フォビドゥンフォレスト4話「大規模作戦・発動!」 #6 「幸川拓斗」

実況・感想タグ: #禁森感想 全話+まとめのまとめ http://togetter.com/li/1059871 1話「英雄たちの遺産」まとめ 続きを読む
0
フォビドゥンフォレスト@カクヨム投稿中 @fbd_forest

「は、はい…」 「どれにします!ああ、でも余り食べ過ぎると夕食に響きますし…でも育ち盛りだから大丈夫?…いや、トイレが近くなっても…」 「え、ええと…」 「望くん。ちょっと遠いけど三芳辺りどうかな。パンが美味しいんだ」 佐祐里を遮るように幸川が提案する。 20

2017-04-02 18:58:21
フォビドゥンフォレスト@カクヨム投稿中 @fbd_forest

「ええと…」 「佐祐里ちゃんも別に良いだろ?」 「あ…はい」 「良いのか?腹減ってるって言ってたのに」 「この辺だとコンビニくらいしか無いっぽいしな…せっかく遠出したのにそれじゃつまらないだろ?」 「そんなもんか」 「それに空いているうちに、進んどきたいしな」 21

2017-04-02 19:06:21
フォビドゥンフォレスト@カクヨム投稿中 @fbd_forest

幸川は、たまたま陽気な音楽が流れていたラジオを選ぶと、ようやく選曲ダイヤルから手を離し、ハンドルを左手に持ち替え、右手で飴を頬張る。 「皆も食べるか?」 「私はいい」 桐葉はそう言いつつも差し出された袋を受け取ると、後ろへ差し出す。 「私は頂きます。望くんはどうです?」 22

2017-04-02 19:17:05
フォビドゥンフォレスト@カクヨム投稿中 @fbd_forest

「僕は…結構です…」 その時、望の腹が小さく鳴った。 「望くん、頂いたらどうです?それともコンビニでいいから近くのPAに寄って貰います?」 「大丈夫です…」 望は横に首を振る。その腹が再び鳴る。 「遠慮しなくて良いんですよ?ほら、あーん」 佐祐里は飴を手にとって差し出す。 23

2017-04-02 19:28:17
フォビドゥンフォレスト@カクヨム投稿中 @fbd_forest

「だ、大丈夫ですから…」 望は仰け反る。 「うーん、でもそろそろ賞味期限近いし、捨てるのも勿体無いんだよな…食べてくれると助かるんだけど…」 幸川はさも残念そうな口ぶりで言う。桐葉が飴の袋を見ると、夏までは保つ上に残り3・4個程度だったが、特にそれを指摘はしなかった。 24

2017-04-02 19:41:03
フォビドゥンフォレスト@カクヨム投稿中 @fbd_forest

「じゃ…じゃあ、頂き…ます」 「…どうぞ」 佐祐里は微妙に納得のいかなそうな表情で飴を望の口へと差し出す。 「え…っと…」 望は顎の辺りに両手を所在無さげに置いている。流石に 口に入れてもらうのは恐れ多いが、かといって無視する訳にも行かない…ということだろう。 25

2017-04-02 19:56:23
フォビドゥンフォレスト@カクヨム投稿中 @fbd_forest

「佐祐里ちゃん、それはいきなりハイレベル過ぎるぞ?…今回は手渡しにしてあげなよ」 「そう…ですか?うう…。…どうぞ」 佐祐里は逡巡しながらも飴の位置を下げる。 「ありがとう…ございます…!」 望は恭しく頭を下げて飴玉を受け取る。その仕草は表彰状でも受け取るかのようだった。 26

2017-04-02 20:17:33
フォビドゥンフォレスト@カクヨム投稿中 @fbd_forest

望は受け取った飴を口にしようとして、佐祐里の視線に気づいてためらう。 「あー佐祐里ちゃん、ちょっと良い?」 「えっと何でしょうか?」 佐祐里が運転席の方を向いたのを見て、望は両手でゆっくりと飴を口に入れる。一粒数千円する飴を食べるかの如き仰々しい動作だった。 27

2017-04-02 20:24:05
フォビドゥンフォレスト@カクヨム投稿中 @fbd_forest

20分ほどして、望は飴を食べ終えた。ただでさえゆっくり食べていた上に佐祐里に見られていたので、口の中から無くなるのに彼女より数分は長く掛かった。それを見届けてから、佐祐里は再び話しかけた。 「それで、修行の成果はどうでしたか…!?」 「っ…!」 望の顔が曇る。 28

