#ちんじふ劇場　【17年4月分まとめ】

青葉⚓C103土曜ユ29b@鎮守府新聞ワレアオバ @_Ware_Aoba

「かまわんよ。物流経済の要である首都圏にお前を置いておくことに意味がある。ただ……」 「？」 「横鎮に居る資格とかいう安い挑発には乗るな。にわかに北が怪しい時期に、拠点を離れる身にもなってくれ」 「そうね。せいぜい面の皮を厚くして居座るようにするわ」 #ちんじふ劇場

青葉⚓C103土曜ユ29b@鎮守府新聞ワレアオバ @_Ware_Aoba

「こちらにはいつ戻る？」 「明後日くらいには。なんか急ぎ？北方の件？」 「……たんだ」 「え？何？聞こえない。もっと大きく言ってくれる？」 「大湊に桜が咲いたんだ」 「……あんた、本当に花見好きよね」 #ちんじふ劇場

青葉⚓C103土曜ユ29b@鎮守府新聞ワレアオバ @_Ware_Aoba

金剛「ヘーイ、テイトク！茶ぁでもシバキませんカ？」 「君はどこの大阪にあるイギリスから来たんですか」 スパ子「大阪にもブリテンが？」 「ありません。しかし良いのですか？二人でのお茶会なのでは？」 金剛「別れの酒坏（さかづき）ネ」 #ちんじふ劇場

青葉⚓C103土曜ユ29b@鎮守府新聞ワレアオバ @_Ware_Aoba

「僕は紅茶入りブランデーを飲まされるんですか？」 金剛「それもいいネー」 苦笑しながら席に着く。 スパ子「観月提督はいつ戻られるんですか？」 「一両日中には。僕も午後には此方を発ちます」 スパ子「急ですねえ」 「大湊で部下たちが花見を待っているので」 #ちんじふ劇場

青葉⚓C103土曜ユ29b@鎮守府新聞ワレアオバ @_Ware_Aoba

金剛「ホントに花見が好きデスネ」 「それもありますが、桜というのは日本人の死生観に合うのですよ」 スパ子「日本の……？興味があります」 「僕の考えはちゃんとした学問に基づいたものではありませんが」 スパ子「それでもそう思わせるものが桜にあるんですね？」 #ちんじふ劇場

青葉⚓C103土曜ユ29b@鎮守府新聞ワレアオバ @_Ware_Aoba

「日本の気候は春夏秋冬があり、その春を代表する花が桜です。桜は菊と並んで日本の国花でもあります」 　 スパ子「国花？」 金剛「その国を象徴する花のことネ」 「もっとも国旗や国歌のように法的に規定されたものではありませんがね」 #ちんじふ劇場

青葉⚓C103土曜ユ29b@鎮守府新聞ワレアオバ @_Ware_Aoba

金剛「日の丸も君が代も法律が出来たの最近だヨ」 「正直な話、国を象徴するものは国民の心にあるワケですから、法律がないから違うと言い出す輩がそもそも……」 金剛「スターップ。話が逸れてるネ」 「すみません。桜が愛されるのはその華やかさと、散る儚さにあります」 #ちんじふ劇場

青葉⚓C103土曜ユ29b@鎮守府新聞ワレアオバ @_Ware_Aoba

スパ子「そうですね。先日のチンジュフの桜はきれいでした。散る姿も」 「その儚さは、命に例えられます。今は戦争です。僕たちは貴女たち艦娘に命のやり取りをしろと命じている。出来るだけの被害を抑える努力はしていますが、それでも」 不破は一呼吸置いて言う。 #ちんじふ劇場

青葉⚓C103土曜ユ29b@鎮守府新聞ワレアオバ @_Ware_Aoba

「死ぬときは死ぬのです。桜のように儚く」 金剛「……」 スパ子「……」 「僕が桜の花見を好むのは、一年の始まりであり、昨年から一年共に歩んでこられたことを喜びたいからなのですよ。そしてそれは来年また桜を愛でられるように彼女たちと進むことの誓いでもあります」 #ちんじふ劇場

青葉⚓C103土曜ユ29b@鎮守府新聞ワレアオバ @_Ware_Aoba

スパ子「なるほど。不破提督のお考え、理解できました」 金剛「不破テートクはてっきり、お花見好きなダケだと思ってたヨ」 「とまあ、これくらい語っておくと、自分が好きなことを正当化できるわけですよ。お茶をありがとうございました」 金剛「oh」 スパ子「あら」 #ちんじふ劇場

青葉⚓C103土曜ユ29b@鎮守府新聞ワレアオバ @_Ware_Aoba

絶句する二人にいたずらっぽい笑みを返して不破は立ち去った。 #ちんじふ劇場

青葉⚓C103土曜ユ29b@鎮守府新聞ワレアオバ @_Ware_Aoba

走り込み訓練に励む第14駆逐隊。 その先頭を行く陽炎は冴えない表情だ。 陽炎「はぁ……」 曙「あのねえ。はぁはぁ言いながら走るの止めてくれない？変質者みたいだから」 潮「どうかしたんですか？」 陽炎「吹雪がさぁ」 曙「（舌打ち）」 陽炎「何？」 #ちんじふ劇場

