の会社を恨むがいい」緑色の人影が右手をスザキに向けると、装着された銃砲から光弾が発射された。 70

2017-04-01 11:31:32
おゆはり @SSoyuhari

「アバーッ!」ナムアミダブツ……スザキの体にチーズめいた穴がいくつも空き、死亡!「……こんな雑魚の始末だけで、何とも羽振りの良い会社だな」人影は銃砲を仕舞うと、虫けらを見るかのようにスザキだったものを一瞥し、飛び立った。 71

2017-04-01 11:32:53
おゆはり @SSoyuhari

「口封じか。よほど都合の悪い社員だったと見える、が俺には関係無い」金さえもらえればな……だが、この男にも興味を引く情報が一つだけあった。ストライダー。あのスザキとかいう男の研究データにもあった言葉だ。ヘルメットに覆われ、決して外から見えるはずの無い男の眼に、復讐の炎が灯る。 72

2017-04-01 11:34:27
おゆはり @SSoyuhari

「どうやら貴様に会える日も近いようだな、ストライダー飛竜……!」背中からジェットを噴き出し、人影は黒雲の中へ瞬く間に吸い込まれ、消えていった。 73

2017-04-01 11:36:02