2017-04-02 20:31:32
フォビドゥンフォレスト@カクヨム投稿中 @fbd_forest

「レオナさんから聞いてますよ!毎日丁寧に報告を頂いてましたからね!ああそうです!後で電話しましょうね」 「は、はい」 レオナ、というのはクロスロードで望の稽古を主に担当した少女である。先程の引率者とは違い、今はまだ向こうで午前の授業を受けている最中だった。 29

2017-04-02 20:39:51
フォビドゥンフォレスト@カクヨム投稿中 @fbd_forest

「それで…どうでした?大体は聞いてますが、望くん自身の手応えとしてはどうでしょう!?」 佐祐里は目を輝かせながら望の手を握った。レオナや学校からは日々成長していく望の様子が報告されていた。それを本人がどう捉えているのかを知りたかったのだ。 30

2017-04-02 20:48:47
フォビドゥンフォレスト@カクヨム投稿中 @fbd_forest

望は自分を常に否定的に卑屈に評しがちだ。佐祐里はその彼が自分に自信を持って話す所が見たかった。既に修行の実績は受け取っている。後は本人の認識次第だが…どうにも望の表情は暗い。 「レオナさんも先生方も褒めてましたよ!」 「ええと…それは…皆さんが良く言ってくれてるだけで…」 31

2017-04-02 21:05:58
フォビドゥンフォレスト@カクヨム投稿中 @fbd_forest

「そんなことはあり ませんよ!魔術制御も格闘技術もどんどん強くなってるって聞いてますよ。それに腕も心なしか逞しく…」 佐祐里は握った手に力を込める。 「本当に…そんなことは…無いんです…」 「望くん!」 佐祐里は望に顔を寄せる。 「あーちょっと良いかな?」 32

2017-04-02 21:09:10
フォビドゥンフォレスト@カクヨム投稿中 @fbd_forest

再び幸川が話しかける。 「…はい」 「イギリスって言えば食べ物がほら…どうとか言うけど実際どうだった?俺、詳しくなくってさぁ」 「え?…いや、言われているより美味しかったですよ?」 「何か、この10年位で良くなったって聞くけど…?」 33

2017-04-02 21:18:38
フォビドゥンフォレスト@カクヨム投稿中 @fbd_forest

「はい…オリンピックに向けて随分改善されたんだそうです」 「ああ、そんな話だったね。何が美味しかった?」 「…グーラッシュ…ですかね」 「グーラッシュ?」 「牛肉とかの入ったスープで…あっ」 「どうした?」 「これは…ドイツ料理でした」 34

2017-04-02 21:26:13
フォビドゥンフォレスト@カクヨム投稿中 @fbd_forest

「ハハッ。レオナって子の家でご馳走になった奴かい?」 「はい…」 「お正月はドイツに行ったんだっけ?」 「すみません…」 「ドイツの正月料理ってどんなの?」 「ええと…」 幸川と望が話すのを佐祐里は無言で見ていた。いつの間にか手は離していた。 35

2017-04-02 21:34:27
フォビドゥンフォレスト@カクヨム投稿中 @fbd_forest

「…佐祐里、ここはヨッシーに任せとけ」 「もしかして、もう全部幸川さんで良かったんですかねぇ…」 諭すような桐葉の言葉に佐祐里は力なく俯くしか無かった。「…じゃあフィッシュアンドチップスってどうだったの?」「…ピンキリ…という奴でしょうか」 36

2017-04-02 21:38:10
フォビドゥンフォレスト@カクヨム投稿中 @fbd_forest

望はそれに気づいた様子もなく、幸川と話し込む。修行については互いに触れることなく、向こうでの生活についての話題で盛り上がった。結局、三芳PAに着くまでの20分間、彼と話通しだった。なお、そのすぐ隣で女子二人はふて寝していた。 37

2017-04-02 21:42:08
フォビドゥンフォレスト@カクヨム投稿中 @fbd_forest

フォビドゥンフォレスト4話「大規模作戦・発動!」 #6 「幸川拓斗」終わり #7 「西条憐治」に続く

2017-04-02 21:43:26