青葉⚓C103土曜ユ29b@鎮守府新聞ワレアオバ @_Ware_Aoba

曙「何でもないわよ」 皐月「吹雪ちゃんがどうしたの？」 陽炎「とーこちゃんの件もあるけど、神田中佐が逮捕された時からなんか元気ないのよ」 長月「神田中佐が吹雪に……という話は知っていたが、吹雪もそうだったのか？」 陽炎「わかんない」 #ちんじふ劇場

青葉⚓C103土曜ユ29b@鎮守府新聞ワレアオバ @_Ware_Aoba

陽炎「わかんないけど、元気ないなら元気づけようとするのが友達でしょ？」 潮「そうですね」 長月「そうか？　返って鬱陶しいと思ったりしないか？」 霰「長月はそうなの？」 長月「私のことじゃあない！」 皐月「陽炎は吹雪ちゃんに何かしてあげたの？」 #ちんじふ劇場

青葉⚓C103土曜ユ29b@鎮守府新聞ワレアオバ @_Ware_Aoba

陽炎「デートに誘った」 曙「……馬鹿なの？」 陽炎「えー？ダメー？」 潮「一緒に出かける誘いをしたってことですよね？」 陽炎「そうよ」 霰「本当のデートかと思った」 長月「大井さんじゃあるまいし」 皐月「陽炎が落ち込んでるって事は断られたんだね」 #ちんじふ劇場

青葉⚓C103土曜ユ29b@鎮守府新聞ワレアオバ @_Ware_Aoba

陽炎「やんわりとだけどね。今はそういう気分になれないからって」 曙「クソ提督、戻ってくるんでしょ？そしたら少しは元気になるんじゃないの？」 陽炎「そうだといいんだけど……」 進行方向に車に乗り込もうとする人影が見えた。 皐月「あ、不破司令と大淀さんだ」 #ちんじふ劇場

青葉⚓C103土曜ユ29b@鎮守府新聞ワレアオバ @_Ware_Aoba

霰「……こっち、見てるよ」 陽炎「さっさと敬礼してやり過ごしましょ」 14駆の面々は不破のところ前やってきた。 陽炎「駆逐隊、止まれ！」 陽炎の号令で全員が足を止める。 そして頭を下げて敬礼。 「訓練ご苦労様です。最後に君たちにあえて良かった」 #ちんじふ劇場

青葉⚓C103土曜ユ29b@鎮守府新聞ワレアオバ @_Ware_Aoba

陽炎「最後……ですか？」 「ええ。僕のここでの任務は終わりましたので、これから大湊に帰ります。観月提督は一両日中に再着任する予定です」 潮「提督、戻ってこられるんですね」 霰「うん」 長月「不破司令、それと私たちに会えたことが何か関係するのか？」 #ちんじふ劇場

青葉⚓C103土曜ユ29b@鎮守府新聞ワレアオバ @_Ware_Aoba

「君たちに伝えたいことがありましてね」 曙「ふーん」 「自分たちでも知っていると思いますが、君たちは観月提督が目をかけている駆逐隊です。これからも多くの作戦に投入されるでしょうが、君たちの戦果だけではなく、努力もまた見ています。今後の武運長久を祈ります」 #ちんじふ劇場

青葉⚓C103土曜ユ29b@鎮守府新聞ワレアオバ @_Ware_Aoba

再度敬礼。 頭をあげると不破がじっと陽炎を見つめていた。 陽炎「あの……まだ何か……？」 「いえ、ありません。どうか元気でやってください。引き止めてすみませんでしたね」 陽炎「駆逐隊、駆け足！」 陽炎の号令で再び走り出す。 #ちんじふ劇場

青葉⚓C103土曜ユ29b@鎮守府新聞ワレアオバ @_Ware_Aoba

その様子を不破は見えなくなるまで見つめていた。 大淀「提督、そろそろ電車の時間が……」 「……そうですか。行きましょう」 業務車両の助手席に座る。そして大淀が運転席に乗り込む。 エンジン音を響かせながら、業務車両は鎮守府をあとにした。 #ちんじふ劇場

青葉⚓C103土曜ユ29b@鎮守府新聞ワレアオバ @_Ware_Aoba

霰「陽炎、よかった……の？」 走る陽炎の横で、霰が呟いた。 陽炎「え？何が？」 曙「……まさかだと思うけど、あんた気がついてないの？」 陽炎「え？」 潮「あの……観月提督は陽炎さんの親戚ですよね？」 陽炎「そうよ」 #ちんじふ劇場

青葉⚓C103土曜ユ29b@鎮守府新聞ワレアオバ @_Ware_Aoba

潮「それで、不破提督は観月提督の従兄弟と聞いています」 陽炎「そうなんだ？で、それがどうしたの？」 長月「お前、まだ気がつかないのか？不破提督とお前の関係を」 陽炎は走りながらしばし思考を巡らせる。 陽炎と刀古司令は血縁。 刀古司令と不破司令は従兄弟同士。 #ちんじふ劇場