#ちんじふ劇場　【17年4月分まとめ】

青葉⚓C103土曜ユ29b@鎮守府新聞ワレアオバ @_Ware_Aoba

吹雪「私……悲しいと思ってるんですけど。涙が……出ないんです」 赤城はそう告白する吹雪に声をかけることができなかった。 #ちんじふ劇場

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鹿屋方面へと向かう軽自動車が一台。 「鹿屋までもう少しね」 あきつ丸「鹿屋に何があるのでありますか？」 「あそこはウチの陣営が全く居ないの。だから直接乗り込み」 あきつ丸「ひとつ疑問があるであります」 「何？」 #ちんじふ劇場

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あきつ丸「今回の件は何故憲兵を使わないのですか？」 「海軍の問題だからね。陸軍の介入は控えたい」 あきつ丸「……自分がどの指示で動いているかご存知でありますか？」 「そりゃあ、お前は陸軍艦娘だもの。陸と海なら陸を向いてるでしょ」 #ちんじふ劇場

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「私は争う必要はないから、お前を通じて情報提供しているつもりよ。あとは忖度ってやつで」 あきつ丸「陸軍が動かないとお考えで？」 「動く意味が無いわね」 あきつ丸「なるほど……。意外と将校殿も甘いようで」 #ちんじふ劇場

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「アキ、冗談はよしなさいね」 あきつ丸「冗談で済むなら憲兵はいらんのであります」 軽自動車が鹿屋基地の正門で停止する。 どこに潜んでいたのかカーキ色の軍服の軍人たちが取り囲んだ。 #ちんじふ劇場

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不破と木曾の前に現れたのは、数名の部下を従えた陸軍士官だった。 士官本人は付けていないが、控えている部下たちの腕には憲兵の腕章。 「東部憲兵隊司令部の岡本です」 階級章を見ると中佐。 感情を押し殺したような長めの顔つきはモアイ像を連想させる。 #ちんじふ劇場

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「不破です。我々になにか？」 「横鎮司令官付きの春海秘書官を拘束しました」 岡本憲兵中佐は淡々とした口調で告げる。 「特警で拘束した南田海軍大佐、神田海軍中佐の身柄を引き渡し願います」 「……憲兵隊はいつから把握を？」 「観月提督の解任時からです」 #ちんじふ劇場

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最初からということか。 不破は一瞬両目を閉じた後に、貼り付けたような笑顔を見せる。 「了解しました。両名の身柄を渡します。あとは……そちらでやっていただけるという理解で宜しいですか？」 「はい。あとはこちらにお任せください」 モアイ顔が頷く。 #ちんじふ劇場

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「木曾、付き合わせてすみませんでした。執務室に戻ります」 木曾「いいのか？」 「はい。詳しくは後ほど」 木曾「……口調が戻ってるってことは、そういうことなんだな」 「そういうことです」 #ちんじふ劇場

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執務室に集う甲班、乙班の艦娘たちと木曾、大淀。 「さて、皆さん揃いましたね」 天龍「何で木曾が居んだ？」 木曾「行きがかりで巻き込まれたんだ。そもそもお前らのことも知らないくらい事態が飲み込めてねえ」 #ちんじふ劇場

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「僕のミスで情報漏えいの可能性が浮上したため、急遽行きがかりの木曾を引き込みました。彼女も刀古への忠誠を言の葉では誓っています。天龍から見て、それに疑いの余地があると考えますか？」 天龍「ねえな」 即答する天龍。 #ちんじふ劇場

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天龍「計画に入ってなかったヤツだったから、一応な。疑うような言い方で悪りぃな木曾」 木曾「別に気にしてねぇよ」 「ならば良し。これまでの経緯と状況を説明します……」 不破は一同にこれまでの経緯を説明した。 霧島「それは……迂闊でしたね」 #ちんじふ劇場

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赤城「不破提督も意外とうっかり屋ですね」 加賀「しかしその粗忽さで、全てが台無しになるところでした」 「面目ない」 大和「私達が身柄を確保した二人も憲兵に引き渡しましたけど……どういうことなのですか？」 #ちんじふ劇場

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「我々は敵対陣営の一掃のために、クーデターを未然に防ぐという一芝居うったわけですが、結果的にその成果を憲兵……いえ、陸軍に奪われました」 榛名「大丈夫なんですか？」 「あまり芳しくはありません。陸軍の発言力強化の一端となりますが……」 #ちんじふ劇場

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「まあそれは海軍の問題なので、我々の目的には関係がありません」 吹雪「司令官は復帰出来るんですか？」 「憲兵隊が動いたことで芝居が本当の出来事になりました。刀古の解任については敵対陣営の不正の結果として無効とされるでしょう」 胸をなでおろす一同。 #ちんじふ劇場

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「加えて、やらかした僕はいい笑い物ですが、まあこれも副産物と思うことにします」 天龍「どういうことだ？」 龍田「情報漏えいの汚点が付いてしまったから、何かをするときに足かせになるってことよね？」 「そのとおり」 #ちんじふ劇場

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「ですがまあ、構えられるより侮ってもらったほうが、動きやすい場合もあります」 大淀「ポジティブですねぇ」 「まあ……ね。これまで尽力してくれた皆さんには礼を言います。お疲れ様でした」 一同に向かって頭を下げる不破。 #ちんじふ劇場

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大和「でも、誰かを犠牲にした上での事だと、私たちは忘れてはいけないのかもしれません」 吹雪「不破司令。ひとつお聞きしても宜しいでしょうか？」 「何でしょうか」 吹雪「不破司令は、どうして司令官復帰のために奔走してくれたんですか？」 #ちんじふ劇場

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「私たちは、ある目標へ向けて進むための一種の共同体のようなものです。彼女が私たちと同じ方向を目指す限り私たちは決して彼女を見捨てません」 加賀「提督が方向を変えた場合は味方しないということですか。血縁であっても」 「……」 不破は微笑みながら沈黙した。 #ちんじふ劇場

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「やあ、まいったねどうも。掌の上で動かしていたつもりが、こちらが掌の上だったわ。まさかアキに出し抜かれるなんてね」 「ともあれ、海軍省には復帰の確約を取り付けた。結果オーライというものだ」 「また貸しを作っちゃったわね」 #ちんじふ劇場

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「いや、今回は無しでいい。こちらのヘマでご破算するところだったしな」 「あらまあ、イトコ殿でもそういうことあるのね」 「茶化すなよ。いい年して脇が甘いことを痛感した」 「……悪い事しちゃったわね」 #ちんじふ劇場